サカセルコラム

武蔵中の国語分析(2025年) Column

過去問分析

武蔵中の国語分析(2025年)

2025.12.03

2025年度の武蔵中の出題傾向は衝撃の「文章解答用紙分離型」となっておりました。
かっこつけて言いましたが、文章と解答用紙が同一の紙ではないという意味です。
これは大きな転換点だと思います。

また、普通の選択肢問題が出題されたのもの多くの受験生を驚かせたことでしょう。
予想外な展開に対応できる力ブレない精神力などが試されたのは間違いないと思います。

文章のレベルは普通レベルで内容的にも読みやすかったと思いますが、ところどころ独特な言い回し、古めかしい表現の部分があったので、注意が必要です。
合格者平均点は53.8点とかなり低く、多くの受験生が苦しんだ入試だったのではないかと思います。

●出題形式
試験時間 50分 100点
●大問1題構成
随筆文

●今年度の問題の種類
記述 通常     75%程度
選択肢       5%程度
知識        10%程度
漢字        10%程度

今回使用する指標
○ 確実に取れて欲しい問題
△ 合格の勝負所、差がつく問題
× 落としても合否には大きく影響しない問題

大問1 幸田 文 の文章による

今回は随筆文なので、

A. 筆者の体験談や事実を押さえる

B. Aを通して伝えたい筆者の意見や感想

上記の2つを押さえていくことが重要です。

幸田文の随筆文 A/B構造分析(体験談から意見へ)

2025年 武蔵中の随筆文の構造解析

文章の展開に沿った「体験談」と「意見」の関連性

【体験①】 飼育係の言葉遣いへの気づき

飼育係が、動物の気持ちなど不確かな事柄について語る際、「~である」という断定を避け、「~と思う」という推量の言葉を慎重に使っていることに気づく。

この体験から導かれる意見

  • 【意見】動物を本当に理解するには、知的誠実さと謙虚な姿勢が不可欠である。
    筆者はこの態度を、安易な断定を避ける「学問をする人たち」のようだと感じた。
【体験②】 チンパンジーやゴリラとの遭遇

チンパンジーに唾を吐きかけられるが、それは人間のお客さんの真似だと知る。その後、すぐそばにいたゴリラの存在に気づき、武器を持たない人間の無力さを痛感する。

この体験から導かれる意見

  • 【意見】動物の行動は人間の姿を映す鏡であり、その不自然な環境には悲しみが伴う。
    チンパンジーの行動が人間の模倣であることに心を痛める。
  • 【意見】人間と動物は異種であり、どんなに親しくても越えられない境界線と危険が存在する。
    ゴリラとの遭遇で、両者の力の差と潜在的な危険性を実感する。
【体験③】 若いゴリラとの交流の観察

若いゴリラが、食事のあとに人間の子供のように飼育係にまとわりつき、遊んでほしがる様子を見る。その姿に親しみを感じる一方、じゃれ合う様子からは底知れない力を感じ、次第に怖さも覚える。

この体験から導かれる意見

  • 【意見】飼育係と動物の間には、長年の交流で築かれた深く特別な信頼関係がある。
    ゴリラが飼育係に全幅の信頼を寄せ、甘える様子から関係の深さがうかがえる。
  • 【意見】人間と動物は異種であり、どんなに親しくても越えられない境界線と危険が存在する。
    遊びの中にも力の差は歴然としており、常に危険と隣り合わせであることを示唆する。
【体験④】 ベテラン飼育係の事故の話

ベテランの飼育係でさえ、自身の苛立ちを動物に察知された結果、指先を噛み切られてしまったという過去の事故の話を聞く。

この体験から導かれる意見

  • 【意見】人間と動物は異種であり、どんなに親しくても越えられない境界線と危険が存在する。
    動物が人間の感情を敏感に察知し、恐怖から防衛的に反応する可能性を物語っている。
【体験⑤】 ゴリラ「ビル」の脱走事件

ゴリラの「ビル」が脱走するが、駆け付けた飼育係がビルの姿に「淋しそうだ」と共感し、信頼をもって呼びかける。するとビルは安心し、素直に手をつないで一緒に住処へ帰る。

