今年の開成、とても簡単な問題でした。ここ数年は受験者平均が7割程度になる問題が続いていましたが、今年は久しぶりに受験者平均で8割越え、合格者平均は9割近くになっていました。難問はなく、少し迷うかな?という問題や、ミスを誘うような問題があった程度。満点も相当数出たことと思います。
簡単…といっても、基礎というほどではありません。原理を理解し、問題の条件をしっかり読まなければ解けない問題になっています。それでも、勉強を重ねてきた開成志望者にとっては平易な問題だったでしょう。ミスをするたびにライバルから遅れをとる形になります。理科で大きな差はつかなかったことと思いますが、みんなが9割を取る中でミスを重ねると大きく取り残されたかもしれません。
出題
[1]地学分野 地層
以前は、月の出題が多かった開成ですが、最近は天体・地層・気象からまんべんなく出題されています。今年は地層でした。ⅠボーリングⅡ断層と地震、という構成。地層といえば2006年度のモニュメントバレーの問題が印象的ですが、今回は標準的な問題でした。
Ⅰボーリング
ボーリングの問題は柱状図が一般的ですが、崖の図とリード文から地層の傾きを考えさせる問題でした。切り口はやや珍しいですが、情報を正確に読み取れれば簡単な問題です。図と文を正確に理解する力を確認する問題でしょう。
Ⅱ活断層と地震を考える問題
問6の正誤問題は3つ正解しないと得点できないためやや難しかったかもしれません。
他は標準的な知識問題でした。
[2]化学分野 熱
この問題が今回の肝だったかもしれません。少し難しいかも?…よく読んで考えれば簡単?というレベルの問題が続きました。解説で問題のレベル分けをしていますが、△と○で悩みました。
熱や溶解度は頻出です。物理のてこや運動もそうですが、最難関校ほどこのような基本単元を多く出題している傾向があります。原理の理解の深さ・読解力・思考力を試すのにちょうどいいからではないかと思います。
Ⅰ沸騰石
開成では実験器具がよく出題されていますが、今回は沸騰石でした。少し詳しい知識を持っているか、常識レベルの科学的思考が出来れば解ける選択問題です。
Ⅱ熱の実験問題
他の大問は受験生にとって見慣れた問題でしたが、この問題は初めて見るタイプの実験問題でした。実験の操作と結果の読解・考察力が試されています。
問5は間違った考察をする太郎さんの考えを答える問題だったため、正しく読み取っている受験生には少し難しかったかもしれません。論理的思考力が求められています。
[3]物理分野 ふりこ
ふりこは、原理の正確な理解を確認するのに最適な問題です。
問1は実験データがずれた理由を考えさせる面白い問題でした。
他は、受験生にとってはなじみのある問題だったと思います。ふりこの長さ=支点からおもりの重心までの距離、ということを理解し、平方数倍の計算ができればラクに解けたでしょう。
[4]生物分野 人体(血液循環)
昆虫や植物の出題が多い開成ですが、今回は人体でした。
問1と問2で知識問題が4問。その後は計算問題。
酸素の吸収量を計算で求めさせる問題は最近流行っていますが、開成も出してきました。
表2つにデータをまとめて、その中から問題に応じて必要な値を使わせる形式でした。
内容自体は難しくありませんが、図表と問題を正確に読み取って処理する力が求められています。
解説
問題の分類
知:知識問題
考:思考問題
計:計算問題
問題のレベル分け
〇:絶対に取りたい
△:この中から半分以上取りたい
×:捨てても可
[1]地層
問1 考 ○
Z層を東側の崖②から見るとどのようになっているか考える。
左端のb地点では地面から15mの高さにZ層があります。
P地点では15m掘ったところにZ層がある、とあります。
図1の崖①を見るとZ層は東西方向に水平であることが分かるので、崖②でも上から15m掘ったところにあることが分かります。
あとは直線でつなぐだけです。
解答
問2 考 ○
