サカセルコラム

早稲田中の国語分析(2021年 第1回) Column

過去問分析

早稲田中の国語分析(2021年 第1回)

2022.02.10

◆各種データ

国語算数60点満点、理科社会40点満点、4科目合計200点
合格者最低点 ①120/200 ②129/200
合格者平均 ①33.9点 ②44.0点
受験者平均 ①28.4点 ②37.8点

◆出題形式

試験時間50分 60点満点

◆大問2題構成

大問1 小説文 8問(小問数11)
大問2 論説文 7問(小問数9)

◆問題の種類(2021年度)

・記述 20%
・選択肢 60%
・抜き出し 10%
・知識 5%
・漢字 5%

という得点の割合になっています。

合格者平均点が5割〜7.5割と、年によって難易度がぶれる学校です。

個人的には、1次試験の方は易問〜難問まで幅広く出題し、2次試験の方が難問が少なめという印象です。

2月3日の2次試験に関しては、「早稲田中の対策を本格に行ってはいないが、模試の偏差値の高い子」を取ろうとしているのかなと個人的に思っています。

毎年選択肢中心の大問2問構成、形式に関しては幅広く出題というのは毎年一緒です。

良くも悪くも大手塾の「模試」に近い構成となっているため、記述中心の学校に比べると、手が出しやすく感じることでしょう。

ここからは2021年度の早稲田中①の出題を通して、どのような戦術で取り組めば良いのかについて書いていこうと思います。

今回使用する指標

○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題

大問1 小説文 田辺聖子「夕ごはんたべた?」

問1空欄補充 ○

 X にふさわしい言葉を入れる問題です。

本文を見ると、

玉子は、大学の先生というからには、 X だろうと思っていたら、やさしい上方なまりである。

ここから、

 X は大学の先生が使いそうなことば遣いであること、

「思っていたら」より、やさしい上方なまりとは「逆」の解答イメージであることがわかります。

「なまり」と反対になるのは【標準語】ですね。

また、大学の先生の使いそうなことば、ということで【理知的】も合いそうです。

答えはアです。

問2選択肢 ○

傍線部1「まあまあ、兄ちゃん」と六平が間に入った ときの六平の気持ちについて答える問題です。

傍線部1の前より、

「なんで黙って家をあける。出ていくつもりなら帰ってくるな。なんのつもりや、それは。ノコノコ帰ってきて」(略)

とあります。

ここから、家出した大吉に対して、父親である三太郎が叱責しているとわかります。

傍線部1の後より、

「ま、兄ちゃんの怒るのもわかるけど、……大吉も反省しとるんやし」
「反省してるようには見えん」
「まあ、ええやんか」
ええことない。
三太郎はけじめをつけたい気である。どうしてことわりなく家を出たり入ったりするのだ。

ここから、【三太郎は大吉が断りなく家出をすることに対してけじめをつけたいのに、六平が大吉をかばって話をうやむやにしていること】がわかります。

答えとして考えられるのはエです。

その他の×ポイントは

ア× 兄の三太郎とは反りが合わず、なるべくもめごとを起こしたくない
イ× 三太郎と玉子の代わりに大吉を更生させよう
ウ× 優越感に浸り    です。

問3選択肢 ○

大吉が家出から帰って来た日の三太郎の不機嫌な顔つきには、どのような心情がこめられているか選ぶ問題です。

ふさわしくないものを選びます。

答えはイで、「見識ある親として」が×です。

 Y の4行後に、

かつまた、三太郎はほんとうに大喝したり、ぶんなぐったり、できる男ではない。

そう思うのと、実際に行動にうつすのとは大ちがいだ。できないから、しぜんにふくれっつらになるのだが、そこを六平たちがやってきて、うやむやにごまかしてくれたから、たすかった気も、しないではない。

とあります。ここから、親としての威厳のなさ、見識のなさなどが見えると、イが誤りと気付くのではないかと思います。

問4文脈から判断する空欄補充の知識問題 ○

 Y を含む文の周辺を見てみると、

〜三太郎はどうしても(おい、ちょっと待て。オマエさっきから一ト言も、ものいわんやないか。ーー何もかもヒトにしゃべらせてすませとるやないか。ものいわんやないか。 Y 、卑怯陋劣、というのは、オマエのことではないか。男らしくないぞ)と大喝して、息子をぶんなぐりたくなる。

