この記事を書いたのは...
松田 浩志
自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。
大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。
現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。
個別指導・家庭教師の自律学習サカセル
サカセルコラム
世田谷学園中の国語分析(2021年 第1回) Column
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世田谷の古き名門中。世田谷学園。
礼節を重んじるこの学校は共学人気の昨今においても高い人気を誇っています。
そんな世田谷学園の2021年度入試の問題を今回は見ていきましょう。
◆出題形式
試験時間50分 100点満点
◆大問1題構成
◆問題の種類
・記述 30%
・選択肢 30%
・抜き出し 20%
・漢字・語彙 20%
数年前は大問3題構成でしたが、ここ3年間で大問1題構成に変化しました。
多くの問題は下線部の前後の内容を読み取れていれば解けてしまします。
一方で、前後には解答根拠がない問題も多少入っており、国語が得意な生徒はここで差をつけたいですね。記述問題もしっかり入っており、記述の基本的な動きができていれば容易に解くことができる難易度です。しっかりと準備を行えば、算数ができなくても国語でなんとか勝負に持ち込むことは可能です。
今回使用する指標
〇:合格には確実に取れてほしい問題
△:合格の勝負所・差がつく問題
×:落としても合否には大きく影響しない問題
として小問ごとに見ていきます。
解答例はこちら
漢字です。
トメハネハライに気をつけて、丁寧に書きましょう。
単語の空欄補充問題です。
前後をしっかり読み、目的語や主語に注目しましょう。
Ⅰ「深夜ラジオ・安心して」から「寝る」
Ⅱ「友達を」から「作る」
Ⅲ「英語を」から「習う」
Ⅳ「みんなと」から「遊ぶ」
Ⅴ「心は」から「叫ぶ」
単語の空欄補充問題です。
前後をしっかり読み、被修飾語に注目しましょう。
判断がつかない場合は後回しにしていきましょう。
a「心を閉ざす」から「どんどん」のエ。
b「しんどくて・やめたい・ただ・通って」から「だらだらと」のイ。
d「荷物を・持ちました」から「さっと」のオ。
e「思い出せます」から「はっきり」のア。
c「全部・感じた」から「ずとんと・はっきり」に絞れます。
eで「はっきり」が使用されているので「ずとんと」のウ。
語彙の問題です。
意味を知らない場合は文脈と漢字から類推しましょう。
理由の問題です。
下線部の理由を前後から探してから、選択肢を見て解きましょう。
下線部の直後に
「それだけが人生を進むための羅針盤なのです。」
とありますね。
「それ」が指す内容が「子供時代の感覚」であり、「羅針盤」が「行き先を示すもの」であると分かれば、エが選べたのではないでしょうか。
説明の問題です。
下線部の説明になっているものを選びましょう。
「私と同じく姉っ子だった母」から、筆者と同じように母も姉を頼っていたことが分かります。
そして、(笑)から面白みを筆者が感じていることが分かりますね。
するとオが正解だと分かりますね。
書き抜きの問題です。
しっかりと聞かれている内容を把握して、何を探すのかをはっきりさせます。
まず、「その事実」が直前の
「私が淋しいのに姉は楽しくなっていっている」
を指していることを押さえましょう。そしてこの事実を受け入れるようになるために筆者が「どのような時間」を乗り越えたのかを探すわけですね。
筆者が乗り越えた時間は「辛い時間」であったという解答のイメージが作れるのではないでしょうか。
次に、捜索範囲を大きく決めていきましょう。
下線部①の4行後の
「今思うと〜」
から下線部④の4行前の
「〜精一杯だったのかもしれません。」
までが姉の話題ですね。ここを中心に探していきます。
そして、「辛い時間」で「例え」が入っている部分を探していきますと、下線部Cの1行前
「みじめで〜砂を噛むみたいな毎日」
という部分が見つかりますね。
理由の問題です。