問1のZ層を延ばすとQでは25m掘ったところにZ層があることが分かります。
問1から、北に20m進むと10m下がると考えて、PでのZ層から10m下がったところ、と考えてもよいでしょう。
解答 25(m)
問3 知 ○
火山噴出物の特徴。
・角ばっている
・小さな穴(水蒸気が抜けた穴)があ
いていることがある
解答 ア、ウ
問4 知 ○
地層の堆積について
aれきと泥なら大きくて重いれきが先に堆積します→○
b砂と泥なら、砂の方が重いので沈む速さは速くなります→×
解答 イ
ここまで、簡単すぎて不安になった受験生も多かったことと思います。
ミスのないよう慎重に、でもこれから時間のかかる問題が登場するかもしれないのでスピーディーに進めたいところです。
問5 知 ○
地面のずれの写真。これが何か?断層に決まっていますが、正断層か逆断層か判断して答えるべき?もしかして横ずれ断層?と悩んだ受験生もいたことと思います。
ただの「断層」でOK。リード文に「地面に段差ができ、横方向にもずれた」とありますので、これを一言で答えるなら「断層」しかありません。
解答 断層
問6 知考 △
正誤問題
a海域で発生した地震では断層は出来ない→×
b地下深くで発生した地震では、断層が地表に達しないことがある→○
c小規模な地震では、断層が地表に達しないことがある→○
少し悩む問題だったと思います。
解答 オ
問7 知考 ○
断層が発見された場所が危険である理由
開成志望者なら「活断層」を知っているでしょう。一定の時間をおいて、繰り返しずれる断層のことです。
解答 ア
問8 知 ○
最近は水害などの災害が増えているので話題になっていますね。入試にもよく登場しています。時事的な問題でした。
解答 ハザードマップ
[2]熱
問1 知考 ○
沸騰石を入れる目的が「おだやかに沸騰させるため」「突沸を防ぐため」なのは知っているでしょう。その理由を考える問題でした。知らなかったとしても、誤答の選択肢が分かりやすいため、解けそうです。
ア大きな泡が生じても、その一部が沸騰石の穴に取り込まれる…おかしい。
イ沸騰石の穴から小さな空気の泡が出て、それを中心に水蒸気のあわが成長…ありそう
ウ沸騰石が熱を吸収…おかしい
エ沸騰石の穴が熱を吸収…おかしい
解答 イ
沸騰石は小さな穴が開いているのがポイントで、一度使った沸騰石は穴が水で埋まるので乾燥させてから使う、というところまでは知っているのではないでしょうか?その知識も判断材料になります。
また、水が水蒸気になるときには「核」が必要で、それがないと中々水蒸気になれず、100℃を超えても沸騰しない「過加熱」という状態になることがあり、振動などのきっかけで一気に沸騰することがあります。これを突沸と言います。
突沸を防ぐため、沸騰石の穴から出た空気の粒が「核」の役割をしている、という問題でした。
問2 知考 △
正誤問題
ア× 蒸発により水が液体→気体になるときは何℃でも起こる。気圧の低い場所では100℃以下でも沸騰する。
イ× 沸騰石は水に溶けない。
ウ○ 小さな穴があいていれば、空気の泡を出せるので、使える。
エ○ 問1の解説のとおり、正しい。
解答 ウ、エ
問3 考 ○
お湯に入れた後
①水に入れると1分30秒で全体が青色(20℃)になった
②空気中に置くと20分で全体が青色(20℃)になった
→水の方が熱を奪いやすい
解答 あ 空気 い 水
問4 考 ○
図3(中央) 下は実験Aの①と同じ。水に入っているので熱が奪われる→青
上は空気中なのでまだ熱があまり奪われていない→ピンク
理由 下の部分でインク→水に熱が伝わった
図3(右) 周りは水も空気も20℃なので、時間が経てば20℃に近づいているはず。
全体が同じ色でピンクになることはあり得ない。
解答 図3(中央)色 ア 理由 a 図3(右)色 エ
問5 考 太郎△ 花子○
太郎 全体が青くなる(20℃)ということから、下のお湯に入っている部分の温度が下がらなければなりません。上の冷たいインクが対流で下にも流れてくることが考えられます。
