神奈川御三家の一角、浅野中学校。受験日が2/3ということもあり、東京・神奈川の優秀な受験生が多く受験します。
あまりクセがなく、塾とご家庭で真面目に勉強してきた受験生が実力を発揮しやすい入試問題です。
配点・形式
算数・国語 50分 120点
理科・社会 40分 80点
大問は4つ、生物・地学・化学・物理から1問ずつ、という標準的な出題です。
中学受験定番の問題と、トレンド問題の両方が出題されています。見たことのないような問題が出題されることはないので、塾のテキストをしっかり解き込む+模試の復習をしてトレンドをおさえておく+過去問演習、というシンプルな対策でOKです。
といっても問題が簡単なわけではないので、原理を深く理解しておくことと、物理や化学の計算に慣れておくことは必須です。
実力がそのまま試される、模試の判定と受験結果のブレが小さい学校ともいえるでしょう。
昨年度はやや難しめの出題で平均点も下がりましたが、今年度はほぼ例年通りでした。
5年分の平均点(得点%)を載せておきます。
受験者 合格者 4科合格最低点
2025 57.1% 65.3% 65.8%
2024 45.3% 51.5% 63.5%
2023 57.0% 66.1% 61.5%
2022 52.0% 61.2% 62.0%
2021 56.4% 64.2% 60.5%
出題
大問1
心臓・血液
トレンド問題です。心電図や「心室の容積と内圧のグラフ」は最近色々な学校の入試問題に登場しています。「やや難」レベルの問題が続き、少し不安な状態で進めていった受験生も多かったかもしれません。
ただ、詳しい知識やとても高い思考力が求められているわけではなく、ひとつひとつ確認しながら進めていけば正解できるようになっていて、浅野中らしい堅実さと誠実さを感じます。
大問2
星
明るさの計算~星座早見~南半球の星座早見、と進んでいく問題でした。はじめと後半が難しめ、中盤が易しめ、という構成だったので「難しかった」という印象の受験生が多かったかもしれません。問題を解くための着眼点/糸口が見つけにくい、という天体らしい難しさのある良問でした。
大問3
ロウソクの燃焼
ここは定番の燃焼の知識+計算問題。ホッとした受験生も多かったと思います。化学は例年ストレートな計算問題が多いため、得点源にしやすいと思います。気体・中和・燃焼等、定番の計算をマスターしましょう。
大問4
落下運動
ど定番とまではいえませんが6年後半のテキストで登場する問題です。あまり難しくないのでここも解きやすかったのではないかと思います。
前半が難しめ/後半が易しめの構成でしたので、前半で時間を使いすぎて後半の「取れる問題」を落としてしまった受験生もいたと思います。浅野中志望者ならその辺りの時間配分は練習を積んでいることと思いますが、改めて注意したいところです。
化学・物理の計算は標準レベルだったのに対して生物・地学の思考問題がやや難しかったため「標準的な計算問題でしっかり得点できたか」が合否にも影響したと思われます。
解説
問題の分類
知:知識問題
考:思考問題
計:計算問題
問題のレベル分け
〇:絶対に取りたい
△:この中から半分以上取りたい
×:捨てても可
〇のところをすべて取ると56.4%で受験者平均弱、△14問のところから4問取ると66.6%で合格者平均を越えます。△の中では計算問題の方が易しめです。
大問1 心臓
(1)知 考 〇
横隔膜の上にある臓器。人体の図を思い浮かべればよいでしょう。一瞬「ん?肝臓って上かな?」とか思ってしまうかもしれませんが、冷静に考えれば横隔膜の上は心臓と肺だけです。
解答 ア
(2)知 〇
血液は心房から[あ 心室]に流れます。
血液は心室から[い 大動脈と肺動脈]に流れます。
解答 あ イ い カ
(3)知 〇
鳥類 2心房2心室
は虫類・両生類 2心房1心室
魚類 1心房1心室