この体験から導かれる意見

  • 【意見】動物との関係において、恐怖や攻撃性ではなく「共感」こそが最良の結果を生む。
    飼育係の共感が最悪の事態を回避し、平和的な解決をもたらした。
  • 【意見】飼育係と動物の間には、長年の交流で築かれた深く特別な信頼関係がある。
    危機的な状況でも飼育係を信じて従うビルの姿は、まさに「長年のなじみが花になった」瞬間だった。
  • 【意見】動物の行動は人間の姿を映す鏡であり、その不自然な環境には悲しみが伴う。
    檻の外に出ても行くあてのないビルの姿に、筆者は動物園で生きる動物の根源的な孤独と悲しみを感じている。

問1 知識 ○

語彙の問題です。
知らない場合は前後の文脈から考えて解きましょう。

問2 (1) 記述 ○

指示語の記述です。
要素を本文から見つけ、まとめましょう。
直前を確認すれば容易に解けます。

直前に「動物園のお客様は〜見えはしない。」とあります。ここをまとめましょう。
記述を書く際の注意点として、「飼育係の顔など見えはしない」の部分の「顔」は慣用表現なので、しっかり言い換えましょう。ここでの顔とは「顔面」という意味でなく、「存在」という意味です。そのまま「顔」と書いてしまうのは避けたいですね。

解答【動物園の客にとっては動物が主役であり、飼育係の存在は意識に入らないということ。】
別解【動物園では動物が主役であり、飼育係に存在が目立つことはないということ。】

問2 (2) 記述 ×

理由の記述です。
今回の入試問題の中で屈指の難しさでした。
記述の要素を本文から見つけまとめたいのですが、巧妙に隠されているため、要素が見つからない生徒 or まとめ方が分からない生徒がほとんどでしょう。
多くの生徒が正確には書けていないと思うので、解けなくてもダメージは深くありません。

それでは今からこの問題を分かりやすく解説していきます。

聞かれていることは「飼育係の存在がお客さんに見えないことが大切だ」と筆者が考えている「理由」です。
まず要素はないかと傍線部の前後を読んでいきます。
すると、傍線部の直後に「私たちは直接にゴリチン(飼育係)と交際ができない」とあり、その後ろに「〜悲しみと怒りと恐怖とを経験してきた交際」とあります。
ここから、「飼育係は悲しみと怒りと恐怖を経験してきた」と分かります。
そして、それを裏付けるように本文では「ゴリラへの恐怖と人間の弱さ(p3の後半)」「ベテラン飼育係の指を失った話(p6)」「ビルの脱走の話(p8)」といった「動物との交際の危険性」などが書かれています。

以上から、問われている理由は「飼育係が認知され、動物との交際の危険性が動物園の客に伝わると、客の感じた恐怖が動物に伝わり、動物達を不安にさせ、より危険性が増すため。」となります。
「客の感じた恐怖が動物に伝わり、動物達を不安にさせ」の部分は、p6後半の「ベテラン飼育係の指を失った話」やp8後半の「ビル脱走の話」で書かれています。

解答【客と飼育係が関わり、動物の危険性が客に伝わってしまうと、客が動物達を恐れてしまい、その恐怖が動物達を不安にさせ、動物園が危険な場所になる可能性があるため。】
別解【客が飼育係と関わることで、動物との交際における悲しみ、怒り、恐怖などの経験が伝わってしまい、動物に客が恐怖してしまうため】

要素は組み合わせても大丈夫です。
文字数で調整していきましょう。

問3 記述 △

言い換えの記述です。
傍線部を要素ごとに分け、言い換えをしていきましょう。

「飼育係の『と思う』は学問する人の態度をもって語られている」

A 飼育係の「と思う」 → 飼育係が安易に断定語を使用しない(言葉を神経細かく、正しく使用する)

B 学問する人の態度  → 「である」と「と思う」をはっきり使い分ける(厳しい区別をつける)

