サカセルコラム

東邦大東邦中の算数分析(2025年 前期) Column

過去問分析

東邦大東邦中の算数分析(2025年 前期)

2025.04.01

受験者平均点 54.8点
想定合格点  60 点

千葉私立御三家の一角の東邦大東邦中。
充実した施設で実体験を通して理解を深める理系教育に定評があり、医学部進学率も高い人気進学校です。
生徒の自主性を尊重した自由な校風でも知られ、学校から近いとは言えない世田谷区に位置する自律学習サカセルの生徒たちも、進学先候補として具体的に視野に入れています。

また前期の試験日は毎年1月21日。
都内トップ校を目指す受験生の前哨戦という側面も強く、2000人を超える優秀層がチャレンジしています。
出題は100点ずつの均等配点で、受験勉強で培ってきた基礎学力の習熟度が問われます
他の千葉私立御三家の市川、渋谷幕張と比べると比較的取り組みやすい出題で、準備の負担が小さいことからも「受けやすい」と評されることも少なくはありません。
もっとも準備をしやすいから合格しやすいといったことは一切ない、学力がそのまま合否につながりやすい難関校です。

ここからは2025年の東邦大東邦中の前期の算数の入試問題を通して、どのように取り組めば合格ラインを上回ることが出来るのかを見ていきましょう。

〇:合格のためには必ず正解したい
△:出来る生徒と出来ない生徒の差がつく
×:正解できる生徒は少数、捨ててしまっても差し支えない

として小問ごとに見ていきます。

解答例はこちら

大問1

(1) 〇
基本的な計算問題です。
どうすれば計算負担が減るのか、分数⇔小数の換算を意識しましょう。
最後は23で約分できるので、解いていても安心できたのではないでしょうか。

(2) 〇
分数・小数の逆算です。
今回は分数で統一して処理したほうが簡単でしょう。
最後に代入して正解を確信できれば完璧です。

(3) 〇
「簡便法」の基本問題です。
6×7、7×8…のように分母は連続する2数になっているので、検証における注意点も少なく、東邦大東邦を目指す生徒にとっては易しいですね。

大問2

(1) 〇
食塩水の典型題です。
面積図やてんびんで考えても良いですが、この程度なら減った食塩の量に注目して式で処理すれば充分でしょう。

(2) 〇
倍数の基本問題です。
解答例のようにベン図で処理しても良いですし、15までの規則性を利用して解いても良いでしょう。

(3) △
単位を明確に意識して、時速と燃費の関係性を捉えましょう。
複数の単位を同時に考える問題を苦手にする生徒は多いですが、この問題では「AとBがそれぞれ1時間に何L消費するか」という形に整理できれば、決して難しくはありません。

(4) △
発想系の平面図形の問題です。
頂点Cから辺ABに垂線を引けば、△ABCを正三角形の半分と直角二等辺三角形という基本図形に分けることが出来ます。
その後の「□の長さは求まらないが、□×□なら求められる」は中学受験の定番となる発想ですね。

(5) △
計算量が多くなりがちな「回転体の表面積」です。
本来は「上下」「上側面」「上内側」「下側面」「下内側」などに分けて丁寧に処理する必要がありますが、今回は「上側面」と「下内側」が大きな円柱の側面積で、「上内側」と「下側面」が大きな円錐の側面積になっているので、若干ながら計算負担は小さめでした。

大問3

(1) 〇
平方数を数表で捉える典型題です。
「偶数の平方数」と「奇数の平方数」で分けて考えましょう。
今回は≪1,12≫=144に注目するだけで、すぐに正解できますね。

(2) 〇
2030に近い平方数は45×45=2025であることは本年度の受験生にとっては常識でしょう。
あとは≪45,1≫=2025,≪46,1≫=2026…となることから、ズレが生じないよう丁寧に調べましょう。
この大問は易しめでしたね。

大問4

(1) △
条件がやや多い水槽と変化のグラフの問題です。
まずは最初の4秒に注目して1秒あたりに入る水の量を求め、次におもり①の外側が満水になる時間を求め、それからおもり①の穴の箇所の体積を求めましょう。
与えられている情報のどこを手掛かりにしていくのか論理立てて考えていく点で、やや難度は高めです。

