受験者平均が18.3点、合格者平均が20.8点(50点満点)だった今年の浦和明の星(第1回)。「理科が難しかった」「何を言っているのか分からなかった」という声をたくさん聞きました。
解いてみると確かにサービス問題も少なく、計算の数値も複雑、後半の実験問題は天体と生物実験が混じっていて難しい…ただ、私は解いていて楽しかったです。
解説を作ったので読んでみてください。大問3は難しいですが面白い問題でしたので、今後どこかの学校が類題を出す可能性もあると思います。
出題
[1]光
いきなり難しめの問題からスタートしました。桜蔭や豊島岡志望で、光の計算もゴリゴリ解いてきた受験生なら対応できたと思いますが、ほとんどの受験生にとっては難問だったでしょう。同じ解答が2回続いたり、複雑な計算もあったりして「まったく手ごたえがない」状態で大問1を終えた受験生も少なくなかったことと思います。
[2]気体
中学受験定番の知識問題と化学計算ではありましたが、数値が複雑で、計算に使う数値が見つけにくい問題もあったため、難度は高めでした。
[1][2]はどちらも、ひねりはない「ストレートに難しい」問題でした。得意な子は得点できたと思います。
[3]渡り鳥・天体
「やった!生物だ。ここでなんとか…」と思った受験生の心をすぐに折ってきました。太陽や星の動きを合わせて考える、難しめの読解問題登場です。ただ、大問の中で後半にいくにつれて少しずつ難度が上がったため、途中までは出来た…という子もいたかな?と思います。平均点を見ると少なそうですが。
はじめの方の知識問題も簡単ではなく、本当にサービス問題の少ない入試問題でした。各大問の前半で少しずつ確実に得点することが重要になったと思われます。
解説
問題の分類
知:知識問題
考:思考問題
計:計算問題
問題のレベル分け
〇:絶対に取りたい
△:この中から半分以上取りたい
×:捨てても可
[1]光
問1 知 考 〇
「鏡を回転させると、反射光は回転させた角度の2倍ずれる」これは光の応用知識としては定番ですが、使いこなせる知識として定着させていた受験生はあまり多くなかったかもしれません。覚えていなくても、角度の問題として解ける問題ではあります。
12×2=24(度)
解答 24(度)
問2(a) 考 △
鏡を回転させていないとき、光源からの光は鏡で反射した後同じ道すじを通って光源に戻ってきています。点Q→点O→光源
光が点Qではね返ったときに鏡を反射させているので、点Qから出た光が図5の鏡に反射しています。これ…問1と同じでは?図1とそっくりですよね?
そうです!ひるまず同じ答えを書きましょう!
解答 24(度)
問2(b) 考 △
今までの問題が導入になっています。
反射光が0.077度ずれているので 鏡の回転×2=0.077 となります。
鏡の回転=0.077÷2=0.0385(度)
解答 0.0385(度)
問2(c) 考 計 △
この鏡は1秒間に800回転
1秒で 360×800(度)回転しています。
ここから0.0385度回転する時間が求められます。
1秒 360×800(度)
□秒 0.0385度
□=0.0385/360×800 (秒)
この時間で 光が点O→点Q→点Oと進んでいる。
つまり
20×2=40(m)進んだことになります。
0.0385/360×800 秒で 40m
よって速さは
40÷(0.0385/360×800)=299220000(m)=299220(km)
指示に従って四捨五入します。
解答 29万9千(km)
光の速さ=秒速30万㎞は知っている受験生がほとんどでしょう。この答えが出たら、自信を持って書き込めたことでしょう。
問2(d) 考 知 〇
光の速さは 空気中<水中(ニュートン) か 空気中>水中(ホイヘンス)か?
