サカセルコラム

桜蔭中の国語分析(2022年) Column

過去問分析

桜蔭中の国語分析(2022年)

2022.11.08

◆各種データ

受験者平均 非公表
合格者平均 非公表
想定合格点 7割程度

◆出題形式

試験時間 50分 100点満点

◆大問2題構成

◆問題の種類
漢字・語彙
記述
空欄補充

今回使用する指標

…合格には確実に取れてほしい問題
…合格の勝負所・差がつく問題
×…落としても合否には大きく影響しない問題

解答例はこちら

大問1 森田真央 「僕たちはどう生きるか 言葉と思考のエコロジカルな転回」

問1 〇

漢字の出題です。

丁寧にしっかり書きましょう。

送り仮名に注意が必要です。

問2 〇

慣用句の問題です。

まず、この慣用句がどういう意味なのかを空欄の前後から読み取ります。

すると、直前に「感動」と「悲しみ」という2つの感情が〇〇合わせであると分かりますね。

そして、身体の一部というヒントから答えを考えましょう。

問3 〇

四字熟語の問題です。

あらゆる人々という意味の四字熟語を入れます。

文脈はあまりヒントになりませんので、知識勝負になったでしょう。

十人十色は間違えやすいミスなので気をつけましょう。十人十色にはあらゆる人々という意味はなく、人の多様性について述べている四字熟語です。

問4 △

心情の記述です。

◇方針◇

「何について」…きっかけ
「どのような気持ち」…気持ち 


主要な要素と考えて書いていき、桜蔭の記述なので、気持ちの前に「意味づけ」も可能であれば入れましょう。

まず、気持ちがプラスの気持ちであるという解答イメージが作れますね。これは筆者が文章全体を通して、食事とは凄いものであるということを言っていることから読み取れますね。

【きっかけ】

では、きっかけを探しに行きます。

筆者は何をきっかけに食事に対してプラスの感情を抱いたのでしょうか。

傍線部①を読むと、「緻密に調べてみると」とあるので、食事に関して緻密に調べたことがきっかけだと分かります。ではもう少し具体的に考えます。

傍線部①の前後を調べていくと食事に関して緻密に調べて分かったことが前に書いてありますね。しかし、傍線部①の前の部分は具体例が書かれており、要素としてはふさわしいとは言えません。もう少しまとまっている抽象的な部分を探します。

すると、傍線部①の11行前に「緻密に調べてみると、食べることは、文字通り自分の体の一部が、食べられたものに置き換わっていく過程であることがわかったのだ。」とありますね。この分かった結果が、きっかけとなります。

【気持ち】

では、次に気持ちを考えます。

きっかけと通して筆者がどのように感じたのでしょうか。

傍線部②に「愉快」とあるので、興味深いや面白い、空欄Aの2行前の感動とあるので、感動や感銘などが書けると良いです。

【意味づけ】

ここまででも充分記述として形となりますが、可能であればもう1つ気持ちの前に要素をいれましょう。

傍線部①に「想像以上にシュール(非日常的)なこと」とありますので、この部分を要素とします。

筆者は前述のきっかけを通して、想像以上に非日常を感じていることから、「驚きや新鮮さ」を感じていることが分かります。

以上の3つの要素をまとめて書きます。順番としては、きっかけ→意味づけ→気持ち、で書いていきましょう。具体と抽象の読み分けができるかどうかで差がついたと思います。可能な限り抽象から要素を拾う意識を持ちましょう。

問5 △

◇方針◇

理由の記述です。心情の記述として書いても良いでしょう。

筆者が食事を愉快で壮大だと考える理由を本文から探します。

また、桜蔭の特徴として、具体と抽象をバランスよく書いていきましょう。

まず、傍線部②の後を探しに行きます。(前は食事を緻密に調べた結果であり、問4の範囲でもあるので優先度は低いです。)

すると、

傍線部②の一行後から18行後まで「僕は自宅で食事をするとき~久しぶりに再会した。」

が傍線部②に関しての具体的な内容であり、

その後の19行後から25行後まで「これはお母さん~悲しみと背中合わせなのである。」

が抽象として書かれていますね。特に抽象である、

空欄Aの2行前の「感動としみじみとした喜び」

の部分が傍線部②の「愉快」「壮大」と意味的に近いものであることからもこの部分が抽象、具体、抽象のサンドイッチ構造になっていることに気がつけますね。

では、記述の要素を拾っていきましょう。

愉快さや壮大さを感じる理由を抽象部分から探していきます。

すると、空欄Aの3行前に

「何気ない食事の場面から~喜びを覚える」

とあり、これが壮大さに繋がると分かります。しかし、文字数として少なすぎるのと、「あらゆるスケール」「この世の生態学的な豊かさ」など抽象的すぎる表現があるので、ここをもう少し分かりやすく説明していきます。

