算数の想定合格点 65点
日本を代表する伝統校の女子学院。
女子御三家の一角として抜群の進学実績を誇りますが、他の御三家の桜蔭や雙葉とは一線を画す自由な校風で知られています。
「明るい雰囲気でしかも私服!」と憧れを抱く女子受験生は後を絶ちません。
もちろん中学受験においては女子最難関校のひとつとして君臨し続けています。
特徴的な4科目均等配点は「バランス感に優れた生徒に入学してほしい」という女子学院の求める生徒像の表れでしょう。
算数の出題に関しては従来「やや易しめの問題を早く正確に!」という高得点勝負で知られていましたが、近年は処理量が多く難度も高い年度が増えてきました。
女子学院が求める算数の学力は、時代に合わせて変わってきているのかもしれません。
さて、ここからは2025年の女子学院中の算数の出題において、どのような戦略で取り組めば合格ラインに届かせることが出来たのかを考えていきます。
〇:合格のためには必ず正解したい
△:差がつく問題なので、出来れば正解しておきたい
×:難度が高く、捨て問と判断しても差し支えない
として小問ごとに見ていきます。
解答例はこちら
大問1
(1) 〇
分数・小数の換算を使い分ける、やや作業量の多い逆算です。
答えを出し終えたら□に代入して、正解していることを確認しましょう。
(2) (ア) 〇 (イ) 〇 (ウ) △
(ア)は易しいです。
正五角形の各辺の長さが等しいことに注目し、二等辺三角形を利用しましょう。
(イ)も易しいでしょう。
「折り返し」と「ひし形の4辺の長さは等しい」を利用し、必要な角度を書き込んでいけば短時間で正解に至ることが出来ますね。
(ウ)はこの中では少し難しいですが、典型題の範疇に入ります。
「同じ長さが2組⇒1組をくっつけるよう変形して二等辺三角形を作る」という発想に低学年時から触れたことがある受験生も多いのではないでしょうか。
例年、女子学院の角度の問題は高度な発想や気づきが求められ、出題において足止め問題になる場合が多いものですが、2025年は取り組みやすい出題でした。
(3) ① 〇 ② △
①は易しいでしょう。
小さい順にABCDEとした5つの数のうち、ABCの和・CDEの和・ABCDEの和が与えられているので組み合わせることで容易にCが求まります。
②の絞り込みは少し難しめです。
①よりC=22が求まっているので、Bが21以下になることに注目して(A,B)の組み合わせを考えてみましょう。
その後、AとEの和の55にも注目することで、正解にたどり着くことが出来るでしょう。
(4) 最少 〇 最多 〇
投影図の基本問題です。
真上から見た図に、正面から見た図の情報を書き込みましょう。
特に何の捻りもないので2025年春の女子学院合格者の大多数が正解できたのではないでしょうか。
(5) ×
正六角形を利用した問題は筑波大駒場や麻布、駒場東邦等の男子最難関校でも散見されるテーマです。
解答例では基準となる斜線部分の三角形に対して、△ABCの底辺と高さが何倍になるのかを、しきつめられた正六角形の平行を利用して求めました。
1枚目としては高度な発想が求められるので、実際の試験ではいったん後回しにすることも得策だったと言えるでしょう。
大問2
(1) 〇
多くの受験生が苦手とする日暦算です。
ただ、この問題は4月1日から翌年の1月31日までという設定で、月の途中から始まったり月の途中で終わったりしているわけではないので、若干ながら易しめでしょう。
まずはこの期間が何日あるかを丁寧に調べ、何週間と何日かを求めましょう。
(2) 〇
(1)より日曜日が何日あったかが求まっているので、まずは全部の問題数から日曜日に解いた問題数を引いて、平日に解いた問題の総数を求めましょう。
あとは基本的なつるかめ算です。
この程度の処理量ならば、女子学院志望者は確実に正解できるよう練習しておきましょう。
大問3
(1) 〇
正面から見た面を底面と捉えましょう。
階段状になっていても側面積は直方体の時と変わらないことを利用すれば、容易に正解に至ることが出来るでしょう。
(2) 〇
123秒で満水になっていることに気づけば、水槽の容積から(1)の立体の体積を引くだけで求まります。
(2)までは2025年の女子学院中受験生の大多数が正解できたのではないでしょうか。
(3) ① △ ② △
まずは最後の28秒に注目することで階段上部の幅を求め、次に(1)で求めた正面から見た際の面積に注目することで、階段上部の高さが求まります。
難しくはないものの柔軟な視点の切り替えが必要で、また完答までの道筋がやや長い問題だったので、いったん後回しにすることも得策だったかもしれません。
大問4
(1) 〇
さすがに通分するわけにはいきません。
「27/2026⇒27より僅かに小さい/2025」という感覚は持ち合わせておきましょう。
75/2024も同様です。
結局、分子が27から75になる時だと分かります。
(2) 〇
(1)の条件の中で分子が2025の約数になるものを探すだけです。
素因数分解を利用して探しても良いですし、この程度なら全て約数を書き出しても良いでしょう。
