◆各種データ
4科目400点+調査書100点の合計500点満点
最高点 429/500点
最低点 358/500点
※平均点などの発表はありません
◆出題形式
試験時間40分 100点満点
◆大問4題構成
大問1 論説文 5問
大問2 小説文 4問
大問3 漢字 1問
大問4 詩 3問
◆問題の種類(2022年度)
・記述 約93%
・選択肢 0%
・抜き出し 0%
・漢字 約7%
という割合になっています。
2022年度は「フレーズで漢字を書かせる出題」が復活しました。
「オシえるはマナぶのナカばなり」をていねいに大きく1行で書く形式です。
基本的に大問3つ~4つの構成が多く、
「説明的文章」
「文学的文章」
「詩」
の3つが出題されることが多いです。
開成と同様、記述の「練度」で勝負が決まる学校です。
ここからは2022年度の筑波大附属駒場中の出題を通して、どのような戦術で取り組んでいけばよいかを検討していきたいと思います。
今回使用する指標
○…合格には確実に取れてほしい問題
△…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題
大問1 論説文 片渕須直「『アニメーション』を考える」
問1 言い換えの記述 △〜×
傍線部①「別の次元、異なった意味合いのこと」とは具体的にどういうことか答える問題です。
傍線部の前より、
けれど、思えば、漫画家としての手塚さんが描いてこられた“動かない”漫画の絵の中にも、それぞれの登場人物の魂であるとか、生命感を感じることはできていたわけです。しかし、描いた絵をアニメーションとして動かすことで、あらためてある種の生命感を感じさせるのだとしたら、それは「人物の物語的な共感」などということとはまた違った、別の次元、異なった意味合いのことであるべきなのかもしれません。
「動かない」漫画の絵の中から、それぞれの登場人物の魂、生命感を感じることはできています。
しかし、動くアニメーションの絵から、ある種の生命感を感じさせる。それは人物の物語的な共感などとはまた違ったもの。
これは動かない漫画の絵とは別モノで、「別の次元、異なった意味合いのこと」の正体です。
傍線部①の前の内容では正体がはっきりしません。
傍線部の後より、
こうした思いを抱きながら、私はアニメーションを作る仕事にながいこと携わってきました。今では、「まるでほんとうにそこに生きている人物がいるみたいな印象」といっていただける動きを作ることができるようにもなってきたような気がします。ありがたいことです。
アニメーションを作る仕事に長きに渡って関わってきたことで、「まるでほんとうにそこに生きている人物がいるみたいな印象」と言ってもらえるようになっています。
「別の次元、異なった意味合いのこと」の正体は、
・漫画の絵の中で感じるようなそれぞれの登場人物の魂 ではない
・「人物の物語的な共感」ではない
・「まるでほんとうにそこに生きている人物がいるみたいな印象」 の内容
から推定していく必要があります。
私は「動かない漫画の絵と違って、アニメーションは登場人物などが動くこと」から、
【生きている人物がそこにいると感じるような、今までに経験したことのない新鮮さ。】
としました。
△狙いで良いでしょう。
問2 言い換えの記述 ○
傍線部②「ほんとうの動き」として受け止める とはどういうことか答える問題です。
傍線部の前より、
このことは、「人がどのようなメカニズムで動く映像を認知しているのか」ということを理解しようとする知覚心理学の分野と関係していることもわかってきました。アニメーションで大きな動きを見るときよりも、細やかで小さな動きを見るときの方が、人はそれを「ほんとうの動き」として受け止めるのではないか、ということです。(中略)
傍線部の後にすぐ(中略)が挟まれているので、ここの表現を利用して、言い換えていきます。
「アニメーションで大きな動きを見るときよりも、細やかで小さな動きを見るときの方が、人はそれを「ほんとうの動き」として受け止める」を言い換えて、
【動きのある映像で登場人物の大きな動きを見るよりも、細やかで小さな動きを見るときの方が、現実の人間の動きであると認識するということ。】
としました。
こちらは本文の内容をしっかり追えれば解ける問題だと思います。
問3 理由の記述 ○
傍線部③「まるで絵本のような省略の行き届いた絵柄で、日常的な仕草をするときなどの方が、この効果は顕著である」のはなぜか答える問題です。
傍線部の中に「この効果」とあるので、傍線部の前からチェックしていきます。
