今年の桜蔭中、易しめでした。特に前半は平易な問題が多く、こんなに簡単でいいのかな?と不安になった受験生もいたことでしょう。
一方、ダイズの加工食品など一般常識に近い知識を問うてきたり、勉強量の多い受験生なら慣れている呼吸商や空気塊の計算問題が登場したり、読解しながら計算する問題も多く登場したりと、完成された受験生が求められているのは変わっていません。
しっかり勉強してきた受験生は50点以上 (60点満点) の高得点が取れたことと思います。
ラクな対策はありません。穴を作らずに実力を付けた受験生しか勝てないのが桜蔭中です。
出題
Ⅰ物質の性質(カルシウムの化合物)
高校化学のテキストに載っているようなカルシウムの化合物の関連図が登場しました。見た目は少し珍しいですが標準的な知識と読解力があれば解ける問題でした。
Ⅱ電力・電力量
こちらは中学生のテキストに出てきそうな電力量の計算問題でした。計算のしかたは説明されているため、読解力と計算力が求められる問題です。難しい問題ではありませんでしたが、要素が多いため途中でミスをする受験生もいたことと思います。
Ⅲダイズ・イネ・日本の河川・呼吸商
一般常識や社会との混合問題、呼吸商…総合力を試されるような問題でした。呼吸商については問題中で説明されていますが、これは知っていた受験生がほとんどでしょう。初めて解くと難しい問題です。例年よく見かける実験の考察問題は登場しませんでした。
Ⅳ雲のできかた
読解と計算の混じった桜蔭中らしい問題でした。読解力と思考力が求められる、歯ごたえのある問題で、ここでいちばん差がついたのではないでしょうか。
読解しながら解いた受験生も多かったと思いますが、上っていく空気塊と周りの気温との比較は最近いくつかの学校で登場しているトレンド問題です。一度触れたことがあるとラクだったかもしれません。
解説
問題の分類
知:知識問題
考:思考問題
計:計算問題
問題のレベル分け
〇:絶対に取りたい
△:この中から半分以上取りたい
×:捨てても可
Ⅰ物質の性質(カルシウムの化合物)
問1 知 〇
解説はいらないですね。
解答 石灰水 赤 イ 青 ウ
炭酸水 赤 ウ 青 ア
問2 知 〇
こちらもサービス問題です。
解答 石灰水 イ 炭酸水 ア
問3 知 読 ①〇 ②〇 ③△
①と②は知っているでしょう。
石灰石=炭酸カルシウム、消石灰=水酸化カルシウム ですね。
生石灰はリード文の③にあります。「水と結びつくと消石灰に変化」
また、図1の下あたりに「炭酸カルシウムを強く加熱すると酸化カルシウムに変化」とあります。
よって、下図のようになります。図にメモをしながら解くと確実ですね。
リード文をじっくり読んでも解けますが、知識があると素早く解けたことと思います。
解答 ① ウ ② イ ③ ア
問4 知 〇
石灰岩のつくられ方、知っていますね! → 貝やサンゴの死がいが堆積
解答 ウ
Ⅱ電力・電力量
問1 計 〇
3000Wをこえるまで足し算していくだけです。
300+40+1000+240+1000=2580
ここに⑥の600を加えると3000をこえるので、⑤まで作動させることが可能です。
解答 ⑤
問2 計 △
指示に従って計算する問題です。
電力量=W×時間 なので、これを計算していきます。
300×24+40×8×7.5+1000×6+240×1+1000×0.1+600×0.1=16000(Wh)
これが1日分。
1ヶ月では 16000×30=480000(Wh)になります。
どこかの値を入れ忘れたり、最後に30をかけ忘れたりした受験生もいたかもしれません。
「電気料金(円)=1800+0.03×電力量」 なので
1800+0.03×480000=16200(円)
になります。
解答 使用電力量 480000(Wh) 電気料金 16200(円)
ちなみに30をかけ忘れたまま求めると2280円になってしまいます。これが安すぎる?と気付くのは、小学生には難しいかな…
問3 計 △
電力量の差は
40×8×7.5×30-10×8×7.5×30=(40-10)×8×7.5×30=54000(Wh)
電気料金の差は
0.03×54000=1620(円) になります。
解答 1620(円)
妥当な数字が解答になっていますね。
問4 考 △
「家庭での電気料金は減らないが、社会全体でのピーク時の消費電力は減るもの」を選びます。
ア.
オーブンレンジは夜間に使っているので家庭の電気料金は減らない、暑い日の昼間はエアコンが使われ、社会全体の消費電力が多くなっている時間帯なので、題意にぴったりの解答です → 〇
イ.
不要な電灯を消す → 家庭の電気料金が減る → ×
ウ.
消費電力の小さい製品にかえる → 家庭の電気料金が減る → ×
エ.
IHコンロにかえる→家庭の電気料金が増える → ×
オ.
太陽光パネル設置→家庭の電気料金が減る → ×
カ.
