全体的には流行がありつつも、各校、この問題好きだよね!と感じる「らしい出題」が多かった印象の2023入試でした。
もちろんてこや電流、水溶液、花、天体などド定番の単元も多く出題されましたが、今年例年より多い!と感じた単元や増えてきた!と感じるテーマに触れていきたいと思います。
目次
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よく出題された単元
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定番化してきたテーマ
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時事的な問題
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これから注目の問題
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対策
1よく出題された単元 ふりこ(物体の運動)、気体、食物連鎖(生態系)
・ふりこ(開成中、駒場東邦中、雙葉中、聖光中、慶應中等部他)
ふりこは「理解の深さ」や「表やグラフの読み取り」を確認するのによい単元です。
理解が浅い生徒をことごとくはじくような問題が作りやすいのです。表面上の解き方は覚えているけれども意味はよく分かっていない受験生ではなく、理解の深い受験生を取りたいと中学校の先生方が考えるのは至極当たり前と思われます。
また「長さが4倍9倍…になると周期は2倍3倍…になる」という規則ですので、規則を見つける分析力、平方数倍を使った規則が使いこなせる処理力・注意力も確認できる、使い勝手の良い単元です。
・気体(桜蔭中、雙葉中、浅野中、栄光中、芝中、明大明治中、青山学院中、東洋英和中他)
気体の発生は化学反応の知識と理解、計算の処理力をバランスよく確認できる問題です。発生量が水溶液と固体のどちらで決まるのか?反応のしくみにつて理解ができていることは中学以降の化学のベースになりますので今後も重要視されることと思います。毎年一つのテーマで作問する栄光学園中が今年このテーマでした。面白いです。
雙葉中では触媒や温度といった条件を色々と変えて反応速度を考える問題が登場しました。
・地層(開成中、駒場東邦中、豊島岡中、芝中他)
知識を確認するとともに、図を読み取る力や立体的に考える力が求められる単元です。特にボーリング調査を用いて地下の様子を考えさせる問題は男子校を中心に難化が進んでいます。
・食物連鎖・生態系(女子学院中、雙葉中、頌栄女子学院中、早稲田実業中、広尾学園中、明大明治中、海城中、芝中、暁星中他)
生態系を考えるテーマは女子校や附属校を中心によく出ています。SDGs/環境問題にもつなげやすいため、これからも重要度が上がってくる単元といえるでしょう。このテーマでは「どうすればよいと思いますか。あなたの考えを書きなさい」といった形の記述が多いのが特徴です。学校の求める生徒像によって、採点・加点のポイントは異なりそうです。
生物濃縮(有害物質は水に溶けにくく脂肪と結びつきやすいため生物の体に蓄積し、食物連鎖によってさらに濃縮される)は計算問題も作りやすいため、これからも多く出題されそうです。
2定番化してきたテーマ 流水のはたらき、光の速さ、生物実験
・流水のはたらき(海城中、芝中、洗足学園中他)
もちろんもともとの定番単元なのですが、流速と粒子の大きさのグラフが登場して以降、グラフを読み取る中でも難度高めの問題が作りやすくなり、中堅以上の学校で定番化しています。近年、豪雨による災害も多いため、ハザードマップや古地図と対応させて考えさせる問題なども多くなってきています。
海城中では小惑星リュウグウの砂(レゴリス)がどのようにして出来たかを考えさせる問題が登場しました。
このように分野をまたいだ問題も作成しやすいため、注目度が高い単元です。
・光の速さ(農大一中、立教池袋中他)
光の速さを計算で求める問題は、以前は難問レベルとして扱われていましたが、標準レベルとして扱われるようになってきた感があります。中学受験の問題の難度は上がっていますが、その一端が見て取れます。
・生物実験
生物の実験問題自体はもともと定番ですが、その中にほとんどの受験生が解いたことのある内容の実験(発芽の実験や光合成の実験など)と、初めて見るような内容の実験があります。最難関校は後者の問題が多く、易しめの出題をする学校では前者が多いですが、注目はその間の学校群(サピックスで偏差値45~55、四谷で50~60くらい)です。中学受験のボリュームゾーンともいえる学校群ではその中間レベルの問題、テキストに必ず載っているわけではないけれども、理科講師にとっては見慣れた生物実験(受験生にとっては「一回見たことある!」レベル)が出題されることが多いです。
ミツバチダンス(吉祥女子中)は定番化して久しいですが、他にもホシムクドリ(渡り鳥)(洗足学園中)なわばりアユ(広尾学園中、品川女子学院中)アズキゾウムシ(慶應湘南藤沢中)などは、よく見かける問題です。
また、メンデルの遺伝の法則(明大明治中)や、尿の再吸収の計算も定番化しています。
これらはサピックスでは6年後半テキストの表紙裏・ポイントチェック・デイリーステップでまとめられています。早稲アカではマスターテキストに載っています。
3時事的な問題 月食・惑星 暑さ指数
・月食・惑星(女子学院中、頌栄女子学院中、桐朋中、本郷中、暁星中他)
昨年11月に皆既月食と天王星食がありました。これをそのまま出題した学校もありましたが、関連させて惑星を出題した学校も多くありました。惑星の見え方は扱う時期が遅めの塾が多いですが、図からしっかり考えられるようにしておく必要があります。
・暑さ指数(青山学院他)
熱中症警戒アラートや暑さ指数など用語を答えさせる学校もありますが、暑さ指数は公式がありますので、読解力やデータの読み取り力を確かめる問題としてこれからも登場するかもしれません。
時事的な問題は何かニュースがあったときにはそのニュースそのものだけでなくそれに関連したものがよく出題されます。
4これから注目の問題
中学・高校化学からどこを持ってくるか?