高畑さんは、「自分が使う『異化効果』という言葉は、本来、演劇の世界でブレヒトが提唱したものとは違うのかもしれないのだけれど、アニメーションの作り手である自分にとっては意義深いもの」といっておられました。「見慣れない未知のもののように感じさせる」のでなく、「見慣れてきてしまったことの意味を再発見させる」のですから、確かに本来の意味合いとは違ってきているのかもしれません。
ここから、効果の正体は「演劇の世界でブレヒトが提唱したものと意味が違う、「高畑さんの異化効果」です。
「高畑さんの異化効果」は、【日常的に見慣れたものを、見慣れない未知のもののように感じさせて、驚きを生み出すこと】です。
あとは傍線部③の「まるで絵本のような省略の行き届いた絵柄で、日常的な仕草をするとき」を言い換えて答案を作成します。
【日常的に見慣れた動作も、線が省略され、単純になった絵柄で描かれれば、見慣れない未知の動作に感じられ、驚く。その意味を改めて確認する気持ちが生じるから。】
としました。
問4(1) 言い換えの記述 ○
「アニメーションがそうした題材にまで手を伸ばす」とはどういうことかについて答える問題です。
傍線部の中に「そうした題材」とあるので、傍線部の前からチェックしていきます。
傍線部の前より、
二〇一八年は、国際的なアニメーション映画祭などのような場では、従来のようなファンタジー的な趣向をこらしたアニメーション映画よりも、まるでドキュメンタリーのような題材を扱う作品が席巻していました。「内戦下のアフガンで生きる女性」「アンゴラ内戦に踏み込んでゆくジャーナリスト」といった映画が、別々の国から同時多発的に生まれ出てきたのです。
そうした題材とは【ドキュメンタリーのような題材】です。主に【実写】で撮られることが多いです。
手を伸ばすとは【アニメで扱わなさそうな題材で、アニメーション作品を制作すること】です。
これらをまとめて、
【主に実写で撮られるドキュメンタリーのような題材を、アニメーション作品として制作すること。】
としました。
問4(2) 理由の記述 △〜×
なぜ「意味のあること」なのかを答える問題です。
傍線部の後より、
今は「アニメーションで描くべきこと」そのものが拡大している時期であるように思います。自分がこれまでやってきたことの意味、これから為していくべきことを、明確に言語化して捉えていきたら、と思います。
文章の後半で多く使われている、「高畑さんの異化効果」は「日常的に見慣れたものを、見慣れない未知のもののように感じさせて、驚きを生み出すこと」を表します。
(1)の「主に実写で撮られるドキュメンタリー」は【日常的に見慣れたもの】を、
「アニメで扱わなさそうな題材で、アニメーション作品を制作すること」は見慣れない【未知のもののように感じさせること
】にあたります。
ここで、なぜ「内戦下のアフガンで生きる女性」「アンゴラ内戦に踏み込んでゆくジャーナリスト」を映画の題材にするのかを推測します。
共通点は「内戦中の場所であること」「女性、ジャーナリストなど戦争に直接関与していない人間であること」「アフガン、アンゴラなど日本から遠く離れた場所であること」
これらをわざわざ映画にする理由。
それは「普段生活していて意識しないような問題について考えを巡らせて、解決するきっかけにしてほしいから」です。
これらをまとめて、
【実写で見慣れた題材を、あえてアニメーション作品として制作をすることで、普段生活していて意識しないような問題について考えを巡らせて、解決するきっかけになるから。】
としました。
推測まで必要ですし、難問であると言えそうです。
大問2 小説文 唯野未歩子「はじめてだらけの夏休み 大人になりたいぼくと、子どもでいたいお父さん」
問1記述 ○
傍線部①「困ったことになった」という言葉を、ぼくは最初どのように捉えているか答える問題です。
傍線部の後より、
「困ったことになった」
と、携帯電話を片手に、お父さんは言った。
これは「父宛てに電話がかかってきて、困ったことになった」という話になっています。
「なにが?」
と、鼻先から顔をあげず、ぼくは訊ねた。
ここからは「自分に関わりのないことであると考えて、自分の夏休みの宿題を進めている様子」が読み取れます。
二つの要素を組み合わせて、
【父の携帯にかかってきた電話なので、自分に関わりのないことだと思い、興味がなかった。】
としました。
△以上は狙える問題なのではないかと思います。
問2 言い換えの記述 ○
傍線部②「しかし同時に、敗者もぼくだった」とはどういうことかについて答える問題です。
傍線部の前より、
「そんな大事な仕事を、どうして代わってもらったりするんだよ」
ぼくは容赦なくストレートをお見舞いした。
ノック・アウト!