(3) 〇
(2)のオマケのような問題です。
特に工夫することもない普通の分数の足し算なので、確実に正解しておきたい問題でした。
大問全体として易しく処理量も少なかったので、時間が苦しく焦りだしていた受験生も落ち着きを取り戻すことが出来たのではないでしょうか。
大問5
(1) 〇
難しそうに見えますが、与えられている図形が正十二角形なので「きっと30°を利用するんだろう」と勘づくことが出来るでしょう。
(1)で問われているのは半径の求まらない円の面積ですが「半径×半径」なら求まるという解法も女子学院志望者にとっては常識ですね。
(2) △
変わった形の求積は「全体-白」が定番の発想です。
解答例のように今回は「正十二角形から中心角が90度のおうぎ形と、等脚台形を2つ引く」という方針が良いでしょう。
等脚台形部分の処理がやや難しく、合格者と不合格者で正答率の差がついたことが想定されます。
大問6
(1) △
1日目の(あ)(い)(う)を1時間ずつとすると1周が28kmとなります。
この距離を2日目の(あ)(い)(う)の距離の比である7×2:9×2:12×1で比例配分し、その後それぞれの速さで割ることで、かかる時間の和を求めましょう。
あとは実際の時間の差が1周28kmとしたときの時間の差の何倍になっているかを考えれば、正解に至ることが出来ますね。
発想は易しいものの計算量がやや多く、正解するのは意外に大変です。
(2) △
(1)が出来れば実質的には計算問題ですが、その計算が煩雑です。
気持ちを切らさずに単位換算にも気を付けて答えを出し切った受験生は、合格を手繰り寄せることが出来たのではないでしょうか。
大問7
(1) △
食塩および食塩水全体の量に注目する、少し珍しい設定の割合の問題です。
(1)では「濃度の差が0.2%⇒含まれる食塩の差が0.6g⇒AとBの食塩水全体の差が20gと言い換えていくことがポイントでした。
どのようにアプローチすれば良いのか方針を立てられなかった受験生も多いのではないでしょうか。
(2) △
(1)と同じ方針で解くことが出来ます。
(1)が出来なかった場合は残念ながら歯が立たないので、得点差にもつながってしまいます。
(3) ×
(1)(2)で求まった条件をどのように利用するのかが難しい問題です。
解答例では食塩の量を①を用いて整理し、また秋子さんとDと0%の水の関係に注目して天秤を用いて具体的な濃度を求めました。
制限時間に対する処理量が多い女子学院中の最後の問題ということもあり、充分な時間を残せなかった受験生が大多数でしょう。
正解に至らなくても、差はつきません。
総論
「易しめの問題が大量に並ぶ処理力勝負の出題で合格ラインは80%だ!」と言われていた女子学院の算数。
ただ近年は2019年、2022年、2024年のように、60%前後の正答率が合格ラインになるような難しめの年度が増えてきました。
その上、2025年より問題用紙と解答用紙が別になるとのアナウンス。
形式も出題内容も求められる力も大きく変わってしまうのでは…と危惧されていましたが、3枚の構成や問題量もほぼ同等で「最近の女子学院らしい出題で解答用紙が別になっただけ」という出題になりました。
合格ラインは従来の女子学院の算数としてはやや難しめの65点くらいでしょう。
個々の問題の発想レベルは決して高くはないものの、制限時間に対しての処理量が非常に多く、思ったように得点できなかった受験生も多かったのではないでしょうか。
この出題で合格ラインを上回るためには、
全25箇所の解答欄のうち、
〇は12/14
△は4/9
×は0/2
で16/25=約65%が目安になりそうです。
時間無制限ならおそらく女子学院を志望する受験生の大多数が合格ラインを上回ることが出来るのではないでしょうか。
ただこの分量で制限時間は40分。
大問1(3)②や(5)、大問3(3)、大問6、大問7など足止めになる問題を適度に回避し、とにかく「最後まで解ききる」ことが出来れば合格の可能性を高めることが出来るでしょう。
2026年以降の女子学院合格を目指す受験生にとっても「難しめの年度」の例として参考になることでしょう。
特に「時間配分・取捨選択を適切に判断できるか?」という点で学ぶべきことが多い年度です。
ただ2026年はサンデーショックです。
試験が2月2日に実施されることが既に発表されていて、桜蔭中との併願受験生が増えることは確実でしょう。
過去のサンデーショックの年は、異常に処理量の多い桜蔭中の算数に慣れた受験生を意識したような出題になり、結果として合格ラインが例年よりも下がったこともありました。
2025年の出題は、サンデーショックの際の処理量の増加という点でも参考になりそうですね。
自律学習サカセルの講師陣は、これまでも女子学院を目指す受験生を数多く指導してきました。
「もっと効率よく女子学院に合格するための学力を身につけたい!」という際は、お気軽にお問い合わせください。
最短経路での学習法を一緒に考え、歩んでいきます。
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