サカセルコラム

桜蔭中の国語分析(2026年) Column

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桜蔭中の国語分析(2026年)

2026.10.22

●出題形式
試験時間 50分 60点
●大問2題構成
物語文/説明文

●今年度の問題の種類
記述 空欄補充   20%程度
記述 通常     15%程度
選択肢       40%程度
抜き出し      15%程度
漢字        10%程度

今回使用する指標
○ 確実に取れて欲しい問題
△ 合格の勝負所、差がつく問題
× 落としても合否には大きく影響しない問題

大問1 「九回裏の『捨てる』考」(藤原辰史)

まずは文章に関しての構造解析から。

私が説明的文章を読む上で生徒に伝えている重要なことは以下の3点です。

・二元論構造の把握

・意味段落の把握

・具体と抽象の把握

筆者の主張:二元論構造

筆者の主張:二元論構造(対比)

現代の大量消費社会
(筆者が批判・変えたいシステム)
循環型社会
(筆者が肯定・目指すシステム)
無傷・完璧さを求める 少しでも傷があれば取り除き、捨てる。 傷を愛する・生かす 本についてしまった傷をひとつのプロセスとして愛し、新しい価値を見出す(金継ぎ、捨てないミシマ社)。
ゴミとして扱う もう使えないとみなし、密閉された「ゴミ箱」に入れる。 ボロ・クズとして扱う また使うことが可能(リサイクルできる)であり、「クズかご」に入れる。
排除・処分 産業廃棄物として燃やしたり埋め立てたりし、地球環境を悪化させる。 循環・再生 ゴミを細かく分別し、ぜんぶ分解されリサイクルされるようにする(上勝町の取り組み)。
「生ゴミ」という言葉 近代人がつくった言葉であり、この世界の想像力を貧困にしている。 「野菜クズ」という捉え方 いろいろな生き物(微生物など)の餌となり、最終的に植物の養分として循環する大事な堆肥となる。
人間を「商品」のように扱う 「商品」のような精神を持ち、相手を論破することで自分の無敵を誇りたがる。 人間そのものを捨てない社会 実際は誰も無傷ではいられないことを受け入れ、傷だらけの心や人間を捨てない。

今回は典型的な「大量消費社会・循環型社会」の二元論でした。
よく出題される型です。
桜蔭中を受験するレベルだと事前知識がなくとも問題なく戦えると思いますが、読むことが苦手なお子様の場合、事前知識があるだけで有利に進められますね。

意味段落の構成と流れ

意味段落の構成と展開

第1段落
問題の提起(出版業界の現状と新たな試み)
  • わずかな傷があるだけで本が断裁処分(ゴミ)にされる現状への疑問。
  • 「捨てないミシマ社」というレーベル立ち上げの意義(捨てるはずだったものに新しい価値を見出す)。
↓
第2段落
価値観の転換(「金継ぎ」の思想とゴミの概念)
  • 近代以降の市場経済は、あらゆる「傷」を恐怖し、不要な緩衝材(将来のゴミ)を大量に生み出していることへの批判。
  • 「金継ぎ」に見られる、傷を愛し、新しい生命を吹き込むという日本古来の美意識の紹介。
  • 「ゴミ(使えないもの・密閉される)」と「ボロ・クズ(再利用可能・かごに入れる)」という言葉と概念の違い。
↓
第3段落
実践と展望(社会と人間のあり方へ)
  • 徳島県上勝町の45分別の取り組み(ゴミをボロやクズに変える)。
  • 「野菜クズ(生ゴミ)」を堆肥化して自然の循環に戻すことの重要性と楽しさ。
  • 結論:モノだけでなく、不完全な「人間そのもの」を捨てない社会へのスケールの広がり。

次に意味段落分けです。
読む中で「どこに何が書いてあるかの把握」が重要です。
自分が読んだイメージとのすり合わせを意識しましょう。

具体と抽象に関しては細かくなるのでここでは割愛します。

次に解きに関しての解説です。

〈桜蔭風の記述〉
細かい意味段落ごとの要点を拾うことが重要です。
「聞かれていることを書く」+「近くから状況の説明などの要素を追加する」
という2段構えを意識しましょう。

