想定合格点55点
昭和後期に駒場東邦、海城とともに新御三家として台頭し、現在は全国屈指の医学部進学実績で知られる巣鴨中学校、巣鴨高等学校。
「硬教育」を掲げ、厳しくも暖かい指導で知られ「確実に学力を伸ばしてくれる学校」として人気を集めています。
大菩薩峠越え強歩大会や巣園流水泳学校、早朝寒稽古など心身の鍛錬の機会も多く、この経験は社会人となってからもきっと役立つことでしょう。
中学受験においては長らく2/1と2/2の2回の入学試験において入学者を選抜してきました。
一時期は「巣鴨は厳しい」というイメージで敬遠され入学難度も下がっていましたが、現在は2/1、2/2、2/4の3回と2/1午後の算数選別の計4回の受験機会を設け、再び人気を高めています。
さて、ここからは2022年の巣鴨中の第Ⅰ期の算数の入試問題を通して、どのように取り組めば合格を勝ち取ることが出来るのかを考えていきましょう。
今回使用する指標
〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつくので、可能な限り正解したい
×:正解できる生徒は少数、後回しにする判断も効果的
として小問ごとに見ていきます。
解答例はこちら
大問1
(1) △
4つの不定方程式です。
まずは式全体を10で割り、そこからどこに注目するかを考えましょう。
今回はA,B,Cいずれも6の倍数になるので、条件に合わせるためにはDは必ず2個になることが分かります。
あとは丁寧に作業していきましょう。
大問1の(1)としては難度は高めです。
(2) △
解答例では1桁、2桁、3桁、4桁それぞれ何通りになるのか、丁寧に場合分けをして求めました。
なお1999までを2×8×8×8-1として求めても良いでしょう。
それでも2000以上の数は丁寧な場合分けが必要でなので、こちらも大問1としては難しめです。
(3) △
条件がやや多く、注目すべき箇所の判断に迷う損益算です。
(1個あたりの利益の比)×(個数の比)=(全体の利益の比)
という形で整理し「仕入れ値の差=1個あたりの利益の差」ということを利用して解きましょう。
こちらも小問集合としては難しめです。
(4) △
過不足算として解いても良いですが、6人グループの数を□とおいたマルイチ算(方程式)として処理したほうが早く正確でしょう。
簡単な問題ではないですが、今年度の小問集合の中では正解したい問題です。
(5) △
多くの受験生が苦手とする「開票途中の投票算」です。
今回はBの当選が確定しているので「残り2人が当選⇒3人で争う」と考え、まずはD,E,Fの3人の得票数を揃えましょう。
そこから「ギリギリで落ちる」場合を考え、それを上回る票数で当選が確定します。
所属している塾のクラスによっては、そもそもこのタイプの問題を扱っていないことも多いので、解法を知らなければ正解できなくても仕方ないでしょう。
(6) △
三角形の内角の和や外角に注目し、消去算として立式・処理しましょう。
発想自体はよくある問題ですが、意外と式を立てにくい問題です。
このように大問1の小問集合は、いずれも骨のある問題が並びました。
巣鴨中の2022年第Ⅰ期の受験生は面食らったかもしれません。
大問2
(1) △
「小数第何位まで」という初見ではなかなか対応の難しい内容がテーマです。
「10で割ると小数点の位置が1つ左にずれる」ことは分かりやすいものの、「2で割ると小数点以下の位が1つだけ増える」ことや「5で割ると小数点以下の位が1つだけ増える」ことは、簡単な数字で実際に計算して確認できると良いでしょう。
(1)は(2×5)が2組出来ることで10が更に2つできて、結局2で2回と10で3回割った状況だと分かります。
(2) △
(1)と同じように考えると、2で13回と10で12回割った状況だと分かります。
(1)が出来ているなら確実に正解しておきたい問題です。
(3) ×
10で12回割ることで小数点が12回ぶん左に移ることが分かります。
あとは2の13乗の8192で1を割った数を考えれば、答えの数値を求めることが出来るでしょう。
発想も含めて難度が高く、正解できなくても仕方ないでしょう。
大問3
(1) 〇
四角錐の体積を求めるだけの題意の確認問題です。
今年度、ここで初めて誰でも解けるようなサービス問題が配置されました。
受験生も安心できたことでしょう。
(2) △
「四角錐をくり抜く」という難しそうなテーマですが、要するに「底面が4×4の断頭四角柱」の体積を求めるという問題です。
横から見た図で、高さの平均を求めましょう。
巣鴨中を志望する受験生なら立体図形の学習は充分に重ねてきたことでしょう。
合格のためには勝負したい問題です。
(3) △
(2)の状況から更に「断頭円柱=斜めに切った円柱」をくり抜きます。
同じように横から見た図で状況を捉え、高さの平均を考えましょう。
この大問3で完答できると、合格の可能性を高められそうですね。
大問4
(1) 〇
旅人算と比の典型問題です。
問われているのは太郎と次郎だけなので、2人に注目して線分図で整理すると、同じ距離にかかる時間の比を見つけることができ、逆比で速さの比が求まります。
1つの図に情報を盛り込みすぎて、かえって混乱しないよう、気を付けましょう。
(2) 〇
太郎の速さを④m/分、次郎の速さを③m/分としてP地点からQ地点までの距離を設定し、旅人算として処理しましょう。
三郎の速さが分数になってしまいますが、落ち着いて計算して正解したいところです。
(3) △
線分図で整理しても良いですが、解答例では「シャドー」の考え方を利用しました。
次郎と三郎の真ん中の点を考え、その点が太郎と出会う時を考えれば正解に辿り着くことが可能です。
巣鴨中の最後の問題としては易しめです。
2022年度の巣鴨中 第Ⅰ期の算数の出題は、上記のような出題となりました。
大問1の小問集合と大問2が難しく大問3と大問4が易しいという、ややいびつな構成だったこともあり、前半で時間を使いすぎたり、戦意を喪失してしまったりした受験生には厳しい試験となったことでしょう。
一方で前半の高難度に焦らずに解けない問題を後回しにして、易しい大問から確実に得点できた受験生にとっては、合格点を越えることは決して難しくなかったのではないでしょうか。
なお巣鴨中の過去問を用いて対策を進める際は、試験の形式の変化に気を付けましょう。
2018年以前は大問5問の構成で、かなりの高難度の問題が並ぶ構成で知られていました。
2019年以降は大問1が小問集合で大問数は全4問に変わり、難度は若干緩和されています。
形式は変わったものの、巣鴨中の算数は男子難関校らしい頻出分野は変わりません。
2023年以降に合格を目指す受験生の皆様は、平面図形や立体図形に関しては難問まで対応できるような学力の獲得を目指しましょう。
また数の性質や速さと比では処理量の多い問題が課されるので、丁寧な作業力の獲得が必須です。
古い形式の過去問はセットとしては使いにくいものの、個々の問題は充分に巣鴨対策として効果的です。
講師と相談し、必要な問題を選んで学習できると良いでしょう。
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