以上をまとめます。
要素は傍線部の前に書いてあるので、見つけてみてください。

解答【飼育係が安易に断定語を使用しない様子は、「である」と「と思う」を厳密に使い分ける学者と同じようである。】

問4 記述 △

言い換えの記述です。
傍線部を要素ごとに分け、言い換えをしていきましょう。

「私はチンパにつばつきされたのだが、それは同胞から頂戴したつばき同然で、はなはだ心たいらかでない。」

A チンパにつばつきされた   → チンパンジーに唾を吐きかけられた行為

B 同胞から頂戴したつばき同然 → (チンパンジーが)人間の行為を真似たもの

C はなはだ心たいらかでない  → 心が痛む・恥ずかしい・情けない
                  (チンパンジーに良くない行為を教えてしまったのが同族であることに)

以上をまとめます。
AとBは傍線部の直前に記載がありますが、Cは本文に記載がありませんので、自分で考える必要があります。

解答【チンパンジーから唾を吐きかけられた行為は人間の行為をチンパンジーが真似たものであり、同じ人間として恥ずかしく、心が痛んだということ。】

問5 選択肢 △

適当でないものを選ぶ選択肢です。
注意しましょう。
要素を探すのが大変なので、以下の手順で解くのがおすすめです。

1. 先に選択肢を確認する
2. パーツごとに◯△×をつける
3. △の箇所を優先的に本文で確認し、選択肢を絞る

ア 「赤ん坊を思わせる幼さ」→○ p4の最後の方に記載 「飼育係にとりすがる」→○ p5の最初に記載
イ 「力の相違がある」→○ 傍線部の3行後に記載 「いつも恐れられて」→× p6の最初を読む また「いつも」が言い過ぎ表現
ウ 「大勢の観客〜一時的な出会い〜つながりが薄い」→○ p5の最初に記載 「縁の薄さ」の意味が分からないと少し苦しいが、「大勢のお客さん〜ただ過ぎゆく人」とあるので、ここから意味を考える
エ 「故郷から遠く離れた〜している」→○ 傍線部の1行前に記載「異郷」の意味が分からないと苦しいが、漢字から意味を類推する
オ 「コンクリートや新鮮でない果物」→○ 傍線部1行前に記載

以上より【イ】が正解

問6 記述 △

言い換えの記述です。
問4と同じように解きましょう。

傍線部の直前に具体例が書かれているので、ここを利用し言い換えを作っていきます。
繰り返しお伝えしていますが、具体と抽象の読み分けは必須の能力ですね。

A「攻撃というより」→ 「悪意で飼育係の指を噛み切ったのではなく」

B「防御だと思う」→ 「急に目前に怒っている人が来たことに対しての恐怖」

Aに関しては、傍線部の直前に「悪意ではなく」とあり、そしてその悪意の内容は「飼育係の指を噛み切る」です。この2点を入れていれば良いでしょう。
Bに関しては、傍線部の直前に「恐怖であり」とあり、そしてそのきっかけとなる「戦きやすい彼らは急に目前に立腹を見せられて(自分への立腹とうけとる)」などを入れておきましょう。

※武蔵受験生であれば、立腹は漢字、もしくは文脈から「怒っている」という意味であることを予測できて欲しいです。

解答【ゴリラは悪意ではなく、急に目前に怒っている人が来たことに対しての恐怖で、飼育係の指を噛み切ったということ。】

問7 記述 △

言い換えの記述です。
問4.6などと同じように解きましょう。

A「そのゆえに」 → 「飼育係は動物の身になって考えられる人達であるため」

B「ビルの寂しさは」 → 「檻の外に出たみたものの、知っている相手はおらず、頼りなく、不安」

C「わかってもらえた」 → 「飼育係には伝わった」

Aに関しては、「その」の指す指示内容を拾います。直前に「飼育係は動物の身になって考えてやれる人たちなのだ。」とあるので、これを利用しましょう。
Bに関しては、「寂しさ」から要素を考えます。p7の最後の方に「知った顔はなし、頼りなくて〜」とあり、ここを利用します。
Cに関しては、「分かってもらえた」を適当に書きかれば大丈夫です。

解答【飼育係は動物の身になって考えられる人達であるため、檻の外に出たビルが抱いた、知っている相手はおらず頼りなく不安、という感情は、飼育係に伝わったということ。】

大問2 漢字

丁寧に書きましょう。


武蔵中の解説は以上となります。
少しでもお力になればと思います。

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松田 浩志

この記事を書いたのは...

松田 浩志

自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。

大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。

現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。

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