-
受験者平均点 38.2 点
-
合格者平均点 48.3 点
-
想定合格点 45 点
長年、神奈川県随一の進学校として知られてきた栄光学園。
東大合格者数だけを見れば、たしかに近年の聖光学院の躍進は目覚ましいですが、自由な校風の少人数校で、個々の生徒の個性を大きく伸ばす環境に憧れる受験生は非常に多いです。
OBも多士済々。
各界をリードする人材を輩出しています。
環境という点では、緑あふれる広大なキャンパスや、自然と調和した開放感のある新校舎も大きな魅力です。
ただ中学受験においては全科目において非常に独自性の強い出題で知られる、最難関校の一角です。
各科目に共通して「正しく読み取る力」 「条件を整理し考える力」 「自身の考えを論理的に説明する力」が求められ、大手塾でのテキスト学習ではなかなか対処が難しい出題に手を焼いてしまう受験生は多いもの。
ここからは2024年の栄光学園中の算数の出題を通して、どのように対処すれば合格の可能性を高められたのかを見ていきましょう。
〇:栄光学園合格のため必ず正解したい問題
△:合否を分ける問題、部分点がある場合は確実に拾いたい
×:解けなくても合否に影響は与えない問題で、部分点も少し取れれば充分
解答例はこちら
大問1
(1) ア 〇 イ 〇
栄光学園らしい数の操作の問題です。
まずは題意に沿って作業してみましょう。
「全ての受験生に落ち着いて試験に臨んでほしい」という栄光学園の優しさを感じられる問題ですね。
(2) 〇
「何度も使うであろう真ん中あたりに大きい数!」という感覚で解いても構いませんが、手を動かしていく中で何らかのルールに気づきたいところです。
解答例では「6段目の数は、何を何回かけた数か?」をA~Fの記号を用いて式で整理しました。
この発想は(3)以降にも活きてきます。
(3) △
「最大何回割り切れる」は素因数分解を軸に考えられると良いですね。
(2)で6段目の数において「5はBの位置にあるので5回かけられている」ことが求められていれば易しいでしょう。
(4) △
(2)(3)と同じように「2はBの位置だから5回」「4はDの位置だから10回」「6はFの位置だから1回」かけられていることが分かります。
4=2×2なので、2で2回割れることにも気を付けましょう。
(5) △
「どの数を何回かけたか?」が解答例のように「パスカルの三角形」に沿って考えられると気づくことが出来ていたら(2)と(4)の発想と同様に解くことが出来ました。
大問1のまとめの問題として、適切な難度・分量だったように思います。
大問2
(1) 〇
「条件の多い水量の変化・グラフ」も最近の首都圏の中学受験における頻出のテーマです。
栄光学園でも過去に様々な形式で出題がされています。
今回は仕事算との複合問題です。
解答例では「AとCを同時に開けた時」に、どのような減り方をするのか?をグラフで整理して考えました。
栄光学園中合格を目指す受験生なら特に難しくはないでしょう。
(2) 〇
(1)の続きです。
「AとCに加えてBも開けると、1分でどれだけずつ減るか?」を考えましょう。
途中で新しく閉めたり開けたりしないので、特にひっかけもなく易しいでしょう。
(3) △
今度は「BとDを同時に開けた時」に注目します。
「はじめは減っていってDが閉まる、その後はBだけで増えていく」という状況だと分かり、Bから1分間に入る量は既に(1)で求めています。
これでDから1分間に出る量が求まり、必要な条件が揃いましたね。
あとは40Lの時と20Lの時の動きの変わり目に注目して、丁寧に処理しましょう。
最後まで気を抜かずに取り組みたい問題です。
(4) △
「通常時はA≤D」「今回はA+B>D」というだけの問題です。
大問2の最終問題ですが、特に難しくはありません。
ここまでは栄光学園らしい斬新さは特になく、作業量も多くはないので自信を持って解き進められた受験生も多かったことでしょう。
大問3
(1) ア △ イ △
「各位の和」や「各位の積」に注目する、栄光学園らしい数の性質の問題です。
同じテーマは2016年(平成28年)にも出題されているので、類題を経験したことがある受験生も多かったのではないでしょうか。