また、全体が20℃になるということは20℃の空気に熱が奪われたことになります。
花子 全体が60℃になっているので、お湯から水に熱が伝わり、それが対流によって全体に伝わったと考えられます。
解答 太郎さん b,c 花子さん a,c
太郎さんの考えは間違っているため、正しい考えが思い浮かんでしまうと間違った方に合わせるのは少し難しかったかもしれません。太郎さんが「実験Aの結果を忘れていた」と言っているのがヒントです。
問6 知考 う○ え○ お△
対流の話です。温められたインクは「上」へ、温まっていないインクは「下」へ
よく「動く」「混ざる」あたりでしょうか。「動く」はその前の「流れが生じ」と意味が被るので「混ざる」がより適当かもしれません。
「対流する」と答えたかった受験生もいたことと思いますが、3字以内という指定があります。
解答 う上 え下 お混ざる
[3]ふりこ
問1 考 △
ふりこが10往復する時間を測定する実験で、4回目だけ数値が大きくずれた原因を考える問題。
アのストップウォッチを押すタイミングはこの手の実験データのずれとしては定番ですが、4回目は他の回に比べて約2秒ずれています。ストップウォッチを押すタイミングで2秒もずれるとは考えられません。
他の回は10往復で20秒程度なので、ちょうど1往復分が2秒程度です。よって、イのふりこが往復する回数を数え間違えた、が正しいと考えられます。
解答 イ
問2 考 ○
おもりの数と10往復の時間の関係。ふりこの周期がふりこの長さだけで変わるのは常識でしょう。今回長さは変わっていないので、10往復の時間は1個や3個のときと同じくらいになるはずです。20.09~20.10を選びたいので、いちばん近いのは20.00となります。
解答 ①ウ ②ウ
これしか答えはありませんが、不安になった受験生もいたことと思います。
問3 考 ○
ふりこの周期は角度には関係ない、と習っていることと思いますが、実験データは角度が大きくなると10往復の時間も長くなっています。摩擦や空気抵抗が影響しているのでしょう。
③は20.12と20.18の間…当てはまるのはイの20.15しかありません。
④は20.26と20.36の間…オの20.30とカの20.35があります。角度が2.5度ずつ増えていて、10往復の時間は④の付近では0.4~0.5ずつほぼ同じ値で増えているので、オの20.36が選べます。
解答 ③イ ④オ
問4 計考 ○
ふりこの長さは支点からおもりの重心までです。おもりはフックを含めて長さ4㎝なので、ひもの下端からおもりの重心までは2㎝です。
よってふりこの長さは
ひも3.0㎝のとき 3+2=5(㎝)
ひも18.0㎝のとき 18+2=20(㎝)
20÷5=4 4倍です。
解答 4(倍)
問5 計考 ○
ふりこの長さが4倍・9倍…となると周期が2倍・3倍…はもちろん知っていると思いますが、問4の答えからそれが成り立っていることを確認して解きましょう。
ひもの長さが38㎝なので、ふりこの長さは
38+2=40(㎝)
これと比較しやすいふりこの長さは10㎝→ひも8㎝でしょう。このときの時間が6.34秒。
ふりこの長さが4倍なので、時間は2倍
6.34×2=12.68(秒)となります。
解答 12.68
問6 計考 ○
まず、おもり1個のときは
ふりこの長さ2.8+2=4.8(㎝) このときの10往復の時間は4.40秒。
おもり4個のときは、おもり4個分の全体の長さが16㎝なので、重心は真ん中の8㎝になります。
ふりこの長さ2.8+8=10.8(㎝)
10.8÷4.8=2.25(倍)
2.25=1.5×1.5
よって、10往復の時間は4.40秒の1.5倍になります。
4.40×1.5=6.60
解答 6.60(秒)
問7 知考 ○
解答 ⑥おもりの重さ ⑦ふりこの長さ
