先日「学習塾SAPIXのテストを転売容疑 夫婦を書類送検」というニュースが話題になりました。
10年以上も前から講師間でも「原本を出品する人はともかく、コピーやデータを販売するのはマズいだろ」と話題にしていたものです。
もちろんSAPIXも問題視していて、2019年の7月の組分けテストから、問題用紙および解答解説の表紙に「本テストの問題用紙、解答用紙、解答解説を、販売目的で複製、複写、転載、加工すること、他者への譲渡、転売、貸与することを禁じます」と明記するようになっていました。
法的な解釈は僕には分からないので、ここからは「SAPIXの模試の過去問って実際のところ使えるの?」という話です。
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いきなり結論です。
「使えます (ただし条件付き) 」
そりゃそうです。
使えるから需要と供給が成り立ち、このような著作権の侵害事件にも発展するわけです。
じゃあ、どうして使えるのか。
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SAPIX生にとって「テキストを繰り返し学習することで、問題に応じた解法に習熟すること」が6年生夏期講習までの最重要テーマであることは揺るぎません。
ただ生徒によっては反復する中で、本質を理解するのではなくて「この問題文の時は、こう解けば答えが出せる」と覚えてしまうようなケースも少なくありません。
そんな時には模試の過去問が力を発揮します。
普段のテキストとは配列はもちろん、問い方も変えて、同じテーマの新しい問題として出題されているので、類題演習としてより本質的な理解を促す際にも有効です。
また50分という制限時間を守って解くことによって、普段の学習では養いにくい「時間配分」や「取捨選択」などのテスト戦略を磨くことも可能です。
もちろんSAPIXのテストは毎年、完全に新作を作り直しているので「同じ問題で不当に高い成績が出る」などの問題は生じません。
よく「過去問を買って準備するのは卑怯だ! 特別な準備をせず、普段の力で受けるべきだ!」という声も聞かれますが、その方々は過去問と全く同じ問題が出ると考えているのでしょうか。 (全く同じ問題が出るのは11月の比較合判だけです)
またそのような方々にとっては、志望校別の講座を受講したり、過去問で対策をすることも卑怯と考えているのでしょうか。
「特別な準備をせず、普段の力で受けるべき」と言って志望校対策を一切しないという受験生は皆無です。
結局のところ、自分が持っていないから不利 ⇒ 持っている人はずるい というだけの話で、おそらく主張が一貫しない、情報弱者なんでしょう。
中学受験は分析力や情報量も重要な戦いです。
最終的に受験で勝利するための有効な対策は常に収集し、必要なものを選択できるようにしたいものです。
ちなみに四谷大塚やSAPIX中学部では、そもそも模試の過去問を販売しています。
あくまでも教材の一環、という位置づけなんでしょうか。
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さて、じゃあSAPIXの模試の過去問が万能で最強の教材かというと「ただし条件付き」と添えたように、決してそうではありません。
まず類題演習としての価値があり、学習効果を高めて得点向上にもつなげられるのは「マンスリー確認テスト」や「復習テスト」といった範囲のあるテストに限られます。
そんな範囲のあるテストも年度によって試験範囲が前後したり、そもそもカリキュラムが大幅に変更されたりすることもあるので、あくまでもテキストがメインで、過去問はオプションの1つに過ぎないと考えましょう。
その他の「組分けテスト」や「サピックスオープン」の過去問は、出題レベルや分量の把握、時間配分や問題の取捨選択などのテスト戦略の確認に役立つ程度なので、余裕があれば取り組むくらいで良いでしょう。
他塾生がわざわざ手に入れる必要は、正直なところほぼ無いです。
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テストの過去問の扱いって、こんなもんです。
「絶対に入手しなきゃ!」と血眼にあるのではなく、あくまでもオプションの1つとして気軽に捉えられると良いでしょう。
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ちなみに今日はSAPIX6年生の6月度マンスリー確認テストですね。
生徒にとっては最後の「範囲のある」「昇降のある」テストです。
普段の力が発揮されますように。
SAPIXに関して、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください!
塾選びから合格(または転塾)までSAPIX完全解説