(1)は「各位の和」に注目する問題です。
解答例では一の位に注目して和分解しましたが、百の位に注目して規則性を利用しても良いでしょう。
意外とミスをしやすい問題ですが、決して難しくはありません。
慎重に取り組んで正解したいところです。
(2) ア △ イ △
「各位の積」に注目する問題です。
一の位が0~9の時、それぞれ何通りになるか丁寧に調べましょう。
この問題で合成数(2つ以上の素数の積で表せる数)か、そうではないかに注目することが(3)以降にもつながります。
(3) ア △ イ ×
(2)より一の位が0、1、素数の時には成立しないことが分かります。
残りの4、6、8、9を「素数の積で調べる」「和で足りない部分は1を並べる」に注目して、丁寧に調べましょう。
8は8=2×4と8=2×2×2の2種類が考えられることにも注意が必要です。
大問3は(1)から処理量の多い問題が続いたので、完答できた受験生は多くはなかったことでしょう。
大問4
(1) 〇
「三角柱の重なりを考える」という、立体の複数回切断の応用問題です。
(1)は感覚的にも解ける問題で易しいでしょう。
もちろん「直線と直線は点で交わる」「面と面は直線で交わる」という基本ルールに沿って考えることは必須です。
(2) ア △ イ △
(1)と同様、立体図形の2回切断のルールに沿って見取り図に落とし込みましょう。
体積は下の図のように「内部に底面を取って三角すい」として考えられると良いですね。
(3) ア △ イ △
(1)(2)と同じように立体図形の2回切断のルールに沿って作図しましょう。
体積に関して、解答例では三角柱から上の三角すいと下の断頭三角柱を除くと考えました。
もちろん他にも様々な分け方があるでしょう。
「断頭三角柱」をテーマに立体感覚を問う難度が高い問題ですが、これまでの中学受験の学習の質と量で差がつく良問と言えるでしょう。
総論
独自性の強い出題で知られる栄光学園中の算数の入試問題。
2024年の算数は合格者平均点が48.3点、受験者平均点が38.2点になりました。
ここ3年は受験者平均点が5割を下回る難化傾向が続いていましたが、2024年は若干ながら緩和される結果となりました。
出題内容を見てみても「誰も正解できないような極端な難問がない」「完全に初見!という斬新さを極めた出題はない」など、栄光学園らしい独自性や得点の取りにくさは若干薄まったと言えるでしょう。
ただ易しくなったわけでも、栄光学園らしさを失ったわけでもありません。
2024年も、どのテキストにも載っているような典型題は出題されず「見たことがありそうな発想を別の切り口で問う」という、さすがの作問力の高さを見せてくれました。
この年度での合格ラインは45点/70点が目安でしょう。
大問1と大問2は比較的取り組みやすいのでここで30点近くを確保し、あと15点を大問3か大問4の得意なほうを中心にかき集められれば、合格の可能性を高めることが出来たと言えるでしょう。
例年通り「完答できる大問がなくても、取るべきものを取れたら合格点には乗せられる」という栄光学園の算数らしい戦略が活きる出題でした。
ここからは2025年以降に栄光学園中合格を目指す皆さんへのアドバイスです。
正直なところ、栄光学園は教える側にとっても「難しい」学校です。
初見への対応力を重視する出題が中心だと、どうしても生徒によって「向き・不向き」が出てしまうことは否めません。
ただ対策がないわけではありません。
過去問を通して出題傾向を知り、講師と相談して類題演習を重ねることで、栄光学園らしい頭の使い方を知ることが出来るでしょう。
また試験において正解すべきものと捨てるべきものを適切に見極める「取捨選択の判断力」を身につけることが出来るはず。
これが栄光学園の算数において合格ラインを上回るための鍵になります。
栄光学園中への合格を目指す受験生を、自律学習サカセルは心より応援しています!
栄光学園中受験解説!特徴や併願パターンはこちら
栄光学園中の国語分析(2021年)はこちら
栄光学園中の算数分析(2021年)はこちら
栄光学園中の算数分析(2018年)はこちら
栄光学園中の算数分析(2015年)はこちら