サカセルコラム

早稲田中の国語分析(2025年) Column

過去問分析

早稲田中の国語分析(2025年)

2025.06.18

2025年度の早稲田中の出題傾向は例年通りでした。
文章のレベルは高く、読みにくい部分もあったと思います。
ただ、問題の方はそれほど難しくなかったので、辛抱強く文章を読みきれれば勝機があったかと思います。
合格者平均点は43.9点と少し高く、国語が苦手なお子様にとっては厳しく、また1つのケアレスミスが命取りになる試験だったと言えます。

●出題形式
試験時間 50分 60点
●大問2題構成
物語文/説明文

●今年度の問題の種類
記述 空欄補充   20%程度
記述 通常     15%程度
選択肢       40%程度
抜き出し      15%程度
漢字        10%程度

今回使用する指標
○ 確実に取れて欲しい問題
△ 合格の勝負所、差がつく問題
× 落としても合否には大きく影響しない問題

図を載せています。
見ながら解説を読んでいただくと、より理解が深まると思います。

大問1 見つけたいのは、光。 (飛鳥井千砂)

◇ 今回押さえておきたいキーワード ◇

一般化の罠

早すぎる結論

例:数匹の黒猫を見ただけで「猫はみんな黒い」と考える

レッテル貼り

一面的な烙印/決め付け

例:一度失敗した人を「ダメなやつ」と決めつける

ステレオタイプ

固定化された類型/固定観念

例:「〇〇地方の人はみんなおおらかだ」というイメージ

問1 記述 △

ほぼ抜き出しの記述です。
AとBの問題合わせて75%の部分点は最低でも取りたいです。
最初の問題で、かつ冒頭に傍線部がありますが、根拠は文章の中盤にあり、ある程度文章を読んでいないと解けない作りになっています。パラグラフリーディングや設問を先に読みながら解く手法を採用している生徒はいきなり振り落とされます。上記の読み方でしか解けない状態は読解力不足の現れでもありますので、採用している場合は、今すぐ変更することをおすすめします。(ちなみに早稲田系の学校は高校受験を含め、この手の出題を時々します。)

「違和感がある」の言い換えです。
空欄補充形式になっているので、前後を読んで考えていきます。

A
ヒント1 → 違和感の内容が書いてある部分
ヒント2 → 「茗子は〜ことについて謝ったが」とあるので、茗子が謝った内容が書いてある部分

以上のヒントより、1ページの下段を確認します。
「はい。妊娠してる人に迷惑って言うのは〜」のセリフが根拠となります。
直前に「ちゃんと説明できるかわからないですけど」「でも、『悪い』の方向性が違う気がして」とあるので、見つけやすいかと思います。

【妊婦に対して迷惑と言った/妊娠している人に迷惑と言った】

ただ、合格していく生徒の大半は「読んでいる時点で、違和感の内容を理解できる読解力は持っている」という点には注意しましょう。「上手に探せる」という状態ではなく、「文章を読んだ段階で内容を把握している」状態が望ましいです。

B
ヒント1 → 亜希の言いたいこと、結論部分
ヒント2 → 「それに対して亜希は」とあるので、Aの解答の対比
ヒント3 → 「謝るべき」とあるので、亜希が茗子に謝って欲しいこと

ヒント1より、亜希の言いたいことが書いてある部分を確認します。
今回の文章では2箇所あります。
傍線部4の直前「だから私〜」と、傍線部5の前「亜希ちゃんが言いたいのは〜」の部分です。
ここは文章を読んでいく段階でチェックをつけておきましょう。

次にヒント2.3より、傍線部4の直前の内容が解答の要素になると分かります。

【妊婦や育児中の人達全体を迷惑と思っている/妊婦や育児中の人達全体に攻撃的な】

ヒント2を重要視するのであれば「迷惑と思っている」がよく、ヒント3を重要視するのであれば「攻撃的な」が良いでしょう。
自分が受験生であったら、前者を書きます。

問2 選択肢 ○

正答率は高い方かと思います。
傍線部2の理由の問題です。
お馴染みの「はき気」を利用します。「背景」「きっかけ」「気持ち」です。
また、文章を読む段階で亜希の人物像が拾えていれば非常に簡単な問題でした。