下線部の理由を本文から考えて解きましょう。
やめたいと言えなかった理由を探しにいきます。
前後を読んでいくと、下線部④の5行前に
「全てに関して受け身の状態に〜精一杯だったのかもしれません。」
と私のこの当時の状態が書かれています。ここが読み取れれば、ウが選べたのではないでしょうか。
理由の条件記述です。
下線部の理由を本文から考えていきましょう。
1個目の空欄は
「……と考えている母の親友」
とありますので
「母の親友が何を考えているのか」
を本文から見つけます。すると下線部⑤の直後に
「母の親友にしてみたら、英語を勉強して欲しくていろいろ準備しているのに」
とありますので、ここが正解になります。あとは上手く繋がるように書き換えましょう。
2個目の空欄は「私」がどうだったのかを考えていきます。
下線部⑤の直後あたりに「母の親友」の話が書いてあるので、もう少し先を探しにいきます。
すると、下線部Dの2行前に
「私が母の親友に甘えていた分、理解してもらえないことが辛かったんだと思います。そういう勝手な状態になるのがまさに思春期です。」
とあります。
これが「辛かった」理由ですね。
理由の問題です。
設問の理由を本文から考えましょう。
下線部⑥の直前を読むと理由が書いてありますね。
「まだ父にお礼を言うほどには大人になっていなかったのです……」
とありますので、正解はオと選べますね。
理由の問題です。
本文にはっきりと理由が書かれていなかったので少し難しかったかもしれません。本文から理由を推測できる要素をしっかりと拾い、考えましょう。
まず「そう言葉に」の指示内容をはっきりさせます。
直前の
「私はもう父や母とここにおそばを食べに来ることは永遠にないんだ。」
が「そう」の内容ですね。
上記の内容を言葉にすることで、筆者が「永遠にない」という事実を実感してしまうことで悲しみが増すわけですね。
それが分かれば、アが選べるのではないでしょうか。
※
イは「悲しみ乗り越えていくための力強さを身につけているから」が間違い。
ウは「事実から目をそらそうと思った」が間違い。
エは「子供の頃の素直な心で……」が間違い。
全て因果関係が成立していないですね。下線部⑦の直後の「考えないようにしました。」の理由を選んではいけません。あくまで下線部⑦の理由を選んでください。オは「無制限」が言い過ぎ表現です。
対比の記述になります。
① まずはしっかりと設問を読み、聞かれていることをはっきりさせ、何をするかの方針をはっきりさせます。
② 対比の要素となる内容を探します。
③ 見つけた要素を繋ぎ合わせていきましょう。
①
以前の私と現在の私をそれぞれ本文からか考え、書いていきましょう。
まず、筆者の大きな変化が下線部ケの4行前の「……悟ったのです。」にあります。
ここの前の部分が「以前の私」これから後ろの部分が「変化後の私」ですね。
②
「以前の私」
下線部ケの7行前に
「自分のことでいっぱいで感謝にまでは至ることができない、というのも幼い日々の特徴ですね。」
とあり、ここが正解になります。
A〈自分のことで一杯一杯で他人への感謝までできない〉
「変化後の私」
筆者の大きな変化後の文を追っていきます。
変化直後は具体的な内容が続いていますが、少し後にそれらをまとめた部分が登場しますね。
下線部⑥の4行後に
「ほんとうの意味で他者を思いやった瞬間」
「恥ずかしいとかかっこわるいとか面倒くさいとかいう気持ちを脇に置いて行動」
「自分の置かれている恵まれた環境を客観的に見ることができたとき」
とあり、「以前の私」との対比するように書かれていますね。
B〈他者を思いやる〉
C〈自分の気持ちは脇に置いて行動〉
D〈自分の恵まれた環境を客観的に見ることができた〉
③
AからDの以上の要素をまとめていきましょう。
説明の記述です。
① まずはしっかりと設問を読み、聞かれていることをはっきりさせ、何をするかの方針をはっきりさせます。
② 記述の要素となる内容を探します。
③ 見つけた要素を繋ぎ合わせていきましょう。
①
「理想的な大人」とはどういうものかを考えます。
言い換えもしくは説明が書いてある部分を探しましょう。
②
下線部Bの直後から具体的な内容が書いてあります。