知識で正解できた受験生も多かったと思いますが実験も示されています。
「水そうを置いた時の方が、ずれが大きくなりました」
ずれが大きくなった → 鏡が回転した角度が大きい → 時間がかかった → 水の中を進む方が遅い と考えられます。
解答 イ
[2]気体の発生
問1 知 〇
もっとも適当なものなので、答えは1つです。ここは確実に取りたいですね。
磁石につくのは鉄、酸化鉄、ニッケル、コバルトだけです。
解答 エ
問2(a) 知 △
塩酸(塩化水素)+鉄 → 水素+塩化鉄(A)
塩酸(塩化水素)+アルミニウム → 水素+塩化アルミニウム(B)
塩化鉄は黄色、塩化アルミニウムは白です。
解答 エ
問2(b) 計 〇
表1から発生した気体の体積が鉄の重さに比例していることが分かります。
この手の問題は、発生量があるところを境に一定になるものが多いですが、今回は「じゅうぶんな量のうすい塩酸を加えて」いるので金属はすべて反応しています。
つまり、どこの値を用いてもよいのです。
数値が簡単な1gを使ってみます。
表1 より 鉄1g 気体 0.79L
鉄2.5g 気体 □L
0.79×2.5=1.975(L)
小数第2位を四捨五入なので
解答 1.98(L)
問2(c) 計 △
とけたアルミニウムの重さを求めてもよいですが、気体の発生量と固体の重さも比例しているので、気体の発生量から直接固体の重さを求めて構いません。
表2 より アルミニウム1g 気体1.24L 固体4.94g
1.65L 固体 □g
4.94×1.65/1.24=6.573…
小数第3位を四捨五入なので
解答 6.57(g)
問2(d) 計 △
整理してみます。
鉄5g 塩酸□mL 気体3.95L
塩酸10mL 気体2.78L
塩酸10mLがとかした鉄を求めてもよいですが、気体の発生量から鉄5gをとかすのに必要な塩酸を求めた方が少しはやいでしょう。
10×3.95/2.78=14.208…
はじめに10mL入れていて、小数第2位を四捨五入なので 14.2-10=4.2
解答 4.2(mL)
[3]渡り鳥・天体
問1 知 〇
ア.カッコウ → 夏鳥 〇
イ.ムクドリ → 留鳥 ×
ウ.タンチョウ → 冬鳥 日本に渡ってくるのは秋 ×
エ.ハシブトガラス → 留鳥 ×
オ.カワラバト → 留鳥 ×
カ.コハクチョウ → 冬鳥 〇
少し詳しい知識ですが、2つと指定されているので選べるでしょう。
解答 ア、カ
問2 知 〇
夏鳥は春に南からやってきて、春から夏を日本で過ごし、秋に南の地域に渡ります。
解答 ア
夏鳥も冬鳥も春になると北(涼しい地域)へ、秋になると南(暖かい地域)へ渡りをします。
問3 知 考 △
渡りをする理由 → えさのためです。
夏鳥について考えてみます。
冬の日本はえさとなる昆虫が少なくなるので、秋に南の地域に渡るのは分かるでしょう。春の渡りは少し悩むところですね。そのまま南の地域に残ってもえさとなる昆虫は多そうです。実際、昆虫はたくさんいるのですが、それを狙うライバルも多いのです。そのため、南の地域ではひなを育てるために十分なえさを集めることが難しくなり、日本に渡ってくるのです。
解答 オ
問4(a) 考 △
太陽が南東 → 西北西
太陽が南南西 → 北
なので、太陽から反時計回りに157.5度の方向を向くことになります。
太陽が西南西なので → 北東になります。
解答 北東
図を利用して考えればできますね!
問4(b) △
実験1を行った日、太陽がしずむとき、西の地平線近くに見える ので
↓ ↓ ↓
春 18時頃 西 に見える星座になります。
日の入りの頃西 → 太陽と同じ方向、と考えてもよいでしょう。
解答 うお(座)
問4(c) 考 △
太陽は図のように1時間に15度ずつ西に動いていきます。
常に西北西の方角を向いた、ということは
- 太陽が南東→西北西 157.5度
- 3時間後太陽が南→西北西 112.5度
太陽を固定して考えると
3時間で太陽が45度動くと45度太陽に近づくように向きを変えています。
→ 1時間で15度ですね。
また、太陽に近づくようにずれているので反時計回りです。
解答 ウ
問5(a) 考 △
北極星の位置を考える。
午後8時から午前2時までなので、北極星を中心に6時間:90度動いているはずです。
まず、午後8時と午前2時の真ん中に線を引きそれぞれと45度になるような点を探します。
問5(b) 考 △
北極星を探します。
図の矢印はすべて北北東を指しています。空を見ているので東西が逆になっています。星座早見と同じですね。
星空が動いても常に北北東を向いていることが分かります。
よって、北に向かう季節 → 春、と判断できます。
解答 春
問5(c) 考 △
春から半年後なので、秋 → 反対の向きを向くと考えられます。→ 南南西
解答 オ
ここで、空を見ているので東西が逆、が効いてきました。楽しくなってきましたね!
問5(d)① 考 ×
図6~8の方位の見方で悩むところです。
A円の外側についている点は方位を表しているのでしょうか。
Bそれとも星座早見のように図の位置が方位になっているのでしょうか。
Aだとすると、オリオン座は西南西にあるので、オリオン座が南中したのはこの図(午後8時)の5~6時間前になるので午後2~3時になります。
Bだとすると南-北極星-オリオン座が45度くらいになっているので約3時間前 → 午後5~6時になります。
わたしはアとイ、どちらも正解にしたいところですが前後の問題を見るとアを解答として問題が作られている気はします。
解答 ア(イ)
問9(d)② 経験あり △ 経験なし ×
実験5のアケノホシコ(渡り経験あり)は午後8時の星空のときに実験3と同じ=北北東に向いたので、星空が変わっても北北東を向くことが分かります。
よって、午後10時の星空を見せても北北東を向くと考えられます。
実験6・7から、渡り経験のないアケノホシコはベテルギウスから反時計回りに22.5度ずれた方角を向きます。
図6が午後8時なので、午後10時にベテルギウスはほぼ西にきます。ここから22.5度反時計回りにずらした方角は西北西になります。
解答 経験あり ア 経験なし キ
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