問2 言い換えの記述 △ 易

言い換えの記述です。
傍線部を分けて、言い換えしていきましょう。
解答の根拠が前後に集まっており、比較的簡単だったかと思います。

傍線部① 「傷跡に新しい生命が吹き込まれるという世界観」

A 「傷跡」     → 「無価値として捨てられるはずだった傷や欠点」

B 「新しい生命」  → 「以前にはなかった独自の美しさや新たな価値として」

C 「吹き込まれる」 → 「作り替える、見方を変える」

D 「世界観」    → 「価値観」

あとはこの要素を桜蔭っぽくまとめましょう。

【傷や欠点を無価値として捨てるのではなく、前にはなかった独自の美しさや新たな価値として作り替えるという価値観】

問4 心情の記述 △ 難

心情の記述です。
「背景・きっかけ・気持ち」でまとめていきましょう。
解答の根拠が拾いにくく、難しかったかと思います。

A 「背景」     → 「ゴミ捨ては役に立たなくなったものを捨てるというマイナスの仕事」

B 「きっかけ」   → 「環境を守ることに繋がるプラスの仕事」

C 「意味付け」   → 「慣れればプラス やりがい」

D 「気持ち」    → 「前向き 使命感」

A 
傍線部の「ゴミを捨てるという仕事は〜担われてきたましたが、」とあるので、「ゴミ捨て」=「男性がやるものではない」「男性的にはマイナスの仕事である」という世間の価値観、おじさん世代の常識、を押さます。現代ではフランスのストライキなどで、エッセンシャルワーク(社会にとって必要不可欠の仕事)の見方が大きく変わってきていますが、ゴミ収集の仕事というのは職業的に下位にみられがちだったという過去の価値観は持っておきたいです。3K(きつい・汚い・危険)であり、身分制度時代では賎民(穢多・非人)の仕事であったことなどは把握しておきましょう。
ここでの「マイナス」は「汚い」「やりがいのない」「危険」「辛い」などが良いでしょう。
「役に立たなくなったものを捨てる」は空欄②の5行前に書かれていますが、ここから拾うのは現実的に難しいです。

B 
出来事を考えます。
この上勝町のゴミ処理センターはただのゴミ処理場ではなく、「環境問題を解決する最先端の施設」です。(傍線部③の4行前) ここから考えます。
「プラス」には「やりがいのある」「素晴らしい」「大切」などが入るでしょう。

C
傍線部の直後に「みんな慣れていった」とあるので、「慣れればプラス」的な内容を書きます。
ここでの「プラス」には「やりがいのある」などを入れます。

D
気持ちですが、前向き系・使命感系の気持ちが入れられれば良いでしょう。

あとはこれらを桜蔭風にまとめます。

【ゴミ捨ては役に立たなくなったものを捨てるという、汚く、辛い仕事という価値観があるが、上町ゼロ・ウェイストセンターでの仕事は、環境を守ることに繋がる素晴らしい仕事であり、慣れれば辛くなく、やりがいがあるので、前向きに頑張っていきたいという思い。】

問5 言い換えの記述 △ 

言い換えの記述です。
傍線部を分けて、言い換えしていきましょう。

A 「そういうヒビをそのまま愛す」   → 「不完全さや傷、歪みごと大切にする」

B 「〜という境界を容易に超えていく」 → 「物のみならず、生物や人間を大切にすることに繋がる」  

これが基本骨子です。
あとは桜蔭風にまとめたいので、Cを追加します。

C 「物をぞんざいに扱い、簡単に捨てる現代の大量生産、大量消費の社会構造は、物や生き物のみならず、人間も簡単に捨てることに繋がる」

A
これは指示語の言い換えなので傍線部の直前の内容を抜粋すれば簡単ですね。

B
これはCと同時に考えると分かりやすいです。
傍線部の11行前あたりから読んでいくと筆者が、Cに書いた「現代の社会の物をぞんざいに扱い、簡単に捨てる社会構造は、物や生き物のみならず、人間も簡単に捨てることに繋がる」ということを問題として捉えていることが分かります。
ここから、「〜境界を越える心構え(物も生き物も人間も関係なく)」→「傷を愛する」→「問題の解決(物のみならず、生物や人間を大切にすることに繋がる)」という文脈になりますね。
正直な話、このBの根拠は言い換えで狙って書くというよりかは、Aの根拠を言い換えで見つけ、桜蔭風にCの根拠を入れたら、文脈的に勝手に出現した(たどり着いた)、という受験生が多いのではないかと思っています。
がちゃがちゃ書いていたら、綺麗に収まった。というイメージですね。