とあります。

ここから、【言いたいことを他人に喋らせ、自分では何も言わない男らしくない様子】【卑怯陋劣と同じような内容】が Y に入ることがわかります。

答えは厚顔無恥(コウガンムチ)です。

問5抜き出し △

傍線部2のやはり、しゃべりたかったらしい から、大吉がどのようなことが言いたかったのかを抜き出して答える問題です。

傍線部2の前を見てみると、

「オマエ、なんで長崎へいった?」
「それは……この前、お父さんが、お母さんに話してたから……思いついた」
大吉は素直にいう。
やはり、しゃべりたかったらしい。

ここから、【大吉が長崎へ行ったのはなぜかについてしゃべりたそうな様子】が読み取れます。

傍線部2の後を見てみると、

大吉はぶっきらぼうな口調ではあるが、反撥の感じられない返事をする。
「どうせ、お父さんらも行くやろ。その下見にいってきてやった」
「こいつ!」

ここから、【反発せず、長崎に行った理由を話す大吉の様子】が読み取れます。

ここまでに、長崎へ行った理由の真意は読み取れないので、これ以降の大吉のセリフから適切な内容を探します。

答えは【タマに】は休んで骨休めしたらええやんか の【タマに】です。

下見に行ったのは何が目的だったのかと考えるとわかりやすいと思います。

問6選択肢 △〜×

傍線部3「こいつ!」のときの三太郎の気持ちとしてふさわしいものを2つ選ぶ問題です。

これは問5を見るとわかりますが、家出をした理由を【父の骨休めのための長崎旅行の下見】と大吉は言っています。

これに対して、本質的に親としての威厳や見識のない三太郎は、本気で怒っているわけではないと読めるかどうかが勝負どころでしょうか。

よって、アの胸くその悪いは×となります。

エの慕わしいは「したわしい」と読み、「ある特定の人間に憧れている」意味合いになり×

オのうれしいは、傍線部3の前でも後でも読み取れません。よって×。

答えはイのそらぞらしい、ウの気はずかしいとなります。

問7C選択肢、C以外抜き出し △〜×

鞍馬女史(六平の妻・夫人)の性格について答える問題です。

三太郎や玉子とは違って、大吉に対しては A(3字) な立場であり、
また、三太郎たちの苦労に格別配慮するわけでもない B(3字) な人柄のため、
物怖じすることなく大吉の窮状を C している。
その C は学者らしい豊富な D(8字) を用いて、的確に言い当てたものである。

Aは「〜な立場」につながるようにしつつ、三太郎と玉子の立場とは違うものを選んで「無責任」
Bは「〜な人柄」につながるようにしつつ、苦労への配慮を特にしないものを選んで「気さく」
Cは「学者らしさ」が出ていて、「大吉の窮状」に関わるものから「オ 分析」
Dは「学者らしい豊富な〜」につながり、「〜を用いて」につながるものから「ヴォキャブラリイ」です。

8字というのが最大のヒントだったかもしれませんね。

問8記述 △〜×

二重傍線部「大吉はいちばんうしろにふてくされた顔で、うす汚れて、すこし小さくなっていた」ときの大吉の心情について、「本当はなにをしたいのかに触れつつ」答えます。

二重傍線部以降で、六平と鞍馬女史が、大吉と三太郎の仲を取り持つ動きを見せています。

大吉はこの時、「仲を修復する動き」を見せれば良かったものの、残念ながらそれができていません。

本当はなにをしたいのかというのは、【両親にきちんと謝罪】したかったのだと考えられます。

また、勝手に家出をした後、勝手に家に帰って来たわけで、両親がしそうな動きを考えると、まず【両親から叱責されること】が考えられます。

少し小さくなっていたのは【上手く言葉に出来ず、萎縮している(元気がない)】のです。

まとめると、

背景【両親に謝罪するつもりだったが、】
きっかけ【叱責されると考えると、上手くそれが言葉にできず、】
気持ち【元気をなくしている。】

としました。

少々難しいと思います。

大問2 論説文 ロバート・キャンベル「『ウィズ』から捉える世界」 村上洋一郎編「コロナ後の世界を生きるーー私たちの提言」より

問1漢字 ◎

aしさ b浸透 c高揚

少々難しいですが、全問正解を目指したいところです。

問2選択肢 ○〜△

傍線部①「「二〇〇年前の日本人が、驚くほど今と似た状況に直面していた」の、「今と似た状況」とはどのようなものかについて答える問題です。

傍線部①の前より、

〜そこでは、「うめきながら、彼らが飲むもの、食べるもの、まるで味がしない。ひとりぼっちで体調が回復するまで一二日間を、指を折って布団の中で待つ以外ないのである」とあります。

〜芝居も(略)営業停止にした江戸の様子や、客が来ず生活できないという人々の嘆きが書かれています。

ここから、「体調が回復するまで布団の中で過ごすしかないこと」「芝居を営業停止にしたことで、生活できない人がいること」がわかります。

抽象化すると【活動の制限】と【経済的な困難】に陥っていることがわかります。

傍線部①の後より、

〜夫が体調を崩して働けなくなり、無理をした妻が先に亡くなる〜
困窮しているところを町内の人が見かねて葬式の費用を出すけれど〜

ここから「夫が体調を崩して働けなくなり、無理をした妻は亡くなった上、困窮している」ことがわかります。

ここも【経済的な困難】が読み取れますね。

どちらも満たしているのはオです。

要素を抽象化する必要があるので、少々難しく感じてしまったかもしれません。

問3選択肢 ○〜△

傍線部②「古典は、共同の経験値の集積であって、その意味では、私たちにとって大事な資源なのです」がどういうことかについて答える問題です。

傍線部②の前より、

ある種の奇談ですが、人はひとりでは生きていけないということが示唆されています。当時から、感染症は社会全体で乗り越えないといけないという認識でした。古典は、共同の経験値の集積であって、その意味では、私たちにとって大事な資源なのです。