本来高校生で習う化学の問題はこれまでもたくさん登場してきました。
ペーパークロマトグラフィー、水の分子モデル、メタンやエタンの構造式、硫酸銅五水和物の溶解度、結晶格子、状態図(温度-圧力のグラフ)…化学の内容はリード文で説明しやすいため、読解力と理解力があれば小学生でも解ける形にすることができます。逆に、その力のある受験生を獲得するために学校側はこのような問題を出すともいえます。
だいぶ出尽くした感がありますが、今年登場していたもので、今まであまり見かけなかったものとしては
・気体の溶解度(淑徳与野中)
温度や気圧を変えて気体の溶解度を考える問題(ヘンリーの法則)です。気体の溶解度は圧力に比例する…というもの。しかし気体は圧力と体積が反比例するため、圧力を大きくして溶けた気体の重さ(粒の数)が2倍になっても(圧力が大きくなったことにより)その体積が小さくなり、溶けた気体の体積は変わらない…というややこしいことが起こります。これはさすがに難しいですが、完全に理解しなくても解ける問題もありましので、拾えればOKだったでしょう。丁寧なリード文があれば成立する問題ですので、他の中学でも今後登場する可能性はあります。固体の溶解度は定番ですので、気体も考えるのは自然かもしれません。
・水層と油層の溶解度の違い(洗足学園中)
水と油が2層に分かれているところに食塩などの物質を溶かし、それぞれに溶ける量を計算する問題でした。高校化学の有機化学…溶媒抽出の実験ですが、知識がなくてもデータが与えられればどんな計算をすればよいかはわかりやすく、ぱっと見の印象より簡単な問題でした。
中学・高校の生物から何を持ってくるか?
今年見かけたものとしては
・進化(白百合学園中)
チラチラ出てきています。進化とはどういうことなのか、ある程度親しみのある単語でありながら間違ったイメージを持っている受験生は多いので、今後狙い目になる可能性もあります。
・根粒菌(渋谷学園幕張中、浅野中)
マメ科の植物の根にいる根粒菌は空気中の窒素から窒素化合物(植物の肥料)を作ります。窒素の循環についてはこれまであまり中学受験では扱われてきませんでしたが、生態系を考えることが最近重要なテーマになっているので、これから増えてくるかもしれません。
窒素から窒素化合物が作られる反応に注目した問題、マメ科の植物と他の動植物との関係、窒素化合物の移動に注目した問題などが考えられます。
5対策
今年の傾向、来年以降も続くかもしれない傾向について述べてきました。それでは今後どのような勉強をすればよいのか?
基本的には普通にテキストを進めればよいです。新しい傾向に対応できるようになるためには「科学的な考え方」を身に着けることが重要です。細かい内容は変わっても、理科での頭の使い方は変わりません。夏までは反応のしくみや実験の結果の考え方をしっかり身に着けましょう。
時事問題に関してはその年の時事ニュース集(重大ニュースなど)で勉強すればよいでしょう。
今後流行るかもしれない問題は?→テスト、模試です!四谷の合不合やサピックスオープンなどはその年のトレンドを踏まえて作問されます。模試の直しはとにかく丁寧に行いましょう!
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