電力会社からの電気を夜のうちにためておく → 家庭の電気料金は減らない
ためておいた電気を昼間使う → ピーク時の消費電力は減る → 〇
解答 ア、カ
Ⅲ ダイズ・イネ・日本の河川・呼吸商
問1 知 あ△ い〇 う〇 え△
あ 乾燥大豆を炒って粉にしたもの → きなこ です。
知っている受験生も多いと思いますが、知らなくても、選択肢の中に粉状のものがきなことかたくり粉しかないので、選べるのではないでしょうか。
い 大豆からできる液体 → 豆乳 これは簡単ですね。「固めるととうふができる」ことからも確認できます。
う 大豆+米こうじ+塩 → みそ
え 成熟前のダイズの種子 → 枝豆
解答 あ ク い ウ う ア え ケ
「ダイズ」の種子である「大豆」…問いにはなっていませんがさすが桜蔭中ですね。理科も「言葉」も好きな私は嬉しくなってしまいました。
※生物の種類の名称はカタカナで表記するのが理科のルールです。
問2 知 考 〇
日本の河川の特ちょう。社会の問題でよく登場しそうです。
グラフから考えても解けますが、よく聞かれるあれだ!と思った受験生も多かったでしょう。
解答例 傾きが急で、河口までの距離が短い。
その後の「そのため、日本では河川の水と岩石との接触時間が短く、軟水となる」にもスムーズにつながります。
問3 知 〇
これは解説不要ですね。
解答 花びら
問4 知 〇
イネは「風」が花粉を運びます。
解答 風
問5 知 〇
種子でないもの ジャガイモ(地下茎)
バナナ(果実)
解答 ウ、オ
問6 知 〇
風媒花の花粉の特徴 → 軽くて数が多い
解答 イ
問7 計 考 △
呼吸商の問題です。(正確には商ではなく比を求めています)
桜蔭中志望なら何回か解いたことがあるでしょう。
種子が呼吸を行うと 酸素吸収+二酸化炭素放出 が起こります。
このとき、吸収された酸素の量≧放出された二酸化炭素の量 になります。
小さいビーカーに水を入れた場合の変化:酸素の吸収量-二酸化炭素の放出量
になっています。
水酸化ナトリウム水溶液は二酸化炭素を吸収するため
小さいビーカーに水酸化ナトリウム水溶液を入れた場合の変化:酸素の吸収量
になります。
種子X:酸素(の吸収量)-二酸化炭素(の放出量)=3
酸素(の吸収量)=15
二酸化炭素(の放出量)=15-3=12
種子Y:酸素(の吸収量)-二酸化炭素(の放出量)=0
酸素(の吸収量)=14
二酸化炭素(の放出量)=14
よって
種子Xが呼吸で吸収した酸素=15 放出した二酸化炭素=12
15:12=5:4
解答 5:4
問8 考 △
種子X は 5:4 なので、タンパク質
種子Y は 14:14=1:1 なので炭水化物 です。
解答 X イ Y ア
問9 知 △
この問題自体は平易な知識問題ですが、問7・8が解けないとできないため、△にしてあります。
種子X:タンパク質 → ダイズ
種子Y:炭水化物 → イネ
解答 X エ Y ア
Ⅳ 雲のできかた
問1 知 考 〇
あたたかい空気の方が軽いので、軽い方の空気のかたまりXがあたたかいことになります。
解答 X
問2 知 〇
雨雲の名称 → 乱層雲
解答 乱層雲
問3 考 △
図2から、P地点は冷たい空気のかたまりYの中にいて、あたたかい空気のかたまりが雲とともに近づいてきます。空気の境目(前線)よりも近くに雲があるので、雨が降った後あたたかくなります。
雲C → 雲B → 雲Aの順に近づいてくるので、だんだん低くなります。
解答 ウ、キ
2つと指定してくれているところが親切ですね。
問4 考 △
図2を見ると、左側から雲とあたたかい空気のかたまりが近づいてくるのでP地点の方が先に雨が降り、先にあたたかくなります。
普通、前線は温暖前線と寒冷前線がセットになっていて、温暖前線の後に寒冷前線がやってくるので、オの「P地点が先に寒くなる」も選びたくなりますが、この問題では温暖前線しかかかれていないため、これは選べません。知識によってジャマされた受験生もいたことでしょう。
解答 ア、ウ
問5 考 計 知 ア〇 イ〇 ウ△ エ△ オ〇 カ△ キ△
ア 雲ができ始める温度。14.5gの水蒸気を含んでいるので、これがギリギリになるのは、表1から17℃
解答 17 (℃)
イ 30℃ → 17℃に、13℃下がっています。
100m で 1℃ 下がるので
13℃ 下がるには
100×13=1300(m)
解答 1300(m)
ここまでは定番の問題ですね。
次から少し注意が必要な問題になります。
ウ 図3①より、周囲の気温は25℃ → -10℃に下がっています。
5000m で 35℃ 下がっているので
100m では 35÷50=0.7(℃) 下がっていることになります。
解答 0.7(℃)
エ 1300mでは
0.7×13=9.1(℃) 下がるので
25-9.1=15.9(℃) になります。
解答 15.9(℃)
その後の文「Zの温度(ア=17℃)の方が高い」にも当てはまります。
オ 短い時間に大量の雨を降らせる雲 → 積乱雲
解答 積乱雲
カ 図3②より、周囲の空気は5000m上がると、25℃ → 0℃に下がっています。
5000m で 25℃ 下がっているので
100m では 25÷50=0.5(℃) 下がることになります。
解答 0.5(℃)
キ Zは地表で30℃の空気のかたまりで、100m上がると1℃ずつ下がります。
周囲の空気は地表で25℃、100mで0.5℃下がるので、
この温度が等しくなるのは
(30-25)÷(1-0.5)=10
100×10=1000(m)
解答 1000(m)
5℃の差が埋まるためには…という旅人算的な考え方でした。
ひとつひとつの問題は難しい!というほどはないのですが、空気のかたまりの温度の下がり方と、周囲の空気の下がり方があり、さらに周囲の空気の下がり方が図3の①と②で2つあるので、ややこしかったかもしれません。
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