では、分かりやすく説明するための要素として、具体部分から要素を探します。

すると、

傍線部②の11・12行前「それぞれが別の進化の来歴~共演している」
13行前「少なくとも35億年前~異なる表現である」
17・18行前「僕たちは何億年も前に~久しぶりに再会した」

と前述した抽象部分のより具体的な内容が見つけられます。

あとは、以上の要素を比喩表現などに注意してまとめていきましょう。(13行前と17行前の要素は内容がほぼ一緒ですので、2回書く必要はありません。) この記述では、抽象の部分だけでは曖昧な記述になってしまうのである程度具体の内容を盛り込んでいき、バランスをとる必要がありました。その部分で差が出たのではないでしょうか。

問6 △

◇方針◇

傍線部③を経験していく中で、子供たちがどのような成長を遂げるかという、「その後の展開」の記述です。

注意点としては、現代の社会についても触れないといけない点に気をつけましょう。

では、探していきましょう。

傍線部③の直後から、筆者の体験談が綴られており、その後に体験(具体)に対する意見(抽象)が書かれていると予測できますね。そして、そのまま読み進めていくと、傍線部③の8行後から筆者の意見(抽象)が出てきます。ここから、「成長」を読み取れる内容を探していきます。

すると、

傍線部③の8行後から「(人間は)自然から圧倒的な富を与えられていた~この経験が、人間の生活の前提にあった。」「物を贈り合う」「(こんなにもらってしまった)という、驚きと感謝の経験」

と成長に繋がる要素を発見できますね。

次に、現代社会についてですが、これは傍線部③の直後に書いてあるので見つけやすかったのではないでしょうか。

傍線部③の直後に「自然の圧倒的に潤沢な富を~商品に変えてしまう」

とありますので、ここを使います。

以上をまとめていきましょう。まとめる時の気を付けたい点として、要素の順番があります。今回の場合は、最初にマイナスの内容である現代社会について書きましょう。次に成長に絡むプラスの部分ですが、発生順で考えると分かりやすいです。今回ですと、

「驚きと感謝の経験」
→「自然から富をもらっていたことを知る」
→「物を贈り合う精神が培われる」

という発生の順序でまとめていくときれいにまとめられます。

今回の問題では、設問を読んだ段階で現代社会がマイナスで、筆者の意見がプラスであるという意識が持てると非常に良かったですね。二元論の構造(対比構造)を理解し、マクロの視点で文章が読めていると深い理解ができていると言えるでしょう。