よって、その具体的な内容が終わる部分を考えていきます。すると、抽象的な一文が最後の一文
「子供のようなエネルギーの広がりを持って〜そんなふうにいつも願っています。」
であると分かりますね。ここが記述の骨子になります。
〈子供のようなエネルギーの広がりを持って、大人の自由な決断をすることができる人〉
次に、〈子供のようなエネルギー〉〈大人の自由な決断〉が具体的にどのようなものであるかを考えます。
〈子供のようなエネルギー〉は下線部Bの4行後に
「子供だけが持っていたエネルギーや空間の広がり」
とあり、「空間の広がり」は下線部Bの7行後に「頭の中の空間の広がり」とあるのでここを使います。
A〈子供だけが持っていたエネルギーや頭の中の空間の広がり〉
※下線部直前の「自分の中にいる……」を使ってしまった方はここが比喩の表現であることに注目をしましょう。比喩表現は原則、記述の中では避けてください。
次に、〈大人の自由な決断〉を具体的に説明していきます。
大人になると
「責任を持たないといけない」
とここでは何度も説明されていることに気が付きましたか?(下線部Bの2行後、3行後、10行後)
よって大人とは
B〈責任を持ちながら自由に決断を行うことができる人〉
であると分かりますね。
③
最後に繋げていきましょう。
抜き出し・空欄補充問題ですね。
キーワードを捉え、範囲を大きく決め、細かく探していきましょう。
まず、キーワードとしましては、
「理想的な大人になるため・を持っていなければ」
です。これを1段落から探します。
次に範囲を決めていきます。
下線部①の4行後から過去の回想が始まるので、その前部分から探していきます。
すると、下線部①にあるように
「大人になってから、あらゆる場面で最も必要とされるのが子供時代の感覚」
なわけですね。しかし、「子供時代の感覚」は11字ではありません。それと同じ内容がないか探していきます。すると直後に「人生を進めための羅針盤」とありますね。これが正解になります。
説明の問題です。
波線の説明・言い換えになっているものを選びます。
波線では、子供時代に獲得したものは大人になって初めて価値が出ると書いてあります。
そして、それを裏付けるようにその後に、筆者の主観で生きていた子供時代と客観の視点が生まれた瞬間の話が書かれているわけですね。
つまり、主観で生きている子供は子供時代に獲得したものを生かせず、客観の視点が持てるようになって初めて生かせるわけですね。
それを捉えられればウが選べるのではないでしょうか。
※
アは体験したことの価値に触れていないのと、「大人にしか分からない」が言い過ぎ表現。
オは「当たり前に存在」が言い過ぎ表現。
本文の内容に関しての問題です。
間違っているものを消していく消去法が比較的楽でしょう。
アは「愛情を一杯に注がれて」が間違い。
ウは「買い食い」が間違い。
エは「友達と話しているうちに……」が間違い。
オは「どんな困難でも……」が言い過ぎ表現。
簡易的な作文です。
条件に沿って書いていきましょう。
また、本文には他人を気遣えるようになったこと、客観的な視点を持つことができたこと、が大人とあるのでそれは盛り込んで書いてください。
「今までは〜だが」
とあるので、子供的な考えの自分をまずは書きましょう。
次に、それが変わった様子を書きましょう。
最後に「理由」を書きましょう。
誤字脱字、主語述語目的語に気をつけながら丁寧に書きましょう。
文章は随筆文で読みやすく、一方で具体や抽象の見分けが必要な説明文的な要素も入っており、非常に良い文章でした。また、テーマが主観と客観の「大人とは?」というテーマであり、受験生へのメッセージ生もあるものでした。
問題もバランスよく出題されており、差がつく良い問題でした。
特に、1段落→2段落→3段落→1段落というように文章を追う構成にしてあり、受験生にしっかりと内容を把握させるように作られていることも問題作成者の工夫を感じます。
全体を通して良い問題だったと言えます。
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現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。