(2) 〇
(1) よりもむしろ易しいです。
1秒間に入る水の量が求まっていたら、29.5秒後からあと2cm水面が上がるのに要する時間を求めるだけです。
(1) で混乱しても諦めずにチャレンジしたい問題でした。

大問5

(1) 〇
処理量が多くなりがちな3つの点の移動ですが(1)は易しいです。
XYの2点の出会いの旅人算として簡単に正解できますね。

(2) △
「複数の点が行ったり来たり」はダイヤグラムで整理することが定番です。
Xは12秒、Yは8秒、Zは6秒が周期になっているので、最小公倍数の24秒までを丁寧に追いましょう。
線分図で状況ごとに整理しようと思うと処理量が多く苦戦は必至ですが「ダイヤグラムで解こう!」と判断が出来れば正解に至ることが出来たはず。
様々な解法を使い分けられるよう、普段から練習しておきましょう。

(3) △
(2)でダイヤグラムを用いて整理できていたら、1回目が18秒後であとは24秒周期になることが分かります。
この大問は解法の選択次第で大きな差がついたと言えそうです。

大問6

(1) △
「立体図形上の最短距離は、展開図を描いて直線」という典型発想を用いますが、正八面体の展開図にあまり馴染みがない受験生も少なくはないでしょう。
AからBまで指定された経路で最短となるように正三角形をつなげた展開図を描くと、解答例のような相似を容易に見つけることが可能です。
類題の経験の有無で差がついたと言えそうです。

(2) △
(1)で正しく図が描けていたら、三角形の面積比として処理が出来ました。
描けていなければ、残念ながらどうしようもありません。

(3) △
(1)と同じように展開図を描いてAからDまで指定された経路での最短距離の状況を把握しましょう。
最終的には□ABFD(=□BCDE)と△AYQの面積の関係を捉える問題と言い換えることが可能です。
捉え方がやや難しいものの計算量は多くはないので(1)(2)が出来ていたら勝負したい問題でした。

総論

このような出題となった2025年前期の東邦大東邦中の算数の平均点は54.8点と、ここ3年の65点強と比べて2問ほど難しい出題となりました。
平均点が下がった要因は、大問5と大問6の難度が例年よりも高かったことが想定されます。
大問5(2)(3)のダイヤグラムによる整理も大問6(1)(2)(3)の正八面体の展開図も、最難関校を目指す受験生にとっては必須知識ですが、東邦大東邦中にチャレンジする層の生徒にとっては、そもそも馴染みが薄かったかもしれません。

合格の目安としては東邦大東邦中の算数としては標準的なレベルだった大問4までで3問ミスにおさえて55点/70点、大問5以降で5点/30点で、計60点/100点といったところでしょうか。
算数の高度な知識まで持ち合わせている生徒なら、平均点を大きく上回る高得点も期待できた出題でした。

2026年以降に東邦大東邦中への合格を目指す受験生にとっても、2025年前期の出題は参考になる難度や構成だと言えるでしょう。
中学受験の典型題が中心になる東邦大東邦中は千葉私立御三家の中では最も努力が報われやすい学校で、対策を重ねることが算数の基礎学力の涵養にもつながります。
まずは日々の学習から頑張っていきましょう!

東邦大東邦中の算数分析(2018年 前期)はこちら


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三宅 貴之

この記事を書いたのは...

三宅 貴之

自律学習サカセル代表。
東大寺学園から東京大学に進み、以降は大手集団塾や個別指導塾で講師としてキャリアを積む。
講師としてだけではなく新規事業の立ち上げ→運営→収益化のプロセスも経験し、満を持して自律学習サカセルを創設。
社長としても10年目。

「新しいことを知る」ことを楽しめる好奇心で、その昔、高校生クイズで全国大会の準決勝に進出したことも。

プロ野球、読書、靴、腕時計、ビール、筋トレ…
色々と興味は尽きない中、一番の趣味は、やっぱり仕事。

卒業生との語らいや、娘の成長を日々の楽しみに、
さぁ今日も1日がんばります!

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