は虫類の心臓は心室に半分くらい壁があり「不完全な2心房2心室」といわれることもありますが、完全に分かれてはいませんし、両生類とまとめられていることからも「2心房1心室」と判断できるでしょう。
解答 イ
(4)知 考 △
図2と図3を組み合わせて考えると、FとGが心室→動脈の弁、EとHが心房と心室の間の弁であると考えられます。図3からEは左にあるので下には左心室があると判断できます。
解答 エ
(5)知 考 △
動脈血が流れるのは、肺静脈→左心房→左心室→大動脈です。
左心房→左心室はE、左心室→大動脈はGです。
大動脈の方が背中側にあることは図2から分かります。ひとつひとつ丁寧に対応させて考えていきたい問題です。
解答 イ
(6)考 △
はじめのリード文と図1を照らし合わせて考えます。図1に書き込みをしながら考えるのがよいでしょう。
Cの部分では弁が開いて血液は心室から[い 大動脈と肺動脈]に流れます。
とあるので、心室から動脈の弁はFとGです。
解答 エ
(7)考 △
図1と図4を照らし合わせて考えます。
着眼点は下の曲線です。左心室に血液が入る(容積が増える)とき、左心室の内圧は高いか?低いか?低そうです。ここで右向きに血液が流れているとします。70mLから130mLに左心室の容積が大きくなっていて左心室の内圧が上がっています。これは、心房から心室に血液が流れ込んでいる=Aと考えられます。この後左心室の内圧は急激に上がっています。=B(左心室の収縮)と考えて問題なさそうです。そして内圧が高い状態で左心室の容積が小さくなる=C(左心室から大動脈に血液が流れる)、と続きます。この向きで間違いなさそうなので、血液の流れはアと判断できます。
はじめて取り組んだ場合はかなり難しいかもしれません。ただ、この問題は6年の後半で触れたことのある受験生がほとんどでしょう。そこできちんと理解していれば出来る問題です。
解答 ア
(8)考 △
(7)の図で示した通り、Bです。
解答 B
(9)計 △
以下のように並べて整理しましょう。
1分 血液全部
0.8秒 1回 60mL (130-70)
60秒 75回 60×75=4500(mL)
解答 4.5(L)
大問2 星
(1)知 〇
全天で太陽の次に明るい恒星→シリウスですね!
解答 シリウス
(2)考 計 △
太陽はシリウスの何倍明るいか?選択問題なので概算できればOKです。
太陽とシリウスの見かけの等級差は25.2→だいだい25と考えてみます。
1等星は6等星の100倍明るいことから、等級が5小さくなると100倍明るくなることが分かります。
図のように25等級小さくなると
100を5回かけた分明るくなります。
100×100×100×100×100=10000000000→100億倍、となります。
0.2等級分を合わせて125億倍になりそうです。
解答 イ
やや難しいので、方針がなかなか立たない場合はカンで選択して次に進んだ方がよいでしょう。
(3)考 △
絶対等級よりも見かけの等級が小さくなっている星=実際の明るさのわりに地球から見たときに明るく見えている→近くにある星、と考えられます。
当てはまるのは
アルタイル 1.45小さくなっている
ベガ 0.57小さくなっている
アルタイルの方が差の値が大きいので、見かけの明るさがより明るくなっている→距離が近い、と判断できます。
解答 アルタイル
この問題も、どこから考えればよいのか糸口が見つけにくいかもしれません。
あまり時間をかけ過ぎないことも重要です。
(4)知 〇
ここで一気に簡単になりました。解説不要ですね。
解答 東 B 天頂 Q
(5)知 〇
12月21日の午後11時に見える→冬の星座→おうし座です。
他の選択肢が夏の星座ばかりなので迷いようがないでしょう。
解答 ウ
(6)知 計 〇
3時間後、なので星座は15×3=45(度)進みます。星座円盤は星座がかいてある盤なので、反時計回りに進めればOKです。
解答 ア 45(度)
(7)考 △
北極点で見える星空→北極星が天頂にあり、その周りを星が回っています。