大問2 高柳克弘 「そらのことばが降ってくる 保健室の俳句会」

問1 〇

少し変わった問題ですが、漢字の問題です。丁寧に書きましょう。

問2 〇

空欄補充です。ひまわりを形容するのに適する単語を考えていれましょう。

大きい、黄色、立派、などが挙げられます。

問3 〇

慣用句の問題です。

北村先生の言動と、○〇を出す、から考えれば難しくないでしょう。

問4

(1) △

◇方針◇

言い換えの記述です。

傍線部①の句の言い換えを考えましょう。

ヒントとして、傍線部の後にハセオがこの句について簡単な解説をしています。

これを足掛かりとします。

傍線部①の1・2行後
「死んじゃった友だち」「コマがばちばちーって戦うような二人」
→ 生前は切磋琢磨しあった好敵手であった 

「ライバルに贈った」
→ 好敵手に対しての尊敬・追悼

以上のような形で言い換えができると良いと思います。

言い換えという方針がしっかり作れていたかが勝負の分かれ目だったでしょう。

(2) △

◇方針◇

心情の記述です。「背景」「きっかけ」「意味付け」「気持ち」といった要素を考えましょう。また、傍線部①と比べて、とあるのでそこも忘れずに要素として考えましょう。

【きっかけ】

「ぜんぜんだめだよな」このセリフのきっかけを考えます。

自分を駄目と認識するきっかけとなったのは、ソラのコンプレックスであった黒子を俳句の題材としてしまい、傷つけたことが原因と言えるでしょう。

【背景】

次に背景ですが、

傍線部②の直前に「こういうたとえができるのって、カッコいいと思うんだよな」

とあることから、傍線部①の俳句のような人間関係に憧れを抱いていることと、傍線部①のような俳句を作りたいということが分かります。

さらに、

傍線部③の8~10行後に「おれ、ずっと俳句やってきたけど~とかって……」

とあり、俳句を馬鹿にしなかったソラに対して好感を持っていることも背景情報として入れたいです。

【気持ち】

上記の内容から、謝罪の気持ちと自分の俳句の力量のなさに対する情けな、などの心情が読み取れます。これは

傍線部③の6行前にソラが「ソラに謝っているのか、自分の力量不足に嘆いているのか。」

と感じている部分からも読み取れますね。

【意味付け】

最後に意味付けですが、背景であった自分の理想と、きっかけであった現実との乖離や落差を感じているといえるでしょう。ここから、気持ちの情けなさに繋げると良いと思います。

この問いはオーソドックスな心情の記述に傍線部①の俳句との対比を盛り込むという形でした。心情自体はかなり普通の記述でしたので、方針は立ちやすかったと思います。

問5 △

◇方針◇

心情の記述です。「背景」「きっかけ」「気持ち」を中心に要素を考えていきましょう。「出るのを待っていた」という文言もしっかりと意識して要素に盛り込みましょう。

【きっかけ】

「もう、いいよ」という許しの言葉が出てきたきっかけを探します。これは直前のハセオの謝罪ということで良いでしょう。

【背景】

傍線部③の直後に「ハセオが、悪意で、ああいう句を~ということを」

とあるので、元々半分ほど許していたということが分かります。しかし、友人との交友が薄かったと思われる主人公は、仲直りの仕方が分からなかった、と考えられます。上記の2点は

傍線部③の「出るのを待っていた」

という内容からも読み取れますね。

【意味付け】

比較的分かりやすかったと思います。

傍線部③の3行前に「ソラははっとした。そうか、僕にとっては、ハセオはもう友だちなんだ。」

という内容を要素とします。これは無理に意味付けとせずに、普通に【気持ち】として書いても良いでしょう。

【気持ち】

上記の内容から、「友人と仲直りが出来て嬉しい、安心、ほっとしている」などが挙げられますね。

以上を

「背景」
→「きっかけ」
→「意味づけ」
→「気持ち」

という形でまとめていきましょう。背景と意味付けの位置を入れ替えても書くことは可能です。しっかりと要素を入れ込めているかを確認しましょう。

問6 △

◇方針◇

心情の記述です。比較的オーソドックスであると思います。問5が解けているとかなり楽だったのではないでしょうか。「背景」→「きっかけ」→「気持ち」を軸として書いていきましょう。

【きっかけ】

ひまわりの種をハセオからもらったこと、きっかけはこれで良いでしょう。

【背景】

ハセオはソラにとって大切な友人であると文章から分かりますね。特にいじめらていたソラにとっては唯一の友人といってよいでしょう。そして、そんな友人であるハセオが仲直りするためにわざわざ持ってきてくれたひまわりの種も大切なものであると分かります。

【気持ち】

上記から、このひまわりの種はソラにとって大切なものであり、宝物であると考えられることから、

「友情の証であるひまわりの種を大切にしたい、かけがえのないものだと思っている」

などが良いでしょう。

種という言葉が二人のこれからの暗示となっており、「友情を育む」といった、未来の話に関しても読み取れなくはないですが、基本的に桜蔭ではプラスアルファを書かせる場合は設問の中でヒントが書かれているので、この場合はプラスアルファを書かなくてよいと思います。

上記をまとめていきましょう。

大問2のなかでもかなり書きやすい記述だったと思います。また、問6を解いたことで問5が書けた生徒さんもいるのではないかと思います。

総括

桜蔭中らしい良い問題だったと思います。

大問1では具体と抽象の見分けが書き分けが問われており、国語の説明的文章におけるお子様の能力の差がよく出る良問でした。日頃から具体と抽象の見分けの練習が出来ていると良いですね。

大問2では背景の情報と設問のちょっとしたヒントから推測をしていく必要があり、要素を的確に拾うことと、その拾った情報を踏まえてプラスアルファを書けるかが問われていました。

しっかりと日頃から正しい読み方の練習を積んでいくことが差につながった入試でした。


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松田 浩志

この記事を書いたのは...

松田 浩志

自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。

大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。

現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。

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