C
これはBで前述した通り、傍線部の11行前あたりからの筆者の問題提起を捉えれば見つけられます。
桜蔭風の記述というイメージを持っていれば、マイナスの要素(説明的文章で言う問題提起)を入れたいとなり、発見に繋がるでしょう。

【物をぞんざいに扱い簡単に捨てる現代の大量生産、大量消費の社会構造は、物や生き物のみならず、人間も簡単に捨てることに繋がるが、不完全さや傷、歪みごと大切にする心があれば、物のみならず、生物や人間を大切にすることに繋がり、この社会構造の変革に繋がるということ。】

問6 言い換えの記述 △ 

長いので大変ですが、一つずつ着実に言い換え作業を行いましょう。
野球用語による比喩表現が分からないと苦しいですが、知らない場合は文脈から雰囲気を読み取ります。

A 「九回裏で連続ホームランを狙う」 → 「一発逆転を狙う 一気に環境問題を解決する」

B 「ありえない」 → 「現代の大量生産、大量消費の経済システムがある限り、現実的に難しい」

C 「四球 着実に塁を埋める」 → 「日々の暮らしの中の、私たちが見過ごしがちな捨てるという行為に手

をつける ゆっくりだが着実に解決を目指す」「ゴミを再利用していく」

以上が骨子です。
次に桜蔭風にまとめていくので、直前の筆者の言葉からマイナスの要素を拾います。

D 「現在の地球の自然破壊の度合いは絶望的で深刻な状況である」

A
この内容は本文に書かれていません。野球の例えが多く出ていますが、「九回裏」は本文で「試合決着直前」とあります。そして、10対0で負けているという状況。ここでホームランを狙うという意味を考えましょう。

B
「ありえない」を言い換えます。
Aの要素の内容をありえない、と否定しているわけですね。
この内容を直前の塊から探します。

C
「四球」「塁を埋める」の意味が分からないと厳しいですね。
「四球」はバッターが塁に出ること。「塁を埋める」はバッターがどんどん塁に増えていくこと。
ちなみに「塁」は「ベース」です。
上記の用語が全然分からない場合は、傍線部の一行前の「ゆっくりですが〜」の部分を読んで、少しずつ解決していくことだな。だから、Cの内容だな。と考えていきましょう。

D
桜蔭の記述だから、というメタ的な発想をしましょう。
傍線部の前の塊から、現在の状況に関しての説明にあたる要素を探します。
メタ的な発想があれば入れることは可能ですが、メタ的な発想がないと入れるのは難しいですね。

【現在の地球の自然破壊の度合いは絶望的で深刻な状況であり、一気に環境問題を解決を目指すSDGsの考え方は、現代の大量生産、大量消費の経済システムがある限り、現実的に難しい。だから、私たちが見過ごしがちな日々の暮らしの中の、捨てるという行為に手をつけ、ゴミを再利用していき、ゆっくりとだが、着実に環境問題の解決を目指すべきだ。】

大問2 「月の子」『本が繋ぐ』(木村綾子)

物語文を読む上で重要なのはいくつかありますが、桜蔭では

・主題

・人物像

が重要です。
そこを踏まえて読んでいきましょう。

人物像の解析:木村綾子「月の子」

登場人物の人物像

「私」(主人公)
特徴・性格
調子が良くて臆病、天邪鬼で自分の感情をコントロールできない弱さを持っており、いじめられたり孤独になったりすることを何よりも恐れている。
行動の動機(エゴイズム)
イトケがいじめられている状況(臭いや貧乏などの不快さ)に耐えられず、自分の感情のために「全然臭くない!」と割って入る。しかし、それはイトケを救いたいからではなく、ただ自分が不快になりたくなかっただけ。(利己的・偽善)
保身と残酷さ
無視が解かれ友達の輪に戻れると、再び孤立することを恐れて必死にその場にしがみつき、本(バスチアン)からも目を背ける。自分の居場所を守るためなら、あっさりと他者を見捨てる利己的、自己中心的な人間として描かれている。
イトケ(いじめられっ子)
役割
主人公の「鏡」であり、残酷な真実を突きつける存在。
人物像
クラスのいじめの標的ですが、「私」が自分をかばったのが善意からではないこと、そして最終的には保身のために自分を見捨てたことを鋭く見抜いている。卒業式の日に放った「あんたのことが一番キライだった」という言葉は、「私」の偽善とずるさを正確に射抜いていると言える。
バスチアン(『はてしない物語』の主人公)
役割
「私」がどうあるべきだったかを示す「理想(本来の成長の姿)」を体現する存在。
対比構造
バスチアンも現実のコンプレックスから逃避し、物語の世界で欲望を満たして孤立していきますが、最後には「弱い自分の姿」を受け入れて自ら変わろうとする。(問6を参照) 一方、「私」は自分の弱さを受け入れることができず、変わることを放棄して本を閉じてしまう。

