慶應義塾唯一の中高一貫校として知られる慶應義塾湘南藤沢中等部、通称SFC。
帰国子女も多く、また大学のキャンパスも隣接していてアカデミックな雰囲気が漂います。
大学附属校らしく学校行事も盛んで、また受験にとらわれない学習内容も魅力です。
ただ中学受験においてはトップ校の一角で、入学難度の高さも知られます。
特に独特な出題がなされる科目は国語。
問題の条件に沿った作文は練習が必須です。
算数は「問題ごとの難度の差が大きい」「規則性・量の変化・グラフの利用に関する出題が多い」ことが特徴として挙げられます。
とは言え、全体の難度は比較的一定していて、また出題内容も偏っているので、対策が立てやすい学校とも言えるでしょう。
1次の合格ラインは公表されていませんが、合計点で7割を想定しておけば大丈夫です。
ここからは2018年の算数の出題を通して、慶應SFCの算数で合格ラインを越えるための方法を考えてみましょう。
○:慶應SFC合格のためには確実に正解したい問題
△:合否を分ける問題
×:正解できなくても差はつかない問題
大問1
(1) ○
基本的な計算問題です。
慶應SFCへの合格のためには落せません。
(2) ○
円の面積の公式の確認です。
慶應SFCからのサービス問題でしょうか。
(3) ○
相当算の基本中の基本です。
受験生として(1)~(3)での失点は許されません。
大問2
(1) ○
Aの所持金を①として処理します。
Cは(③+100)×2-500=⑥-300と、多少は計算が厄介ですが確実に正解したい問題です。
(2) ○
植木算の基本的な問題です。
15本なのでのりしろは14箇所になることに気を付けましょう。
ここまでは全問、確実に正解しておきたいところです。
(3) △
代金は2の倍数であり、45の倍数なので90の倍数と分かります。
□6020が90の倍数となるためには、各位の和が9の倍数になることを利用しましょう。
なお算数科講師としては、2つの□は異なる数字が入るならば△と□など別の記号で出題したほうが受験生も混乱することなく適切かと思いました。
大問3
(1) △
まずは数字のみに注目して、1組が(1)、2組が(1,2)、3組が(1,2,3)、4組が(1,2,3,4)、5組が(1,2,3,4,5)・・・と考えましょう。
5が出てくるのは5組目以降の5番目と分かりますが、5組では白になることに気を付けましょう。
この段階では書き出して調べてみることも有効です。
(2) △
白のカードは奇数枚目なので、白の30番目は30番目の奇数だと言い換えることが出来ます。
30番目の奇数は59枚目のカードなので、1+2+3+・・・と調べていくと、10組までで55枚なので、11組の4枚目だと分かります。
(3) ×
白い2のカードは2組の2番、3組の2番、6組の2番、7組の2番などに表れます。
2が白になるためには、同じ組の1は黒になる必要があり、各組の1番目を調べると、
(1234)(5678)(9・・・
(白黒黒白)(白黒黒白)(白・・・
と4つごとに規則になっていることが分かります。
ここから19組の2番目と考えることが出来ますが、様々な規則が組み合わされた難問なので、いったん後回しにすることも有効でしょう。
大問4
(1) △
問題の条件はもちろん、60度の利用や半径の利用などの知識を組み合わせていくと、OCDEPQが正六角形だと分かります。
ただ慶應SFCは答えのみを記入する形式なので、見た目で4cmと書いてしまっても点数にはなりますね。
(2) △
(1)の条件からBPとAFの平行を利用しましょう。
ただこちらも見た目で正答を導くことが出来てしまいます。
(3) ×
全ての角が120度の六角形は、下の図のように延長して大きな正三角形を作ることがポイントです。
与えられている条件が多いので、シンプルに考えるために必要な部分だけ取り出しましょう。
六角形ABCDEFは14×14=196から2×2=4と、4×4=16と、6×6=36を除いた面積と分かり、また△OCDは1辺が4の正三角形と分かります。
大問5
(1) ○
中学受験の算数において、しきりが移動するという状況設定は珍しいですが、SFCでは散見される形式です。
水面8cmのうち底面の上昇分が6cmなので、水の体積は2cmぶんと分かります。
(2) ○
水面の上昇に注目しましょう。
底面が2cmずつ、水の体積が2/3cmずつ上昇することに気づけば、易しい問題です。
(3) △
はじめは2+2/3cmずつ、途中からは2/3+4/3cmずつ上昇することが分かります。
あとはつるかめ算として処理しましょう。
慶應SFCの後半の問題としては、かなり易しめです。
大問6
(1) ○
慶應SFCで頻出の流水算です。
例年の難度ならダイヤグラムで整理してから相似を利用して考えます。
ただ今年度の出題ならダイヤグラムを描かなくても良さそうです。
(1)ではPQ間の長さの設定がポイントです。
Aの下りが90分、上りが180分ですが、(2)の72分も見越して距離を最小公倍数の360と設定すると良いでしょう。
(2) ○
(1)の続きです。
Aの速さは下りが4、上りが2なので静水時が3、流速が1。
Bの速さは下りが5なので、静水時は4と分かります。
流水算の典型題なので確実に正解しておきたい内容です。
(3) △
まずは船Bに注目しましょう。
7:12に地点Qに着き、そこから360÷3=120分後の9:12に地点Pに着きます。
そこからまた地点Qに向かい、10:06には地点Qから90の地点で船Aに出会ったことが分かります。
一方の船Aは故障までは2ずつ進み、故障後は1ずつ戻り、結局156分で90進むという、弁償算に持ち込むことが出来ました。
慶應SFCの最後の問題としては易しめです。
このように見ていくと、今年の出題の内訳は、○が9問、△が7問、×が2問となりました。
合格ラインは○で8/9、△で5/7、×で0/2の13/18(=約72%)が想定されます。
大問3・4で時間を使いすぎず、例年より易しい大問5・6でしっかり正解できた生徒が合格を勝ち取ったと言えそうです。
ただ大問3は書き出し、大問4は勘でも答えを出すことが出来るので、テストでの思い切りの良い生徒にもチャンスはあったのかもしれません。
なお例年と比べて出題は易しめなので、来年以降は難度が上がることが想定される慶應SFCに合格を目指す皆さんは75点以上を目指したいところです。
ところで難度が上がると言いましたが、2019年の受験以降は、慶應義塾横浜初等部の卒業生が入学してくるので、募集枠が削減される予定です。
当然ながら難度が上がるので、もしかすると7割では合格ラインに届かない可能性もありそうです。
また帰国生でなくても、算数・国語・英語の3科目で受験が出来るようになるなど、入試自体の改革も進みます。
現状では2019年の入試に関して読めない部分も多いですが、周囲の状況に影響されない確固たる学力の構築を目指しましょう。