ヒント1 → 1ページの下段の初め「私は美津子さんみたいに、気持ちを〜」
ヒント2 → 傍線部2の少し前「そうそう、そうです!」
ヒント3 → 3ページ上段の真ん中「ああー!そうですよ!」

上記の内容から亜希の人物像は「自分の気持ちを言葉にするのが苦手/言語化するのが苦手」であると分かります。
以上から【ウ】が正解だと分かります。

ア 「自分の気持ちを〜」が不適切。文章中に亜希が感情的に怒っている描写はありません。
  人物像的に感情的に怒るとは考えにくいです。

イ 「茗子の気持ちを汲み取って〜」が不適切。
  ここでの「相手の気持ちを汲み取る」は「相手のことを傷つけない/刺激しないように」とほぼ同義です。
  しかし、この後の会話から亜希は茗子のことを真っ向から否定しています。

エ また、「発言を茗子が繰り返した」ことから「言葉を受け入れられない」ことに因果関係はありません。
  ここに因果関係を感じてしまうのは茗子の内面が分かる読者であるからです。
  亜希視点で考えた場合、因果関係は感じないと考えるのが自然です。

問3 選択肢 ○

指示語の問題です。
指示語が指す内容をしっかり拾い、選択肢を選びましょう。

「指示語の指示内容は原則直前に書いてある」という基本に則って直前を読んでいくと「派遣だったので〜派遣としても切られました」とあります。
これが「それ」の指示内容に当たります。
ここでの「切る」は「仕事をクビになる/退職させられる」という意味です。
以上から【イ】が選べます。

ちなみに傍線部直後の「出るところ出た方が良い」とは「裁判所に訴え出る」という意味です。

問4 選択肢 △

人物像の問題です。
亜希がどういう状況に置かれているのかを把握しましょう。
読む段階で亜希の人物像が取れていれば、解きやすかったと思います。
「ふさわしくない」ものを選ぶ問題なので、

1. 選択肢を確認する
2. 怪しいものをチェック
3. 本文で確認

という流れで解きましょう。

ア 2ページ下段の一行目に書いてあります。
イ 「美津子を通してしか言えない」が不適切。本文全体を通して、自分の言葉で茗子に話しています。
ウ 傍線部4のセリフで述べています。
エ 「亜希が若い女子」と「茗子に見下されている」が不適切。傍線部6の2行後に「亜希ちゃん若く見える」とありますが、実年齢が「若い」とは書かれていません。また、女子とは未成年の女性を指すのが一般的です。さらに、亜希が「流せない」と言っているのは「茗子に亜希が見下されているから」ではなく、「茗子が妊娠する人や育児中の人全体を見下しているから」です。
オ 適切。傍線部3の前後を確認しましょう。

以上より【イ・エ】が正解。

問5 抜き出し △

「同じこと」の言い換えを、空欄補充形式の抜き出しで答える問題です。
言い換えを意識して解いていきましょう。

抜き出し問題は
1. キーワードチェック(探す上で絞り込みができる言葉/具体的な言葉)
2. 大きく範囲を決める
3. 細かく探す

以上の手順で解いていくのが最善です。

まず初めに「同じこと」言い換えを考えます。
(この問題を難しいと感じる場合は、この言い換え内容を確認する作業が出来ていない可能性が高いです。)
傍線部5の一文を読むと「私も同じこと、考えたことあるよ」とあり、直前にその内容が書いてあると分かります。
直前を確認していくと「亜希ちゃんが言いたいのは〜一緒にして欲しくない、って」とあり、ここから「前野さんが酷い人なのは、妊娠や出産に問題のせいではなく、そもそも前野さんが酷い人だからである」という趣旨が読み取れます。
こういった「一部の人を見て、その属性をもつ全ての人を同じだと考えること」を「一般化の罠」と言います。
また、「ある人が持つ属性でその人間性などを判断すること」を「レッテル貼り」や「ステレオタイプ/固定観念」と言います。
今回の話では「妊婦or子連れという属性をもつ人」が「マナーが悪かった」のを見て、「全ての妊婦や子連れも同様にマナーが悪いんだ」と思い込むことが「一般化の罠」です。
そして、妊婦や子連れという属性の人を見るたびに、「この人もどうせマナーが悪いんだ」と思い込むことが「レッテル貼り」や「ステレオタイプ/固定観念」となります。