気をつけるポイントとしては「おもりの」や「ふりこの」を必ず入れることです。「ふりこの」を入れず、ただ「長さ」と答えるとひもの長さとの区別がつかないので、×です。
[4]人体(血液循環)
問1 知考 (1)○ (2)○
(1)①食事の養分が体に取り込まれた後、はじめに通る地点
食事の養分は小腸で吸収されるので(う)です。
②酸素は肺で吸収されるので、肺の後…が記号にないので、肺→心臓の後の(か)です。
(2)答えは「尿」で簡単ですが、臓器の方の名称を答えるミスを誘う問題です。
解答 (1)①(う) ②(か) ③尿
問2 考 ○
心臓から体循環で出ていった血液量と同じ血液量の地点。簡単すぎて不安になりますが、(あ)しかありません。
解答 (あ)
問3 計考 (1)○ (2)○
(1)血液100mLあたりが配る酸素量(安静時)
①筋肉以外 前後の血液に含まれる酸素量を求めればOK
(B)-(b)=20.0-16.0=4.0
②筋肉 同様に
(C)-(c)=20.0-15.0=5.0
③体全体の平均
(A)-(a)=20.0-15.8=4.2
よって、②>③>①
解答 ②→③→①
(2)全身に流れる血液量と酸素量を考えます。
血液100mL 酸素4.2mL
1分 血液5000mL 酸素 □mL
4.2×5000/100=210(mL)
解答 210(mL)
問4 計 (1)○ (2)△ (3)○
(1)1回あたりの血液量を求めると
安静時 1分 60回 5000mL
1回 5000÷60=250/3(mL)
ここから運動時の心拍数は
運動時 16000÷250/3=192(回)
解答 192(回)
(2)筋肉に配る酸素量は(C)-(c)に注目して
安静時 血液100mL 酸素20-15=5.0(mL)
1分 血液1000mL 酸素 5×1000/100=50(mL)
運動時 血液100mL 酸素19.8-3.8=16.0(mL)
1分 血液12800mL 酸素16×12800/100=2048(mL)
2048÷50=40.96(倍)
小数第1位を四捨五入して整数で答えるので
解答 41(倍)
(3)ひとつひとつ考えていきます。
ア Aを通る1分当たりの血液量は
安静時5000mL→運動時16000mL 増加しています。
血液量の増加の割合は 筋肉1000mL→12800mL 12.8倍
筋肉以外4000mL→3200mL 0.8倍
筋肉以外よりも筋肉で大きくなっています。○
イ Aを通る血液100mLが配る酸素量
安静時 20.0-15.8=4.2(mL)
運動時 19.8-6.0=13.8(mL) 増加しています。
血液100mLあたりの配る酸素量の増加の割合は
筋肉 安静時20.0-15.0=5.0
運動時19.8-3.8=16.0
16÷5=3.2(倍)
筋肉以外 安静時20.0-16.0=4.0
運動時19.8-14.8=5.0
5÷4=1.25(倍)
筋肉以外より、筋肉の方が大きくなっています。○
ウ Aを通る血液が1分当たりに配る酸素量は
安静時 問3(2)より210mL
運動時 血液100mL 酸素 19.8-6.0=13.8(mL)
1分 血液16000mL 酸素 13.8×16000/100=2208(mL)
210mL→2208mLで増えています。
筋肉では問4(2)で求めたとおり、50mL→2048mLと増えています。
筋肉以外への酸素量は、全体に配られた酸素-筋肉に配られた酸素で求められるので
安静時 210-50=160(mL)
運動時 2208-2048=160(mL)
変わっていないことが分かります。○
エ Aを通る血液に含まれる酸素量
安静時20.0mL → 運動時19.8mL
減っているので×。
ア~ウを真面目に計算する必要はありません。なんとなく正しそう、と判断しておいてエが確実に間違っているので選べればOK。
または、エから正誤判断を始めた方が得策です。
解答 エ
にほんブログ村にも参加しています。ぜひ下のバナーをワンクリックで応援もお願いします!