ア 北極星は天頂なので×
イ 図のようにベテルギウスは日本より低く見えます。×
ウ 垂直に星が昇るのは、赤道です。×
エ 天の赤道を正確に知らなくても「北側の星(=北極星の近くの星)しか見えない」が正しいことは判断できるでしょう。〇
解答 エ
(8)考 △
ニュージーランドは南半球にあるので、南極星のようなものがあればそれを中心に星が回りそうです。
※実際にはありません。以下、南極星(仮)というものがあったら、として続けます。
南極星(仮)の高度はその土地の南緯に等しくなるはずです。
ニュージーランド(南緯43度)は日本(北緯35度)より緯度が高いので、南極星(仮)は日本の北極星より高く=地平線から離れて 見えるはずです。よってウかエ。
次に冬の大三角を考えます。南半球では星座が反対向きに見えることは知っているでしょう。よって、冬の大三角の形はアかウ。
解答 ウ
(9)計 △
東の地点(東経の値が大きい地点)ほど早く星が見えます。
東経105度の地点の星空に合わせるには
135-105=30(度)戻せばOKです。
反時計回りが進む方向なので、イに30度 です。
解答 イ 30(度)
大問3 ロウソクの燃焼
(1)知 〇
知識問題です。解説不要でしょう。
解答 ア
(2)知 〇
こちらも基本知識ですね。
解答 イ
(3)知 〇
影ができるのは固体→すす(炭素のつぶ)があるのは内炎です。
解答 イ
(4)知 考 △
間違っているもの
ア 「膨張した気体に浮力がはたらき」膨張した気体の密度が小さくなるので上昇気流が生じます。これを「浮力」といってよいのか不安なので、保留。
イ・ウは正しい。
エ ロウソクの炎でとけた液体が芯を伝わって上昇するのは、「毛細管現象」+液体のろうが芯の先で気体になるためです。これは炎で温められた気体が上昇するしくみ(膨張した気体の密度が小さくなること)とは異なります。ここが明らかに×です。
解答 エ
(5)考 〇
図3 二酸化炭素を下から送り込むと、空気より重いので下からたまっていきます。下の方が先に酸素不足になるので、Aが先に消えます。
図4 ふたをした場合。ロウソクが燃えた後の気体(酸素が少ない)は温かいため、空気より軽く、上からたまっていきます。結果、Bが先に消えます。
解答 イ
(6)知 考 〇
宇宙ステーション内での炎の様子は見たことのある受験生も多いのではないでしょうか。無重力なので重い/軽いがなくなり、対流が起こらなくなります。
解答 ウ
(7)知 〇
二酸化炭素の性質。これは説明不要でしょう。
解答 ア、オ
(8)計 〇
[表1]の①と②で二酸化炭素が1.5倍になっていることから、②で反応した炭素/酸素もそれぞれ1.5倍になっていると考えられます。
炭素が①→②で1.5倍になっているので、炭素はすべて反応していることが分かります。
(1)では二酸化炭素が4.4g出来ているので、反応した酸素は
4.4-1.2=3.2(g)です。
炭素 + 酸素 →二酸化炭素
① 1.2g 3.6g 4.4g
反応 1.2g 3.2g 4.4g と分かります。これを基準に考えましょう。
炭素 + 酸素 →二酸化炭素
1.2g 3.2g 4.4g
③ 2.4g 7.6g
炭素が基準の2倍、酸素は2倍以上あるので、炭素に合わせて反応します。
二酸化炭素の発生量は4.4×2=8.8(g)…(あ)
[表2]は①と③の水素が2倍になっていて、ここが処理しやすそうです。
③の水素が全て反応していたとすると、水が36g出来ていることから、反応した酸素は
36-4=32(g)となります。
水素 + 酸素 → 水
4g 32g 36g がちょうど反応していることになります。②を考えると
② 3.6g 28g 31.5g
水素が0.9倍、酸素が7/8倍→7/8の方が少ない。
水が7/8倍発生しているのでこれで正しいことが分かります。
よって、
水素 + 酸素 → 水
4g 32g 36g