上記の人物像の把握が問題の出来にも関わります。
しっかりと日頃から把握する練習を心がけましょう。

主題の解析:木村綾子「月の子」

物語の主題(テーマ)

核心となるテーマ
この物語の主題は、「人間の持つ利己心(エゴイズム)や弱さの自覚と、そこから逃げずに自分を変えることの難しさ」。主人公が成長して弱さを乗り越える美談ではなく、「自分の弱さから逃げ続けた人間の後悔」が根底に流れており、その後悔や反省が成長の主題と言える。
「偽善」と「保身」の残酷さ
「私」の行動は、一見するといじめられっ子をかばう正義に見えますが、本質は自分の気分の処理と自己保身でしかない。いじめという状況下で浮き彫りになる、人間の身勝手さと防衛本能の醜さが読み取れる。
「変われなかった自分」への罪悪感
バスチアンのように、自分の弱く卑怯な部分をごまかさずに受け入れ、自ら変わろうとする(=『はてしない物語』を最後まで読み切る)ことができれば、「私」は救われていた可能性があるが、大人になった今でも、イトケに睨まれ続けているように感じるのは、「弱さから逃げ、他者を見捨てたずるい自分」をいまだに直視できず、深い罪悪感として引きずり続けているから。
作品の問いかけ
いじめ問題を単なる「善と悪」で断罪するのではなく、誰もが心の中に持っている「孤独への恐怖」や「自己保身による偽善」を容赦なく描き出している。他者を通して自分の弱さと向き合うことの痛切さと、そこから逃避した代償の大きさを読者に問いかける構造となっており、反省や後悔で終わるタイプの成長の物語となっている。

主題は上記の内容です。
マイナスで終わるタイプの文章ですが、反省と後悔は成長に転じていると考えられます。
何を反省して、後悔しているのか、を理解することが重要です。

問4 言い換え △

心情変化の記述です。
傍線部①と傍線部②の対比を意識しながら、「変化前(過去の背景)・変化のきっかけ・変化後(現在の心理)」でまとめていきましょう。
バスチアンと私の境遇の重なりに気づけるかがポイントですが、根拠自体は本文の該当箇所の周辺から拾いやすい問題だったかと思います。

傍線部①「その能力は私をひどく渇望させた」→ 傍線部②「けれど私はその続きを読もうとしなかった」

  • A 「過去の背景(①)」 
    → 「クラス全員から無視されて孤立し、つらい現実を諦めていたため、世界を自分の望み通りに変えるバスチアンの能力が欲しかった」
  • B 「変化のきっかけ」 
    → 「無視が解けて再び友達の輪に迎え入れられ、その居場所を失うこと(再び孤立すること)を極端に恐れるようになった」
  • C 「バスチアンの状況」
    → 「物語の中で権力を笠に着たバスチアンが、仲間から見放されて孤立しかけている」
  • D 「現在の心理(②)」 
    → 「自分が再び孤立する不安を呼び起こすような、バスチアンが孤立していく先の展開から目を背けたかったから」

A 
傍線部①の直前〜直後の段落を見ます。「季節がひとつ変わっても、クラスからの無視は解かれなかった」「日々は忘れたい出来事ばかりで〜私はすでに現実を諦めていた」とあります。
また、「その能力」とは直前にある「望めばその通りの世界が立ち現れる能力(現実のコンプレックスを次々塗り替える力)」のことです。
【背景】  つらい現実から逃避したい「私」
【きっかけ】自分の望み通りに現実を作り変えられる魔法の力
【気持ち】 喉から手が出るほど欲しい

