この記事を書いたのは...
松田 浩志
自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。
大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。
現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。
個別指導・家庭教師の自律学習サカセル
サカセルコラム
早稲田実業中の国語分析(2021年) Column
早稲田の附属校として男女共に人気のある早稲田実業学校中等部。
特に、女子においては高いレベルの学校として知られ、高い学力が要求されます。問題の癖も多少あり、対策は必須と言って良いでしょう!
◆出題形式
試験時間60分
◆大問3題構成
1.文章題 13題(設問は8問)
2.文章題 7題(設問は3問)
3.漢字などの知識系問題
文章量は年々減っており、数年前までは大問1・2合わせて6000字以上(5,6ページ)が普通でしたが、2021年度では6000字(3ページ)を切るまでになっております。
文章の難易度自体はさほど変わってはいません。
の時間配分で良いでしょう。
大問1は問題数の割に1問1問の難易度が低いので時間は多くかからないです。
大問2は問題数は少ないですが、大問1に比べると1問が重く、難しいので時間は多めに取っておきたいですね。
大問3は11題。難しくはないので基本的な知識や漢字はしっかり勉強をして、準備して臨みたいですね。むしろ落とすと痛いと考えてください。
数年前までの早実は「早実と言えば抜き出し」と言われるほど抜き出し問題が非常によく出る学校でした。しかし、ここ数年で大問2の説明的文章において記述問題が出るようになり、大きな傾向の変化が見られました。
そして、記述問題がガッツリ出るだろうという予想の中での2021年度入試……
これまた予想を裏切る形の出題となりました。
それではどのような形で出たのかを一緒に見ていきましょう!
今回使用する指標
○:早実合格には確実に取れてほしい問題
△:早実合格の勝負所・差がつく問題
×:落としても合否には大きく影響しない問題
予想合格点70点
早実の大問1は伝統的に物語文の主題がされます。
内容は比較的難しく、大人が読むような対象年齢が高めの文章が出ます。
ストーリーも暗くて重いものが多く、小学生向けの明るいお話ではありません。小学生にとっては理解しにくかったり、日常では触れないようなものばかりが登場します。
最近の傾向では選択肢問題が大半を占めており、以前のような場面分けや抜き出し問題は出題されなくなっております。つまり「選択肢問題を制するものが早実国語の物語を制す!」と言えます。
そして早実の選択肢の特徴として挙げられるのが「どういう状態・境遇・環境にいる人物が」「何があって」「どういう心情になった」という3つのパターンが盛り込まれています。生徒たちにはこれらを「背景」「きっかけ」「気持ち」と指導しています。この3つをしっかり捉えられれば早実の選択肢問題は容易に解けます。
それでは具体的に問題を見ていきましょう!
慣用表現。しっかり取りたいです。
直前の2行を読めていれば解けますね。
「背景」「きっかけ」が直前の2行に詰まっています。
「次郎は〜どんなにしあわせかと…」
に部分から石田と自分の境遇の違いを考えていますね。
同時に下線部の
「窓から空が見える〜大きく息ができる…」
からプラスの感情も読み取れます。
この台詞を皮肉と読み取ることもできますが、次郎の性格や石田との関係から考えると皮肉は適切ではないでしょう。
これは石田と次郎の「背景(2人の境遇・環境)」を考えれば解けます。
石田の背景として、本文の冒頭部分から「お金持ち」であること、下線部5の直前の部分から「貴族的、都会的、地方的なことは嫌い」ということが読み取れます。また、下線部6から「次郎のとこを親友である」と考えていることが分かりますね。
ここから選択肢を考えてみてください。
問3と同様に、まずはしっかりと2人の「背景」をおさえてください。
そして、石田は下線部2の台詞から洪水に対してプラスの気持ち(他人事でもある)を持っていることをおさえましょう。
一方でその直後の次郎の台詞から次郎は洪水に対して当然マイナスの感情を持っていることが分かります。
以上をおさえた上で選択肢を選んでみてください。
語彙の問題ですね。
「反対の意味」というヒントと「○○者で終わる単語」というヒントで考えていきましょう。
これも「背景」「きっかけ」「気持ち」をおさえてください。
直前4行から「石田が貴族的、都会的であり、地方的なことが嫌い」という背景が、5行前の次郎の台詞から「次郎が農業の話をしている」というきっかけが分かりますね。ここを読み取れていれば選択肢は容易です。
これも「背景」「きっかけ」「気持ち」をおさえていきましょう。
まずきっかけが下線部直前の次郎の様子から読み取れますね。
そして下線部に「自らを誇った。」とありますので、そこから合う選択肢を見ていきましょう。
これは次郎から見た時の石田の「人物像」の問題です。
2人の「人物像」と直前の4行から「石田は音楽を聞かせることで物事を大きく見ることを忠告してくれる存在(と思い込んでいる)」という内容を読み取れれば選択肢は容易ですね。
下線部直前に
「批判的に見ることもあるが…」
とあるので石田をマイナスの存在として感じることもあるわけです。しかし、下線部の通り「なくてはならない」とも感じており、その「きっかけ」として直前4行にある「石田がどういう存在なのか」を読み取りましょう。
早実の大問2は伝統的に説明的文章が出題されます。
こちらは説明文型の随筆文が出ることもありますので、注意が必要です。
内容は大問1と同様に、少し難解な文章が出ます。ただし、文章の量は少ないので丁寧に読み解いていけば問題はないでしょう。
文章の特徴として「対比構造(二元論)」で論理展開が進んでいくことが挙げられます。
この辺りは読みの訓練が必要です。
最近の問題傾向としてはなんと言っても「条件記述」ですね。
元々は抜き出しや空欄補充が多かったのですが、数年前から条件記述がメインになっています。
条件記述の詳しいお話は後ほどしていくとして、早実の大きな特徴として「採点の効率化」があり、この視点から考えていくことが早実の条件記述の糸口は見えてきます。
ズバリ、「自分で考えるな、抜き出しのように探せ」です。早実の国語は採点が効率的行えるように作られています。よって、「自分で考えて記述する答案よりも可能な限り文章中の言葉を使用した記述の方が好まれる」わけですね。記述に基本中の基本ではありますが、記述が短いだけについ疎かにしがちなので気をつけて欲しいです。
それでは具体的に内容を見ていきましょう!