以上からキーワードは「妊娠、出産、(前野さんの)問題の原因、(前野さん)自身の問題」と分かります。

次に、大きな範囲ですが、この「一般化の罠」について書かれている部分を確認します。
図を参照してください。
2ページの下段〜3ページの上段です。

最後に、この範囲内で文字数に合う内容を探していきます。

以上より【妊婦や子連れ】【もともと偉そうで感じが悪い人】が解答になります。

問6 選択肢 ○

茗子が気がついことは何か?という選択肢問題です。
設問の「気づきましたか」という文言から文章全体の主題に当たる問題だと察知できた方は高いレベルの読解力を有していると言えます。
先ほど同様に「ふさわしくない」ものを選ぶ問題なので、

1. 選択肢を確認する
2. 怪しいものをチェック
3. 本文で確認

という流れで解きましょう。

ア 3ページ下段の真ん中に「止めて欲しい〜確実にあった、と思う。」とあり、その後に体験談が書いてあります。
イウ 傍線部6の直後に「今の茗子は、あの失礼な店長〜まさか、そんな。」とあります。
エ 「わずかながらある」が不適切。わずかではないですね。

以上より、【エ】が正解だと分かります。

大問2 生きることは頼ること
   「自己責任」から「弱い責任」へ (戸谷洋志)

大問2:重要点の構造分析

1. 導入:現代社会における道徳の重要性

  • 道徳は法律よりも優先されるものである。
  • 我々の判断根拠は道徳にある。

2. 展開1:ナチスドイツでの出来事を通して、筆者の言いたいこと

  • ナチスドイツでは道徳が慣習とされ、権力者の都合の良いように変えられるものになった。
  • ナチスドイツでの責任観と我々現代の日本人の責任観の違いと逆説。
  • 現代社会における自己責任論に対する批判。

3. 展開2:思考の本質と育成

  • 「思考」は答えのない問いを多角的に吟味する営み。
  • ハンナ・アーレントの思想を引き合いに出し、「自己との対話」としての思考を説明。

4. 展開3:思考の条件としての「友情」

  • 思考の質は、他者(友達)との対話経験に左右される。
  • 豊かな対話経験がなければ、深く思考し、批判的に吟味することが困難になる。
  • ナチスドイツにおける密告制度が「友情」を奪い、思考の放棄に繋がった可能性。

5. 結論:なし

  • 文章の最後は結論ではない形で終わっているので注意しよう!


問1 漢字 △

丁寧に書きましょう。
独創の「創」を「想」と書いてしまわないように注意しましょう。

問2 選択肢 △

理由の選択肢問題です。
根拠を本文から拾い、選びましょう。

傍線部1の直後に「なぜなら」とあるので、その後の文章が理由だと分かります。
以上から選びましょう。【イ】

ア 「人々が正しいと判断した」が不適切。
  本文には「思考の欠如」「正しいか否かを考えることもなく」とあり、「判断」していないと言えます。
ウ 「比べて」が不適切。
  「ナチスドイツの価値観」も「民主主義的な価値観」も、どちらも短期間で受け入れられています。
エ 「同調を得られる可能性が低い」が不適切。
  同調が得られないのであれば、ナチスドイツも同調を得られなかったはずですね。
オ 「ナチスドイツ時代の価値観もいまだに人々の同調を得ているから」が不適切。
  書いていません。

問3 選択肢 ○

「思考の欠如によって生じる物事」の具体例を考える選択肢問題です。
思考の欠如は筆者の立場ではマイナスの内容です。
それを踏まえて考えていきましょう。
ふさわしくないとあるので、前述の解法を使って考えましょう。