B 
傍線部①と②の間にある段落を見ます。
「けれどクラス全員からの無視は、ある日あっけなく解かれた。ふたたび友達の輪に迎えられて以降は〜」と状況が一変しています。 ここで重要なのは、ただ「仲直りしてハッピーになった」のではなく、「またあの日々が繰り返されると思って怯えた」「その場に執着しなければ」と、今の安定した現実(居場所)を失うことに強い恐怖を抱いている(保身に走っている)という点です。

C・D 
傍線部②の直前と直後を見ます。物語の中のバスチアンは「アトレーユにも、幸いの竜・フッフールにも見放されかけていた(=孤立しかけていた)」という状況にあります。
傍線部①の時点では、「私」にとってバスチアンは「理想を叶えてくれる憧れの存在」でした。しかし、友達の輪に戻り「絶対にまた孤立したくない」と怯えている今の「私」にとって、仲間から見放されて孤立していくバスチアンの姿は、「自分が最も恐れている未来(再び孤立すること)」を連想させる不吉なものに変わってしまったのです。
傍線部②の直後に「ファンタージェンの国でさえ孤立してゆくバスチアンの時間を止めたかった」とあります。本を閉じてしまえば、バスチアンが完全に孤立する結末を見なくて済む(=自分の今の平穏な現実が壊れる不安から目を背けられる)、という自己保身の心理が働いています。

あとはこれらの要素を繋げて、桜蔭風にまとめます。

【クラス全員から無視され孤立していた私は、世界を自分の望み通りに作り変えるバスチアンの能力を強く欲していたが、ある日無視が解けて再び友達の輪に迎え入れられた。再び孤立することを恐れて今の居場所に執着する「私」は、仲間から見放され孤立しかけているバスチアンが、この先さらに孤立していくような物語の続きから目を背けたかったから。】

問五 心情(言葉の受け止め方)の記述 △ 標準

心情の記述です。
イトケがなぜ「一番キライ」と言ったのか、その原因となった「私」の過去の振る舞いを振り返り、まとめていきましょう。イトケ視点ではき気(背景きっかけ気持ち)を考えると考えやすいです。

傍線部③「あんたのことが一番キライだった」

  • A 「背景」(給食の事件の本質」)
    → 「一見イトケを庇ったように見えたが、実際はイトケを救うためではなく、不快な場の雰囲気に耐えられない自分の気分のための身勝手な行動だった」
  • B きっかけ(無視が解けた後の保身)
    → 「再び友達の輪に戻れると、二度と孤立しないように保身に走り、イトケを切り捨てて悪意を向ける側に回った」
  • C 「気持ち」(結果)
    →自己保身していて一番嫌い
  • D 「私の受け止め」
    → 「そのような自分の偽善やずるさ、弱さをイトケは見抜いており、この言葉で鋭く批判されたのだと受け止めた」

A 
まず、クラスのいじめっ子たちよりも「私」が「一番キライ」と言われたのかを考えます。
給食の場面(2ページ後半〜3ページ冒頭)に戻ると、「私」は「べつに全然臭くない!」と割り込んでいますが、直後に「イトケを救いたかったわけではなかった。いじめが起きている場の雰囲気に耐え切れなくて、身勝手に腹を立てただけだった」「その瞬間、私はクラスの誰よりも、イトケを恨んでいた」とあります。
つまり、表面上は「正義の味方(いい子)」のような振る舞いをしながら、本音ではイトケを助けようなどと思っておらず、むしろ邪魔者扱いしていたという「偽善」が一つ目の要素です。

B 
次に、無視が解けた後の「私」の行動(3ページ中盤)を見ます。
クラスで「友達の輪」に執着し、そこから外れないようにするということは、必然的に「輪の外にいるイトケ」を無視する側(いじめる側・悪意を向ける側)に同調して保身に走ったことを意味します。
一度は味方のような顔をしておきながら、自分が助かるためならあっさり見捨てる、この「裏切り(保身)」が二つ目の要素です。

C
イトケの気持ちを考えます。
AとBの背景と気持ちから「嫌い」「不快」といった気持ちが出てくれば大丈夫です。

D
最初から悪意を向けてくる単純ないじめっ子よりも、自分の気分のために味方のふりをして近づき、自分の立場が危うくなると保身のために見捨てる人間のほうが、いじめられている側からすればよほど残酷でタチが悪いですよね。
「私」自身もその後ろめたさを自覚していたからこそ、卒業式で初めて目が合ったイトケのこの言葉を、「自分の身勝手さやずるさ、弱さを完全に見透かされ、突きつけられた言葉だ」と痛烈に受け止めたわけです。