ここから【社会全体で感染症は乗り越えないといけないという認識が当時からあったこと】がわかります。これは、「共同の経験値の集積」の言い換えとなっています。

また、残りの部分の「古典は〜私たちにとって大事な資源なのです。」ですが、「資源」とは「人間の活動のために利用できるもの」を表します。つまりは【古典は、私たちにとって大事な、感染症を乗り越える(=活動)ために利用できるもの】と言えます。

どちらも満たしているアが正解です。

これも、傍線部の抽象的な表現を具体化する必要があるので少々難しく感じたかもしれません。

問4文脈から判断する知識問題 ○

「 A 徳あれば B 報あり」の A 、 B に何が入るのかを答える問題です。

 A 、 B を含む一文に注目すると、

「 A 徳あれば B 報あり」という言葉があるように、人に施しを与える、誰かを助けたりすることは、周りの評価などを期待しないで、淡々とシェアしなさいという文化が、江戸時代にはあるわけです。

「徳」というのを「プラスのことをする」と考えられるかどうかがポイントです。

「周りの評価などを期待しない」という内容から A に【表に出さない】イメージが掴めるかどうかがポイントでしょう。

答えはエです。 A が「隠」となります。

単純な知識問題として、知っているか否かを問う問題ではありません。

しっかり文脈を押さえたいところです。

問5抜き出し △

傍線部③「寄付やボランティアは特別なことだし、ちょっと違う、恥ずかしいなと思う」と人々が思うのはなぜか、一文で抜き出す問題です。

傍線部③からヒントを取ると、「寄付」「ボランティア」「恥ずかしい」という内容があります。

このうち、「恥ずかしい」は傍線部③の一つ前の段落にあります。

「恥ずかしい」を含む一文の、【自分の名前】が正解です。

問6選択肢 ○

傍線部④「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を保ちながら連帯感を築くという二律背反に直面しています」とはどういうことかについて答える問題です。

傍線部の後より、

子どもに朝食を食べさせ登校させられない一人親世帯、手を挙げて「困った」と言いづらい人たちがいます。普段から声を出すといじめられる、浮いてしまうと感じている人たち、社会文化資本にアクセスできないような立場の人は、現在のような状況では、適切なタイミングで声を挙げないと命にかかわります。

〜私たち一人ひとりが、明日は誰かをたすけられるかもしれない、そういう自分になりたいという気持ちを持つこと、持てる環境をもっと整えていくべきではないでしょうか。

ここから「連帯感」の正体は【社会的弱者と協力していくこと】だというのがわかります。

また傍線部の「二律背反」より、「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を保ち」と「連帯感を築く」は逆の内容となっています。

前者を【他人と距離をとる】と置き換えられれば、答えはアだとわかります。

問7記述 △

傍線部⑤「それぞれが、その人にあった適切なソーシャル・ディスタンスを保持しつつ、他者の喜びや痛みをフェイクではなく確かな事実として理解するような連帯感に溢れた社会」では、人々にはどうすることが求められるかを答える問題です。

本文から探すヒントとして、「ソーシャル・ディスタンス」「他者の喜びや痛み」「連帯感」「社会」あたりがありますが、傍線部⑤の一つ前の段落でヒントと似た表現が見つかります。

ソーシャル・ディスタンスは、今はまだ物理的な距離として考えられていますが、【社会の中の自分自身の位置付けを知る】、【自分の居場所から他者の関係を見つめ直すこと】だとも捉えたい。【一人ひとりの資質、意欲によって、自律的に能力を発揮できる社会をいかに整備できるか】、そこが問われています。

人々に求められているものに当てはまるのが【 】の内容になります。

これらをまとめて、

【社会の中の自分の位置を知り、そこから他者との関係を見直し、自律的に能力を発揮する】こと。

としました。

部分点以上は狙いたいところです。

◆まとめ

年によって難度の上下はありますが、ほとんど一定の形式で出題がなされる早稲田中。

本文をきちんと押さえることを基本として、具体化と抽象化のどちらもできた方が解きやすいと思います。

大問1で苦労した子が多かったであろう回だと感じました。


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増田 雄介

この記事を書いたのは...

増田 雄介

圧倒的な指導力、学校別の専門性の高さ、そして面倒見の良さを持つ自律学習サカセルの国語・社会の看板講師。

その驚異的な指導力を武器に、大手集団塾の開成中コースの国語担当や有名個別指導塾のリピート率1位の凄腕講師として活躍。
成績が本当に伸びる実戦的な指導に目を付けた自律学習サカセルからのスカウトを受け、満を持して文系科目の講師として指導開始。

個別指導の業界では指導力No. 1の呼び声も高く、逆転、順当のどちらの合格にも強く、生徒のレベルに関係なく指導できる幅広さを持っている。

生徒だけでなく、自分の子供の成長を見守るのが楽しみな一児の父でもある。
趣味はぽっちゃりの自分でも着られるファッションの構築。

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