【はじめに】
今回は、目黒駅から徒歩わずか5分という利便性の高い立地にある、目黒日本大学中学校の塾向け説明会に参加してまいりました。2019年に日の出学園から日本大学の付属校として生まれ変わって7年目。この6年間で学校がどのように進化し、生徒たちがどのような学びを経験しているのか、先生方の熱い想いとともに、詳しくお伝えします。
今回の説明会では、中高一貫1期生が卒業した今だからこそ語れるリアルな合格実績や、探究活動、そして「未来の目黒日大プロジェクト」といった、これからの学校の姿について、非常に具体的なお話を伺うことができました。それでは、早速レポートをお届けします。
【学校生活について】
目黒日大の教育の根幹にあるのは、建学の精神「質実剛健・優美高雅」と、「しなやかな強さを持った自律できる人間を育てる」という教育理念です。この理念は、変化の激しい現代社会において、どんな状況でも柔軟に対応し、自らの足でしっかりと立てる人間を育成するという、学校の強い決意を表しています。
徹底した探究活動とプレゼンの機会
特に力を入れているのが、探究活動と、それに連動したフィールドワーク(FW)です。学年ごとにテーマが設定されており、段階的に思考力や課題解決能力を養っていきます。
1.中学1年:日本の伝統文化
京都・奈良へのFWを通じて、日本の文化に深く触れます。単なる見学旅行ではなく、事前に立てた仮説を現地で検証し、学びを深めていくのが特徴です。
2.中学2年:環境問題
屋久島などを訪れ、豊かな自然と、それが抱える環境問題について学びます。
3.中学3年:SDGs
オーストラリアへの短期留学がプログラムに組み込まれています。なぜオーストラリアなのか?それは高校入試に影響のない2月~3月に出発するため、気候が温暖で過ごしやすいという配慮からです。ここでは、日本で探究したSDGsに関するテーマを、英語で現地校の生徒に向けてプレゼンテーションします。
これらの探究活動の集大成として、発表コンクールが開催されます。これは単なる発表会ではなく、段階を踏んだ本格的なコンクールです。まず、各クラス内で予選が行われ、そこを勝ち抜いた代表者たちがポスターセッション形式で発表を行います。そして、そこで高く評価された生徒たちが、最終的に体育館のステージに立ち、全校生徒の前でプレゼンテーションを行う「本選」へと進出します。この一連のプロセスを通じて、生徒たちはプレゼンテーション能力や論理的思考力を磨いていきます。
評価の可視化「学校ルーブリック」
生徒の成長を測るものさしとして「学校ルーブリック」という独自の評価システムを導入しています。これは、学力だけでなく、「価値観・姿勢」と「能力・スキル」の2つの軸で生徒の人間的な成長を数値化・可視化しようという試みです。行事や探究活動のたびに自己評価と他者評価を行い、自分の成長を客観的に振り返ることができます。この取り組みからは、生徒一人ひとりの「人間力」を大切に育てたいという先生方の強い意志を感じました。
生徒が主役の「三者面談プレゼン」
驚いたのが「三者面談プレゼン」です。通常、三者面談といえば先生と保護者がメインで話すイメージですが、目黒日大では生徒が主役です。1年間の振り返りと次年度の目標を、生徒自らがスライドを使って保護者と担任の先生にプレゼンテーションするそうです。
中学1年生のころは戸惑う生徒も多いそうですが、学年が上がるにつれて堂々と発表できるようになります。高校1年生になると、総合型選抜や学校推薦型選抜といった具体的な受験区分まで見据えたプレゼンを行うとのことで、その成長ぶりは計り知れません。
グローバル教育も本格的
国際交流も非常に活発です。高校では、オーストラリアへの留学期間を3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月から選択できます。また、ケンブリッジ大学のサマープログラムに参加するチャンスもあり、将来的には交換留学制度の導入も視野に入れているとのことでした。
校内には4名のネイティブ教員が常駐しており、朝の時間を使ったアクティビティや、週1回の「イングリッシュ・オンリー」のホームルームなど、自然に英語に触れる機会が豊富です。英語教育を特別なものではなく「当たり前のシステム」として構築していくという方針が明確で、生徒たちが楽しそうに積極的に取り組んでいる映像も印象的でした。
【施設について】
校舎は、最新のICT環境が整っているのが印象的でした。コロナ禍をきっかけに全教室にWi-Fiと電子黒板が完備され、生徒たちはiPadを駆使して授業を受けています。先生方も当初は操作に戸惑いがあったそうですが、今では見事に使いこなしているとのことです。変化に柔軟に対応する姿勢が素晴らしいと感じました。
生徒の学校生活を豊かにする施設
校内には温水プールが完備されており、季節を問わず年間を通じて水泳の授業や部活動に取り組める環境が整っています。
また、売店としてヤマザキショップが入っており、パンやお弁当、飲み物はもちろん、制服や体操着、文房具まで購入できるのは非常に便利です。お昼ご飯は、この売店での購入のほかに、お弁当の発注も可能です。このお弁当はリーズナブルな価格ながらボリュームもしっかりあるそうで、育ち盛りの生徒たちにとって、とても嬉しい存在だと感じました。