カーン、カーン、カーン、と、ゴングが鳴りわたる。
「俺が夏休みをとるためには、ほかにどうしようもなかったんだ」
お父さんはうなだれた。
ぼくの拳はお父さんの顔面にはいり、お父さんはリングに倒れたも同然で、ゲームの勝者はぼくだ。しかし同時に、敗者もぼくだった。
「約束を破ったお父さんへ責めるシーン」を、ボクシングの試合に見立ててたとえています。
「大事な仕事をどうして他人に代わってしまったのか」という発言は父にとって容赦ない内容となっていて、それによりゲームの勝者はぼくだという話になっています。
その発言は父にとって精神的に動揺するもの、いわゆる耳の痛い内容だったということです。
今回は「敗者側」のことのみ拾っていけば良いので、ここは優先順位が下がるでしょう。
ちなみに約束とは「仕事で休みをとって、ぼくと一緒に過ごすこと」を表します。
傍線部の後より、
あんなに忙しかったお父さんが休みをとってくれたこと。休みをとったせいで、大事な仕事を、他人にあげなければならなかったこと。いま、そのひとに迷惑をかけていることも、すべてはぼくのせいだった。ぼくに反論できる余地はない。
とあります。
これが敗者側の中身になります。
セリフ調になっているので、傍線部の前と合わせて答案を作成していきます。
【父が自分との約束のために仕事で休みをとったことで、大事な仕事を他人に代わり、その人に迷惑をかける結果になっているので、父が仕事に戻るのを認めざるを得ないこと。】
としました。
問3 理由の記述 △
傍線部③「お父さんには言いたくない」のはなぜかについて答える問題です。
傍線部の前より、
でも、ぼくは「わかった」とは言えなかった。お母さんには、どんなに嫌だと思ったことでも平気なふりをして、そう言えていたのに。お父さんには言いたくない。
とあります。
「わかった」とは、【父が自分との約束を破って仕事に行くこと」に対して言うということ】です。
また、お母さんには本音を隠した対応もできるのに、お父さんにはそれは「したくない」というのがわかります。
「したくない」より、【父に素直になれない様子】が読み取れると思います。
傍線部の後より、「お父さん」に注目して情報を探していきます。
お父さんが仕事している姿を、ぼくはまだ一度もみたことがない。どんなことをしているのかも。よくわからない(お母さんは何度も話してくれたけれど、お父さんからはまともに聞いたことがない)のに、いきなり手伝うだなんて。
とあります。
【父が仕事をしている姿を見るどころか、直接話をされたことすらない】ことがわかります。
【父が仕事をしている姿を見るどころか、直接話をされたことすらないので、父が自分との約束を破って仕事に行くことを素直に受け入れられないから。】
としました。
問4 理由の記述 △
傍線部④「ふり返るのは恥ずかしい」のがなぜかについて答える問題です。
背景→きっかけ→気持ちの形で書くと良いでしょう。
傍線部の前より、
「葉太、俺の仕事を手伝ってくれないか?」
とお父さんは続けた。
とあります。
これは「仕事を手伝う申し出」を父からされています。
〜想像もつかないけれど、ぼくの鼓動は高鳴り、勝手にわくわくしてきてしまう。
とあります。
【先程の申し出を嬉しく感じている】のだとわかります。
「わかった」
自分の部屋へむかいながら、ふてくされた声をよそおって、さりげなく答えた。
とあります。
【照れ隠しで、ふてくされたように見せている】
この2つから背景を検討すると、「自分が先ほど父にした発言」などがあたるでしょう。
【先程まで父を責めた発言をしていたため、素直に嬉しそうにするのがばつが悪い】などとおければよさそうです。
背景【父から仕事を手伝うように頼まれ、嬉しく感じているが、】
きっかけ【先程まで父を責めていたため、素直に嬉しそうにするのはばつが悪く、】
気持ち【照れ隠しで、ふてくされたように見せているから。】
としました。
要素を答案になるべく多く盛り込むのが難しい問と言えるでしょう。
大問3 漢字 ◎
「オシえるはマナぶのナカばなり」をていねいに大きく1行で書く問題です。
確実に正解しましょう。
大問4 詩 谷川俊太郎「合唱」
問1記述 △
傍線部「僕を苦しめる」とありますが「僕」はどういうことに苦しめられているかについて答える問題です。
昨今のウクライナの様子などについての視点を持っておくと、取り組みやすかったかもしれません。
ポイントとなるのは「遠くの国」「物のこわれる音」などから、【戦争(紛争)】
「会話」から【ニュースの報道】などと思いつくかどうかがポイントでしょうか。
【遠くの国の戦争について伝える報道や、その是非などについての議論がまとまることなく、一日中繰り返されること。】
としました。
問2言い換えの記述 △
傍線部「未来は簡単な数式で予言されそうだった」とはどういうことかについて答える問題です。
傍線部の言い回しから、「未来」をプラス、「簡単な数式」をマイナスと見ています。
問1で「遠くの国の戦争」と読めたかどうかで印象が変わってくると思います。
【可能性にあふれた人々の未来が、核兵器などの軍事力によって決められそうになっていること。】
としました。
問3記述 ×
傍線部「合唱という言葉が妙に僕を魅惑した」とありますが、僕がどういうところに引きつけられているのかについて答える問題です。
「合唱」がどういうものなのかを分析できるかどうかが鍵でしょうか。
【様々な声を持つ人間が、協力してそれを合わせて、調和を生み出し、一つの曲を作り上げるところ。】
としました。
◆まとめ
記述中心、詩の出題、40分の試験時間、小さめの解答欄と、多くの生徒が苦しむ出題形式となっている筑駒。
首都圏最難関国立中にふさわしい出題となっています。
特に、詩の読解については国語科講師でも苦手に感じている人は多いことでしょう。
詩でどんなことをすれば良いのか、高得点を取るには何が必要なのか、どうすれば「守りの点数」に到達するのかなど、
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