早実の空欄補充・抜き出し問題ですね。
この問題のコツは以下の通りです。
空欄の前後や設問から「キーワードを捉える」こと。
そして、それがどの辺りに書いてあるのかを「大きく範囲を決め」
キーワードを手掛かりに「小さく答えを探していく」こと。
キーワードとしては「地図がある」「安心」ですね。これが書いてある部分は1・2段落ですね。ではまずこの辺りを探していきましょう。
そうすると2段落冒頭に「地図がある…」と書いてあります。ここを見つけられれば答えはすぐ見つかりますね。直後を探してみましょう。
さあやって参りました!早実名物の条件記述ですね。
条件記述の攻略法として、
「指定単語もしくは似た表現を本文中から見つける」
「その部分を含んだ表現を使う」
という2点をおさえましょう。
では「保証」という言葉を探しにいきましょう。当然、Aが2段落にありましたので、その続きということで2段落を探していきます。すると2段落の8行目に「担保」という単語が出てきますね。これが保証の似た表現になります。
ここまで来ればあと少しです。この部分の1文を抜いてあげると
「未来が見えると生物学的な意味での生が担保された気になり、」
とありますね。
「未来が見える」=空欄A
「気になり」=ように感じられる(空欄B直後)
ですので、「生が担保された」を使用して、「生が保証された」となります。この部分がこの記述の芯なわけですね。
あとは、「自らの生が保証された」「自分の生が保証された」のように肉付けをしてください。
こちらも条件記述になります。
もしかすると記述の中では1番難しかったかもしれません。
設問としては
「未来の見えない状況=自由」これはなぜか?
という問題です。
未来が見える=マイナス・未来が見えない=プラス、となっているわけですね。このような文章が書かれているのが4段落になります。よってこの辺りを中心に探していきましょう。
まず、設問の「未来の見える」状況では【A】ことになってしまうが、という部分が4段落1行目の「すべての行動を予定調和で終えてしまうと、」の「終えてしまう」が設問の「なってしまう」と似た文体になっていることに気付ければ、本文の「予定調和」が設問の「未来が見える状況」と関連があることに気がつけるのではないでしょうか。
あとは、他の部分を文章中の言葉に置き換えていきましょう。「予定」=「未来予測」、「調和」=「合わせて」、としますと、「未来予測に合わせて〜」となりますね。
あとは「合わせて」に繋がるように肉付けをしていきましょう。「行動する・生きる」などが良いでしょう。
こちらも条件記述になります。
早速、「選択」にあたる言葉を探していきましょう。すると、4段落2行目に「判断、対処」という言葉が出てきますね。これが「選択」にあたります。
ここまで来ればあとは簡単ですね。
何を選択するのか→「混沌とした現在」
その結果何ができるのか→「生きている実感」
と肉付けしていきます。
あとは「混沌とした現在を自ら選択し、生の実感得る」というような形でまとめましょう。
この問題から、対比の構造(二元論)を理解して欲しいという早実からのメッセージが読み取れますね。
選択肢が「地図のない登山」とあることから、4段落の後半部分を中心に見ていきましょう。
そうすると、まず「判断材料」と似た表現として
「今現在の私の知覚、感応、直感、判断、行動の結果として」
という部分がありますね。ここの部分を置き換えていきましょう。
「知覚、感応、直感、判断」=「判断材料」
「今現在の私の」=「今現在の自らの」
「行動の結果として」=「行動する」(ことで)
となり、以上から「今現在の自らの判断材料から行動する」ことでという形にできますね。
Aの続きとなります。
Aの「今現在の自らの判断材料から行動する」ことで何が起きるのかを4段落後半から読み取ります。するとすぐに「生のダイナミズム」という言葉が見つかりますね。
後は肉付けをしていきましょう。
「生のダイナミズムを経験できる(得られる)」から。という形でまとめられますね。
早実の大問3では漢字・知識の出題になります。
大問1・2を解く前に先に取り掛かるのも良いでしょう。
難しい問題は出ません。しかし逆を言えば、「落とすと痛い」ことになりますので、しっかりと取り切れるように勉強しておきたいですね。
5の「牛を馬に乗り換える」は難しかったかもしれません。
Fは「馬の耳に念仏」から馬であることはすぐに分かると思います、そこから「…乗り換える」という言葉から乗れるものはどれかを考えれば良いでしょう。
他はかなり簡単なことわざですので正解したいところです。
特段難しい漢字はありません。しっかりと取り切りたいところ。
送りがなでミスをしないように気をつけましょう。
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松田 浩志
自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。
大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。
現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。