ただ、理科教育の強化については課題もあるようです。理科の実験室が1つしかないことや、専門教員の確保など、理系教育にさらに力を入れていくための試行錯誤が続いているという、正直なお話も伺うことができました。
そして、大学受験を見据えた環境もしっかり整っています。図書館には各大学の赤本がずらりと並び、静かに集中できる自習室も完備されています。また、放課後は学校が**「学習支援センター」**という仕組みを導入し、専門の講師に質問できる環境が整えられています。このような面倒見の良さも目黒日大中の魅力の1つです。
【入試について】
2025年度入試について、大きな変更点はないとのことでした。各入試形式の特徴をまとめてみました。
●合格目標:どの入試形式でも、まずは6割の得点を目指してほしいとのことです。
●出題傾向:問題の難易度や形式は、昨年度と大きく変わらない見込みです。過去問対策が有効と言えます。
| 入試日 | 入試形式 | 特徴 |
| 2/1 (午前) | 2科/4科 | オーソドックスな教科型の入試です。英検取得者には加点制度があります。 |
| 2/1 (午後) | 算理(さんり)入試 | 算数と理科の融合問題。単なる計算力だけでなく、理科的な事象の読解力や思考力が問われます。 |
| 2/2 (午前) | 適性検査型入試 | 都立小石川中等教育学校などを意識した問題。長い文章や資料を読み解き、自分の考えを記述する力が求められます。 |
| 2/2 (午後) | 2科/4科 | |
| 2/4 (午前) | 2科/4科 | |
| 帰国子女優遇 | 上記2科/4科型の試験を受けることができ、帰国生の条件を満たす受験生には加点措置があります。 |
特に注目したいのが「算理入試」と「適性検査型入試」です。
算理入試は、理科の知識が必須ではない点に注意が必要です。あくまで算数1科目の延長線上にある入試であり、問題文や資料を読み解く力と算数の思考力で解けるように作られています。「理科の学習が終わっていないから受けられない」というわけではないので、算数が得意な生徒さんにはぜひ挑戦してほしい入試です。
適性検査型入試は、「大学入学共通テストの傾向を見るに、思考力・読解力を測る適性検査は不可欠」という考えのもと、独自の出題をしています。実際、この入試で入学した生徒は高校での成績上位者に多く、クラスに3人いるだけでクラス全体を引っ張る存在になるそうです。そのため、今後も継続していく方針です。
併願校としては、法政大学第二、法政大学、日本大学第二などが挙げられていました。これは、目黒日大が日本大学への進学という安心感を持ちながらも、さらに上位の大学を目指せる学校として、受験生から認識されていることの表れだと感じました。
【合格実績について】
この春に卒業した中高一貫1期生の合格実績について、非常に正直な報告がありました。
「最低でも日大」からの挑戦
学校が発足した当初から「他大学、特に国公立・難関私大を目指す学校」という旗を掲げてきました。しかし、1期生の国公立・難関私大への進学実績は、残念ながら目標には届かなかったとのことです。「基礎学力の定着に抜けがあった」と、率直に課題を分析していました。
圧倒的な日本大学への進学実績
一方で、日本大学への内部進学は非常に強いです。希望者の98%が日本大学へ進学しており、付属校としてのメリットを最大限に活かしています。進学できなかった2%は、芸術学部の二次試験(実技)で不合格となったケースが主だそうです。
透明性の高い実績公開
目黒日大の特筆すべき点は、合格実績の公開方法です。単純な合格者数(延べ人数)だけでなく、中高一貫コース、高校入学コースなど、コース別に「進学者数(実人数)」を明記しています。令和3〜5年度の実績には、旧日出中学校からの進学者も含まれているという点も、きちんと説明がありました。「他校と比較すると見劣りする部分もあるかもしれないが、正直に伝える」という姿勢に、学校の誠実さを感じ、かえって信頼感が増しました。
【まとめ】
今回の説明会に参加して、目黒日本大学中学校が、「日出」から「目黒日大」へと生まれ変わる中で、試行錯誤を繰り返しながらも、生徒のために何が最善かを常に考え、進化し続けている学校だと強く感じました。
先生からは「クラス数をむやみに増やしたり、高校入試を廃止したりする予定は当面ない」というお話がありました。5〜6クラス規模の学校の多くが特進クラスを設けている中、目黒日大は「3クラス全員で難関大を目指す」という方針を貫いています。これは、現在の教員数で一人ひとりに手厚い教育を届けたいという責任感の表れでしょう。「むしろ2クラスでもいいくらいだ」という言葉からも、その本気度が伝わってきました。
「しなやかな強さを持った自律できる人間を育てる」という教育理念のもと、生徒が主役の教育を実践する目黒日本大学中学校。先生方の燃えるような熱意と誠実さが、これからの学校をさらに魅力的なものにしていくに違いありません。今後の展開に大いに期待したいと思います。