① 2g 18g 水素は基準の1/2、酸素は9/16で、水素の方が少ないので、水素に合わせて反応します。
水素 + 酸素 → 水
2g 16g 18g…(い)
解答 あ 8.8 い 18.0
(9)計 △
ロウソク + 酸素 → 二酸化炭素 + 水
28.4g □g 79.2g 32.4g
(79.2+32.4)-28.4=83.2(g)
解答 83.2(g)
このように解けば簡単なのですが、(10)の解説にあるような解き方(炭素と水素に分けて考える)で酸素を求めていくと86.4gになってしまいます。これは、ロウソクに含まれていた酸素も加わっています。
この後(10)で求める3.2gを引くと、この問題で問われている「消費される空気中の酸素」が求まります。
86.4-3.2=83.2(g)
炭素と水素に分けて考えてしまった受験生に気付いてもらうためにも(10)はある気がします。
(10)計 △
(8)の式を使って考えていきます。
炭素 + 酸素 → 二酸化炭素
1.2g 3.2g 4.4g
79.2g
二酸化炭素が基準の79.2÷4.4=18(倍)発生しているので、含まれている炭素は
1.2×18=21.6(g)
同様に
水素 + 酸素 → 水
2g 16g 18g
32.4g
水が基準の1.8倍発生しているので、含まれている水素は
2×1.8=3.6(g)
合計は21.6+3.6=25.2(g)
残りは 28.4-25.2=3.2(g)
ロウソクが燃えてできた物質は二酸化炭素と水のみなので、反応した物質は炭素・水素・酸素だけです。
よって、ロウソクに含まれている残りの3.2gは「酸素」と分かります。
ロウソクの他アルコールなども炭素と水素と酸素でできています。酸素が含まれていることは知っていた受験生も多かったと思います。
解答 酸素 3.2(g)
このあたりの化学計算は定番なので、ラクに処理できた受験生も多かったことでしょう。逆にここで稼がないと少し大変な入試問題になってしまいます。
大問4 落下運動
(1)計 考 〇
落下時間が2倍・3倍になると、速さも2倍・3倍になっているので、アは正しい。
落下時間が2倍・4倍になると、落下距離が4倍・16倍になっているので、エが正しい。
解答 ア、エ
(2)計 〇
あ 落下時間が0.1秒の5倍なので
98×5=490
い 落下時間が0.1秒の3倍なので
4.9×9=44.1
解答 あ 490 い 44.1
ここまではこの入試問題でいちばんのサービス問題!
(3)計 (a)〇(b)△
(a) 同じ時間での落下距離を、表1と表2から探して比較します。
0.2秒 0.4秒
地球 19.6㎝ 78.4㎝
月 3.3㎝ 13.0㎝
月での落下距離は地球の 3.3÷19.6=0.168…
13÷78.4=0.1658… アが近いですね。
解答 ア
(b)落下距離が同じになっているものを探します。完全に落下距離が同じものはありませんので、近いもので考えます。
表1 地球 0.4秒で78.4㎝
表2 月 1.0秒で81.7㎝ このあたりでしょうか。
月での落下時間は地球での落下時間の
1÷0.4=2.5(倍) 程度です。
解答 カ
大問2でも登場しましたが、近い値でざっくり計算できるか、が重要になっています。
(4)計 〇
浅野中を志望して勉強してきた受験生なら、水平方向に投げたボールの進み方を知っているでしょう。水平方向の運動はキープされます。
図4を見ると
0.2秒で40㎝、0.4秒で80㎝進んでいることからも確認できます。速さは
40÷0.2=200(㎝/秒)
解答 (毎秒)200(㎝)
(5)計 △
(3)の(b)より、月で地球と同じ距離を落下するのにかかる時間は、地球の2.4倍です。
水平方向の運動は200㎝/秒でキープされるので、時間が2.4倍なら距離も2.4倍になります。
解答 カ
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