あとはこれらを桜蔭風にまとめます。

【給食の事件で一見イトケを助けたように見えた「私」の行動は、実は自分の気分のための身勝手なものであり、イトケを思ってのことではなかった。さらに無視が解けて友達の輪に戻ると、二度と孤立しないように保身に走り、イトケを見捨てて悪意を向ける側に立った。そのような「私」の偽善やずるさ、弱さをイトケはすべて見抜いており、この言葉で鋭く指摘されたのだと受け止めた。】

問六 言い換え・主題の記述 △ 難

物語全体のまとめにあたる、象徴的な表現の言い換え記述です。 問題文の誘導(バスチアンとの対比)を手がかりにしながら、「私の性格の弱さ・過去の罪悪感・バスチアンとの違い(現在の状態)」を総動員してまとめていきましょう。 文章全体のテーマを統合して書く必要があるため、かなり骨の折れる問題だったかと思います。

傍線部④「記憶のなかで、イトケは私を睨み続けている」

  • A 「私の本来の性格(弱さ)」 
    → 「調子が良くて臆病で、天邪鬼で頑固な、自分でもコントロールできない弱さを持っている」
  • B 「過去の行動と罪悪感」 
    → 「孤独やいじめを何よりも恐れるあまり、給食の事件でも自分の感情を優先し、結果的に保身のためにイトケをないがしろにして傷つけた」
  • C 「バスチアンとの対比」 
    → 「バスチアンのように、自分の醜い弱さを受け入れて自ら変わろうとすることができなかった」
  • D 「現在の状態(睨み続けているの意味)」 
    → 「その変わることができなかった自分への後悔や、イトケに対する強い罪悪感を、大人になった今でも拭いきれずに引きずり続けているということ」

A・B 
桜蔭の最終記述らしく、まずは主人公の根本的な問題点(マイナスの要素)を文章全体から拾い上げます。 本文の前半(2ページ目)にある自己分析の箇所を見ると、「調子いい」「臆病」「頑固」「天邪鬼」「コントロールできない」といった言葉が並んでいます。
なぜそうなるかといえば、「いじめられたり孤独になったりすることを何よりも恐れているから」です。
その恐怖心が原因となって、イトケがいじめられているのを見るのも自分がされるようで耐えられず(給食の事件)、最終的には自分が孤独にならないためにイトケを見捨てた(ないがしろにした)、という問四・問五までの流れを要約して入れ込みます。

C 
ここで設問文の誘導を必ず使います。
設問文にわざわざ「バスチアンは、忘れてしまった現実世界での自分の姿を、物語の結末では受け入れて、自ら変わろうとします。」と書かれていますね。
「バスチアンは弱さを受け入れて変わろうとした」と書いてある以上、解答には必ずその対比として「一方、『私』は自分の弱い部分を受け入れて、自ら変わろうとすることができなかった」という要素を入れる必要があります。

・バスチアン 「弱さを受け入れ変わろうとした」

・私      「弱さを受け入れられず、変われなかった」

当時『はてしない物語』を途中で閉じて最後まで読まなかったことは、「自分の弱さと向き合って変わるチャンスを放棄した」ことの象徴だったわけです。

D 
最後に傍線部の「記憶のなかで、イトケは私を睨み続けている」を言い換えます。 本当にイトケが今も目の前にいるわけではなく、「私の記憶(心)のなかで」睨み続けていると感じているわけですから、これは「私自身の消えない罪悪感・後悔の現れ」です。
自分の弱さと向き合えず、イトケを傷つけたまま逃げてしまった過去を、大人になった今でも消化できずにずっと引きずっている、とまとめれば綺麗に収まります。

あとはこれらを桜蔭風にまとめます。

【私は、調子はいいが臆病で、頑固さや天邪鬼な面を自分でもコントロールできない弱さを持っている。それは孤独やいじめを何よりも恐れるからであり、その恐怖から給食の事件でも身勝手に振る舞い、結果的に保身のためにイトケをないがしろにした。イトケに睨まれ続けているように感じるのは、バスチアンのように自分の弱い部分を受け入れて自ら変わろうとすることができず、その罪悪感や後悔を今も引きずり続けているということ。】

解説は以上となります。
少しでもお役に立てたら幸いです。

松田 浩志

この記事を書いたのは...

松田 浩志

自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。

大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。

現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。

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