ア 「服従」が適切。
イ 「付和雷同」は「自分の意見がなく、周りに合わせる」という意味なので適切。
ウ 他者との交流は図の紫色の箇所を読むと、プラス内容だと分かります。不適切。
エ 6ページを要約すると「思考なし」=「自己とする対話なし」→「友情なし」→「孤立化」→「疑心暗鬼」
  →「友情関係破綻」以上より適切。
オ 傍線部aから傍線部1までを読むと「道徳性の崩壊」に関しての説明があります。(図参照)
  そして、傍線部1の直前に「だからそうした〜にあるのだ」とあるので、適切。

以上より、【ウ】が正解です。

問4 選択肢 △

「逆説」を言い換える選択肢問題です。
逆説の意味を知っていると有利ですが、知らなくても漢字からなんとなく類推できるかと思います。

逆説/逆説的 とは?
「急がば回れ」や「負けるが勝ち」など、マイナスの結果をもたらしそうなことからプラスの結果が生まれることなどを言います。

傍線部3の「ここには/示されている」という文言から、傍線部3の前に「逆説の具体例」、後ろに「その解説」が書いてあることが分かります。前後どちらを読んでも良いですが、後ろの内容の方が「解説」になっているので、後ろを読んでいきます。

現代感覚で責任感がある人【➕】 = ナチスドイツでは責任感のない人【➖】
 
現代感覚で責任感のない人【➖】 = ナチスドイツでは責任感のある人【➕】

逆になっていますね。
以上より、【エ】が正解。

問5 記述 △

「友情」により、どのような思考が可能になるかという結果の記述です。
「思考に至る過程を踏まえて」とあるので、その要素も抜けもれなく書きましょう。
記述の書き方は説明的文章において基本的な箇条書きフレームを利用をします。

箇条書きフレーム
要素を本文から拾い、それを繋げてまとめる手法。
詳しくはお問い合わせから。

傍線部4の前後を読んでいくと、友情と思考に関しての説明がされています。
図を確認してください。
以下、まとめた内容です。

友情の経験があると……
→ 自分自身との対話 / 自問自答の営み                (過程)
→ 多様な角度から吟味する思考 / 複数の視点から物事を吟味する思考  (過程)
→ 物事を深く思考  (思考)
→ 批判的に吟味   (思考)

以上をまとめましょう。
【自問自答の営みにより多様な角度から物事を考えることで、深く思考でき、時には批判的に物事を吟味する】

問6 選択肢 △

本文に合致する選択肢を選ぶ問題です。
根拠が本文全体に及ぶので、先ほどのふさわしくないものを選ぶ問題と同じように先に選択肢を読んで判断していきましょう。

1. 選択肢を確認する
2. 怪しいものをチェック
3. 本文で確認

ア 「一般的に〜法律よりも上位にある」が不適切。
  5ページ上段4行目に「道徳的な正しさは法律を超えたもの」とありますが、上か下かは書いてありません。
  上位という表現は「裁判で法律より優先」とも取れますし、単に「法律に左右されない」とも取れます。
  意味が広すぎるため、不適切と言えます。
イ 「解明されていない」が不適切。本文にしっかり書かれています。
ウ 「人々は法律を基準に合理的な行動ができる」が不適切。
  5ページ上段の5行目「たとえば〜」の段落を読むと、できないと分かります。
エ 6ページ上段、傍線部bの7行後「アーレントの〜」に書いてあります。以上より適切。
オ 「警察は機能しなくなった」が不適切。逆ですね。
  6ページ下段(略)の後の「たとえば〜」の段落に警察が機能している旨が書いてあります。

以上より【エ】が正解だと分かります。

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松田 浩志

この記事を書いたのは...

松田 浩志

自律学習サカセルでは算数・国語、主要2科目を担当。

大手進学塾では、教務主任職として、校舎全体の運営を担当し、日曜日の志望校別コースの最上位クラスから自校舎の基本クラスまで、算数・国語の両科目で毎年幅広くクラスを担当してきた。

現在の趣味はファッション。
もともと古着が好きだったのですが、現在は「キレイめ」なファッションが好み。

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